金曜夜の三菱一号館美術館のシャネル展
さっそく本題から離れるけれど、タイムリーな趣味の話をさくっと。
先般、かの有名な「シャネル」の展覧会のチケットをもらった。
三菱の庭である東京・丸の内にある佇む三菱一号館美術館で開催とのこと。
もらったチケットは無料で鑑賞できるものだけど、何気なく公式サイトで通常料金を見たところ「2,300円」の表示。
某感染症流行の影響で最近はどこの美術館もチケット料金が高くなっているけれど、(フェルメール展やら鳥獣戯画展ならともかく)だいぶ強気の値段設定だな、、、
なんて思ってしまったけれど、結局のところ定価で鑑賞してもよかったと思える内容だったので、いいなと感じた点を紹介。
#1 「展示品を見る」だけではない楽しみがある
三菱一号館美術館には何度も来ているけれど、
今回は展示室に足を踏み入れた瞬間
「…暗い!え、いちめん真っ黒!?」と驚いた。
直近の展覧会(上野リチ展)では今流行りの「エコ」を前面に押し出した素朴な(人によっては無粋とも捉えかねない)壁紙だったけれど、今回は壁面全体が黒で統一されている。こんな内装になっているとは…!
そんな黒にすっぽり覆われた部屋の中で浮かび上がるのは、
彼女がデザインをした服と、
おそらく(キャプションがフランス語のみだったので正確に読み取れなかったけれど)シャネルの服を着た女性の古い無音モノクロ映像、
そして次の部屋へと誘導するための灯り。
余計な音は何一つしない。
(ちょっとした小声でも出すのがためらわれる)
いつもと違う雰囲気に圧倒されつつ、展示をしげしげ眺める。
こういう非日常感は好きだ。
そして次の部屋に移動すると、言わずと知れた名品、「N°5」の香水が。
そこでふと
「あれ、そういえば、この会場ってほのかにいい匂いがしない…?」
と思い至る。
来館客数の98%は女性だったし、たまたまシャネルを意識して、いい香りのフレグランスをつけている人がいただけかもしれない。
でも、美術館側が意図的にアロマディフューザーを使い、どの部屋もほのかないい匂いに包ませているような気がした。(違っていたら恥ずかしい)
まあ、香りの件は私の勘違いである可能性も否定できないけれど、単に展示品を鑑賞するだけではない驚きや楽しさがある展覧会だった。
# 2 「あ、こういうのいいよね」と素直に感じられる服
ブランド品の服については「前衛的で、値段の点だけではなく、デザインの点からも、凡人が着られるような品物ではない」というイメージを持っていた。(「パリコレ」のイメージ)
シャネルに関する基本的な事前知識(これまで体を締め付ける仕様が当たり前だった女性服に初めて「ジャージー素材」を導入した)は頭に入っていたけれど、「それでも、庶民が着れるようなものじゃないんでしょ?」なんて色眼鏡をかけていた。
でも、展覧会場に並んでいた服は私の予想をいい意味で裏切った。
体に馴染みやすそうなドレスやスーツに、実用的なバック。
そこには安直で分かりやすい豪華さは無く、代わりにこだわり抜いた細部によって見え隠れする控えめな、でも存在感のある、贅沢さがあった。
純粋に「こういうの欲しい」と思った。
(「これ収納に困りそうだな」と思うものも少なく無かったけど)
もう一つ意外だったのはアクセサリー類。
ブランド品というからにはさぞかし豪奢に宝石を使っているのだろうとケースを覗き込むと、そこにあるものの多くは色ガラスを多用した、遊び感覚でカジュアルに使いそうなアクセサリーたち。
どれだけ富を持っているかを示すものではなく、着飾る楽しさを盛り立てるものとしてのアクセサリーを見て、普段そういった類を付けない私も、ほんの少し心惹かれた。
#3 音声ガイドアプリ(無料)が使える
音声ガイドはこれまで毎回500円(600円かも)程度払って借りていたけれど、シャネル展ではアプリをダウンロードすれば無料で聞けるとのことなので、早速会場手前に置いてある案内板の指示に従いダウンロード。
(念のためにワイヤレスイヤホンを持ってきていてよかった!)
解説を聴ける作品数は多くないけれど、従来の音声ガイドはイヤホンが落ちやすかったりコードが絡まったりで使いにくかったので、自分のスマートフォンとイヤホンで聞けるのはとても快適。
#4 帰り際のおみやげ
これも美術館では初めての体験だったけれど、出口の手前で「おみやげです」と小袋を手渡された。
「CHANEL」と書いてある白黒の小さな紙袋。
中には「N°5」の香水のテスター。
ちょうど香水の展示を見ながら
「説明だけ聞いて実際の匂いをかげないのはもどかしい」
と思っていたところだった。
うまい販促の仕方だなと思いつつ、
サプライズのプレゼントはやっぱりうれしい。
補足:三菱一号館美術館に初めて行く人へ
都内に勤めている人であれば、ぜひおすすめしたいのが
「金曜の夜に行くこと」。
人気の展覧会や終了間際の展覧会があるときの三菱一号館美術館は、
土日ともなると午前中も、昼過ぎも、夕方も酷く混み合う。
(建物内に入るまでに外で待たされるはめになるので辛い)
一方、毎週金曜日は21時まで開いていて、人が少なくゆっくり鑑賞できる。
それに、美術館界隈の丸の内のきらきらとした夜景は、大都会らしい洗練された華やかさに溢れていて、それだけでときめく。(いつ行ったってウェディングフォトの撮影をしているのも肯ける)
今回は帰宅を急いだので夜の街並みは撮影していないけど、都心部では少ない広い空を眺められる場所である皇居付近(ここには高い建物を建てられない)の夕景を最後に少し。
19時くらいでもこのくらいの明るさ。日が長くなったなあ。