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No.465 小黒恵子詩集の紹介記事-31 (ユーモラスな詩の世界)

 こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。

 様々な新聞記事等をご紹介しています。今回は、小黒恵子詩集 シツレイシマス へのインタビュー記事です。詩集は、絶版となっていますが、当館でお読みいただくことができます。また貸出も行っています。

ユーモラスな詩の世界 小黒恵子童謡集 シツレイシマス

 こんにちほど童謡が動揺している時代はあるまい。といってそれはなにも童謡そのものを中心的に歌うはずの子どもたちや古今東西の古典的な童謡の内容それ自体に問題があるわけではない。結論的にいえばもっぱらこれは、童謡を童謡として聞く直接の親たちや教師、ひいては世の童謡作家とよばれるおとなどもの精神的動揺がおおいかくせないというべきがあたっていよう。
 このことは本書の全般を通じての印象がいみじくもきわめてデリケートにそれを反映している。すなわち、いうところの現代っ子の日常性からしだいに避難しつつある従来の児童文学界全体の相貌をこの本が象徴的にあらわしているように思え、ひっきょうそれはわが国における明治以降のモダニズムによる偏向教育の没落を意味しているといっても過言ではないと考えられる。
 だがしかし、この愛すべき天衣無縫さにみちあふれた童謡集が、遠からずして日本の土着のリズムその生きた「わらべうた」のありかたをひきだしてみせるであろう可能性のかたまりであることをみのがすわけにはいかない。  
 たとえば表題にとられた作品「シツレイシマス」では、「シツレイシマスー/朝から晩まで シツレイシマス/それだけじょうずな 九官鳥/おかげでみんなが シツレイシマス/すっかりうつって シツレイシマス/こねこのまえを とおるにも/やっぱりいっちょう シツレイシマス/コマッテシマウー/ちょっとくびまげ コマッテシマウ/このごろおぼえた 九官鳥/おかげで みんなが コマッテシマウ/すっかりうつって コマッテシマウ/だれかとおはなし していても なんどもいっちゃう コマッテシマウ」と九官鳥の性格にたいへんシュールレアリスティックな、またそれゆえにこそひじょうにリアリティのあるポエジーを与えることに成功したものとみなせ、これは谷内六郎の装画とあいまって、いわば日本の「うた」の原点をユーモラスに掘りおこそうとしているかに思われてすこぶるたのもしい。
           (A5変型版・一二五頁・八〇〇円・現幻社)

(新聞社不明) 1970年?

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 次回も、1970 年頃に掲載された小黒恵子詩集「シツレイシマス」の紹介記事をご紹介します。(S)


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