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cassetteboy
No.477 小黒恵子作品の批評記事-43 (童謡の楽しさ)
こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。
様々な新聞記事等をご紹介しています。今回は、 小黒恵子氏の作品を批評した記事 をご紹介します。
「童詩の楽しさ」
牧笛
※「ホラ 耳をすませて」の「跋 清岡卓行」にて、同文掲載
大人が全力をふるって、しかしその苦心の跡はきれいに消して、うまくしあげた童詩。そのような作品は、子供にとってだけではなく、大人にとっても楽しいものであるように思われる。
そのいい例が、小黒恵子の「詩(二編)」(「童話」六月号、東京都足立区江北三ノ二一ノ四、日本童話会刊)に眺(なが)められるだろう。
◇
その中の一編「虫のつぶやき」は、いろいろな虫の生態を擬人的にスケッチしたものであるが、簡潔な鋭さが印象的である。
たとえば、なめくじについては、「悪いことは できないな 銀いろの足あとが 証拠になる」と微視的に描く。
また、バッタについては、「なぜだろう/タバコも 吸わないのに/茶色いろのニコチンを 吐くとは」ととぼける。
あるいは、クモについては、「どこにも遊びに 行かれない おなかすかして テントの見張り/待ちぼうけって つらいね」とユーモアをまじえる。
◇
もちろん、このような巧みさが生きるのは、その底に自然への素直な親しみが流れているからだろう。ルナールの「博物誌」を思い出させると言えば、ほめすぎになるかもしれないが、現在の都会の夏において、こうしたポエジーはなかなかに強烈である。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、1972(昭和47)年の童謡についての新聞記事をご紹介します。(S)