ジャムパンとかんぴょう巻き
小学校に入って初めての担任は、柏倉先生というおじいちゃん先生だった。
その人は私に「小川さんは作文をするとよい」って生まれてはじめて教えてくれた人であり、「雑誌や新聞の作文コンクールに応募する」という新概念を小川家に授けてくれた人でもあるので、メダルや景品をもらったり、全校朝礼で校長にほめられたり、幼い私はそこそこいい思いをした。
私が通っていた小学校には給食がなくて、みんな毎日おべんとうを広げていたのだけれど、ある日、私たちは気づくのだ。
柏倉先生のお昼ごはんが、毎日、おんなじであることに。
ジャムパンと、かんぴょう巻き。毎日毎日、先生はその2品を、もぐもぐと噛みしだいていた。
「なんで毎日おんなじなのーーー??」私たちが無邪気に聞いたとき、返ってきた答えを、はっきりとは覚えていない。
おそらく、「好きだから。」とかそういう、極めてシンプルな回答だったと思う。
そのことを、40年経った今(!)、通勤途中にしばしば思い出す。
私が今、毎朝コンビニで買い求めるのは、鮭のおにぎりと、カップの味噌汁(「1食分の野菜がとれる!」っていうやつ)、それからゆでたまごひとつだ。
目移りとかは、まったくしない。店に入ったら、おにぎり売り場へまっしぐら。おにぎりとゆでたまごを取ったら、そのまま180度ターン。そこには味噌汁が並んでいる。一切の無駄がない、完璧なストローク。
勤務開始から半年、紆余曲折を経て、ここに落ち着いた。
もちろん、好きなんである。鮭のおにぎりも、野菜の味噌汁も。でももし、無邪気な子どもに「なんで毎日おんなじなのーーー??」って聞かれたら、どう答えたらいいのかよくわからない。
「毎日迷ったり考えたりするのが、ちょっともう、めんどくさいのーーー!」
これが、今の私の、正直なところ。
柏倉先生は、どうだったんだろうな。(2021/02/08)
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