Photo by uranus_xii_jp エッセイのご紹介415 白馬の海で(小黒恵子著) 7 小黒恵子童謡記念館 2022年6月15日 16:00 こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。 今までは、神奈川新聞のリレーエッセイをご紹介してきましたが、今回は、神奈川新聞のサンデーブレイクに掲載されたエッセイをご紹介いたします。 記念館には、自筆の原稿が残っており、ここでは、原稿の方をご紹介します。実際の記事は、校正を重ね、少し異なっています。 詩人の書いたエッセイ、独特の言葉選び等を感じていただけると幸いです。エッセイ タイトル一覧(小黒恵子自筆の原稿より)「白馬の海で」 詩人・童謡作家 小黒恵子 風の吹く日は海原(うなばら)を、白馬(はくば)の群がかけめぐる― 一年ぶりで訪れた伊豆の網代(あじろ)の海は、午後から波が高く対岸の初島辺りから、白馬の群が打ち寄せていた。 居間から眺める初島は、一年前は緑一色の島だった。 ところが純白の大きな客船のような建物が、景色を変えていた。 二十年まえ庭に自生した小さな樟の木は、この一年の間に特にめざましい成長をして私を迎えてくれた。 庭続きのみかん畑には、色づき初めた無数の実が金色にひかっていた。 一緒に連れて行った家族の猫と九官鳥を留守番に残して、犬二匹と散歩に出かけた。 まだ鉄道のなかった昔、徒歩で熱海から伊東に抜けたと言う山道を歩いた。 ツワブキの群落が黄色の花の波をゆらし、晩秋の景色を一際美しく彩っていた。 それにしてもなんと光沢のある大きな美しい葉。一名ツヤブキとはなる程と思った。 かつて私の好きだった赤松と黒松の見事な樹林の山は、無残な枯木の墓場と化していた。 散策のあと久しぶりの温泉は、肌にやさしい母のぬくもりだった。 居間から眺める夜景は、いか釣り船のあかりが、流し灯籠のように静かに浮かんでいた。 対岸の初島にも灯りの花が咲いていた。 この美しい私のサンクチュアリで、過ぎ去った歳月のなつかしい糸をたぐっていた。1993(平成5)年9月19日 神奈川新聞サンデーブレイク掲載の原稿 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 次回も、小黒恵子の神奈川新聞のサンデーブレイク原稿をご紹介します。(S) ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #エッセイ #海 #紹介 #景色 #原稿 #白馬 #小黒恵子童謡記念館 #小黒恵子 #神奈川新聞 #網代 #サンデーブレイク 7