童謡集:ホラ耳をすまして(小黒恵子作)

 こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。
 今日は、「童謡集:ホラ耳をすまして」をご紹介します。

 童謡集としては、「シツレイシマス」に続く2作目になります。


 多摩川の近く、緑豊かな所で生まれ育った小黒恵子氏は、もともと生き物が好きだったのだと思いますが、特に1969(昭和44)年頃に「別れ」を経験してからは、さらに小さな生き物たちへの愛情が湧いてきたようです。

 人があまり好まない「やぶ蚊」「ケムシ」「クモ」「ゴキブリ」などの「虫」滑稽に楽しく歌った詩が、この詩集には、たくさん収められています。

 私は夏が大好きです。
 いろんな虫だちに逢えるからです。

 でも歓迎できないのは、やぶっ蚊ドラキュラ。夕方になると、どこからともなく血を求めてやってきます。
 そんな時、屋外に繋いである二匹の愛犬が刺されては大変と、月桂樹の落葉をモクモクといぶして、ドラキュラを退治します。

 黄昏のなかに白い煙が溶けて流れて、月桂樹の芳香が一面に漂い、何とも言えない情緒があります。ドラキュラは好ましくありませんが、おかげで月桂樹のあの高貴な香りとなじみになりました。

 夏の花形は、何と言ってもセミ
 短かい生命を燃焼させるかのように一日中合唱してもまだ足りず、夜になっても夏と言う舞台で歌いまくる売れっ子の歌手たち。

 昔は夜、セミは鳴きませんでしたが、今は街燈やいろんな灯りが照らしているので、生活環境にあわせているのでしょうか。
 けれどもセミも歌ってばかりはいられません。セミの命を狙っているハンター「蝉食いキャット」がいるのです。

 わが愛猫のアルバイトが盛んになるのも、この頃です。一日に五匹も六匹も捕えては、じゃれて遊んで、羽だけ残して食べてから舌なめずりをして、美味しかったあとの幸福にひたっているようです。

 昨夏、梡梠竹の植木鉢からセミが出てきて、立派に変身して飛立ったのを目のあたり見てびっくりしました。小さな鉢の土の中で何年も生き抜いた生命力のたくましさに脱帽しました。

 次に身近なのはアリ
いつの間に見つけるのか、甘いお菓子の残りや果実に集ってくるやっかい者たち。時には、どこからどこへ続くのか延々と長い大名行列ならぬアリの行列。

 幼い頃、叱られたとき、よく庭の隅にしゃがんで、アリの行列を眺めたものでした。
 大人になっても今でも、こうしていると何故かとても慰められるのです。

 次に「コンバンハァ」と、どこからともなく黒いマントを着て現れるのがゴキブリ。食べ物が全く無い書斎の机の上にまで、愛想よく出てくる四季を通しての友達。

 また、夏の夜に灯りをめがけて飛んできて、畳の上に遠慮もなくひっくり返るのは、ゲンゴロウ

 毛むくじゃらの足を、バタバタやるさまは、かっこうの悪いねぼけた山賊。起き上るのを手伝ってやっても、当り前だと言う態度で、いばっている、池や小川や田んぼから飛んでくる田子作紳士。

 まだまだ私の親しい虫のともだちは、たくさんいます。
 虫はみんな友達。

 どんなに小さな虫でも、我々人間と共にこの地球に平等に生命を与えられて生きて住んでる愛すべき仲間たちです。

     昭和四十九年 リンゴの花の咲く季節に
                         小黒 恵子


 表紙は、最初の童謡集「シツレイシマス」と同様、谷内六郎氏が手掛けています。

Ⅰ 虫のつぶやき
 バッタ
 ナメクジ
 シャクトリムシ
 木の葉チョウ
 クモ

Ⅱ ハタラキアリの うた
 ハタラキアリの うた
 ハダシは いいね
 シャクトリムシは 測量士
 ケムシの 電車
 ドラキュラの うた
 カマキリの お百姓さん
 トンボメガネは よく見える
 テントウムシの ファッションショー
 ゲンゴロウ
 セミの 水鉄砲
 クモの お夕飯
 カマキリの さんぽ

Ⅲ カタツムリの スケッチ旅行
 カタツムリの スケッチ旅行
 トックリバチの トックリ
 月夜の 食堂
 ミノムシの ハウス
 みんな きょうだい
 三つの クイズ
 コオロギ

Ⅳ あぶくの うた
 あぶくの うた
 星になった あきびん
 ボクの 未来学
 バクのあかちゃん 夢をみた
 シャボン玉に のって

Ⅴ コガネムシの フンジャック
 コガネムシの フンジャック
 オニの子が見た アリズカ団地

Ⅵ ハダシと ハダカ
 ハダシと ハダカ
 トカゲの かぞく
 リスじいさんの クルミわり
 バオバブの うた
 しらないの だあれ
 たべちゃった ヤギさん
 ちっちゃな ハサミ
 子ブタの くしゃみ
 ママ 帰ってきて
 ブラックキャットが 怒ってくるぞ
 ママの オカリナ
 シツレイシマス
 野原の 音楽隊
 なかよし マーチ

Ⅶ 夕立
 夕立
 山から下りた 近道
 シュロの 花が

 こちらの作品の中には、曲が付けられ歌になっている作品もあります。
中でも「ドラキュラのうた」はNHKの「みんなのうた」で歌われていて代表作の一つになっています。でも、「ドラキュラ」が「やぶ蚊」のことだと知らない方、案外多いんですよ・・・

 記念館では、今でもたくさんのお友達(やぶ蚊、セミ、クモたち)が仲良く(?)遊んでいます。時々、大きなクモが玄関のあたりで、お客様をビックリさせています・・・

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。
 次回は、中型オルゴールの音色をご紹介します。(S)

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