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間違い書きました

今日はこのフレーズが何かと耳に残った。

朝一番の授業で文法のまとめテストがあり、テストの次のコマは3,4人ずつでテストの答え合わせをする活動になった。

答え合わせが問題1,問題2と進むにつれて自分のミスが次々と顕わになり、「頭が痛いです…」と文字通り頭を抱えている人がいたので、まあまあ、これで全部が決まるわけじゃないですしねと気休めを言った。

また別のチームでは「ここも、ここも、ここも私間違い書きました」と割り切って笑っている人もいた。

「間違い書きました」は「間違いを書きました」の「を」が脱落した結果なのか、または「間違って書きました」と「間違い」の副詞的な使い方をしたかったのか、と少し考えた。

どちらにしても、日本語母語話者が使う表現かと考えるとそうではない気がする。ネイティブならたぶん「たくさん間違った」ぐらいだろう。間違ったことが文の主題ではなく、あくまで動作(=書いた)がメインになっているのは彼の母語の影響なのだろうか。

しかしただでさえテストの結果にショックを受けている状態だったので、思わず口から出た「間違い書きました」にまで「それは違いますよ、『間違って書きました』です」なんて訂正されたら彼は全てのやる気を失ってもおかしくない、と思い「間違い書いたんですね」とあまり意味のないオウム返しをするにとどめた。

いい点を取りたい!と熱中するあまりほぼケンカと言っていいほどの熱量で議論を交わしているチームもあった。その熱意は素晴らしいけれども語気は優しくね、となだめた。

ちなみに今回のテストで最も間違いが集中したのは下の問題だった。

やけどしたので、水( )冷やした。

答えは「で」だけれども、「を」という誤答が続出した。

「を」は動作の対象を表すマークだということを知識として知ってはいても、
助詞は動詞と名詞の関係性を示すものだという理解はちょっとやそっとの時間で構築できるものではない。

つまり「ビールを冷やす」「部屋を冷やす」という例文を読んで、
『「冷やす」の対象が「ビール」だから「を」なんだ』と理解するのではなく、
『「冷やす」は「を」と一緒に使うものだ』と理解してしまうといった具合だ。

「助詞は動詞と名詞の関係性を示すものなんですよ」なんてことを日本語でそのまま説明されてわかるレベルの人には、この説明は必要ないだろうなというパラドックスをはらんでいる。

それをどうやって初級の人たちに理解してもらおうか、というのを考えるのが私の仕事です。面白い仕事だね。

みなさんテストおつかれさまでした。

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