🚲【ゲストコラム】自転車トライアル元世界チャンピオン・有薗啓剛さん#4〜「安全教育」の普及〜

2024年12月12日 17:01

オージーケカブトはオートバイ／自転車関連の各方面で活躍するご本人によるレポートやコラムなどを掲載中。今回は自転車トライアル競技の元世界チャンピオンで現在は自転車パフォーマーのかたわら、子供たちのストライダー教室やMTBの普及活動などを行う有薗啓剛さんに執筆いただきます。

　今回（最終回）は現在の活動「安全教育」の普及についてお話しさせていただきます。
これまでに紹介してきた様々な活動を経て、現在は自転車の楽しさを安全に伝える啓発活動と、僕の根幹であるスポーツバイクの魅力を多くの人に知ってもらうための普及活動が中心となっています。
#1〜自己紹介編〜はこちら　↓↓

🚲自転車の意識改革への第一歩について考える👟💡

「自転車の扱いがこんなに雑なのはなぜ？」
「自転車の指導者がいないのはなぜ？？」と疑問をもったのは約25年前…。

当時あたりを見渡すと、自転車のルールやマナーときたら酷かったです。無謀な横断、逆走、信号無視、（←これは未だにありますが）放置自転車や盗難など日常茶飯事。とくに駅前などは、はっきり言って無法地帯化していましたね。

駅前の放置自転車の一例 - 池袋駅北口付近（東京都豊島区、2006年9月）
JunK - Taken by JunK https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1159631による

約30年前、都内某駅周辺の1日の放置自転車の数は１.８万台だったというデータもあるくらい。この現状について、自分なりに何かできることはないだろうか？と自転車好きの私としては、つね日ごろから考えてました。

そんなある日、ひとつの解決の糸口のような考えが漠然と浮かんできました。それが「子どもたちに自転車を教える」というものでした。幼児や小学生を対象としたキッズ向けスクールやイベント、つまり自転車の教育を通じてそれを仕事にする、という日本ではあまり馴染みのないことを考えたわけです。
　第一歩を踏み出した13年前、当時は「クレーマー」や「モンスターペアレント」といった言葉を耳にすることが多くなっていた頃で、例えば子どもたちの遊び場だったはずの公園内の遊具撤去、ボール遊び禁止、自転車乗り入れ禁止エリア拡大、など怪我のリスクがあるものはとにかく「危険なモノ」として扱われている風潮がありました。

(Source:Wikimedia Commons File:Osaka Sumiyoshi Sawano Park North Swing)

　そんな中、自転車指導の場としてまず考えたのが幼稚園や保育園。当然、園庭で自転車？わざわざ危ないことをさせる必要があるの？と言わんばかりの空気を感じました。

　ただ私は自転車を取り巻く現状には、幼児期から自転車と接するスタンスを見直す必要があるのではないか？と感じていて、足りないのは「教育」ではないか？と考えていました。これまでにない「自転車の安全教育」の入口づくりをし、それが大人たちに対しても“考えるきっかけ”になるのでは？と思ったのです。

世の中の風潮に逆らっていることは百も承知で、幼児を対象とした自転車指導を展開することに、何のためらいもありませんでした。

🚀子ども自転車教育の「キッズバイクプロジェクト」がスタート！

　自転車業界でしか経験のない僕たち。プログラムの組み立ては考えられても、いざ「教育」の売り込み先となる幼稚園や保育園に、どうアクセスするのが正解なのか？がまったくわかりませんでした。

　まず知り合いの保育士を訪ねたところ、保育関係者の集まりがあることを知り参加。そこで出会った長崎の園長先生から「ウチの園でやってみればいいんじゃない？」と。その先生は当時「日本保育協会」の青年部長を務められていたこともあり、提案をいただいた瞬間まさに道が “パッと開けた” 感覚がありました。
　こうして長年イメージしていた幼児向け自転車教育「キッズバイクプロジェクト」が2011年に長崎県で生まれたのでした。

　そのご縁がつながり2年後には、日本保育協会青年部が実行する社会貢献活動「HUG.プロジェクト〜おそとにとびだせ！〜」という、東日本大震災によって制限の中での生活を強いられた子どもたちを、お外で自由に遊ばせてあげたい！がテーマの取り組みに参加。このことで日本保育協会加盟団体の多くの方に我々の活動を知ってもらうことができました。

あっ、忘れてましたがこれらのプログラム開発や活動は競技、エンタメなど活動を共にしている守上大輔氏と試行錯誤して造りあげていきました。
（↓守上大輔氏との出会いはこちら↓）

🤝新プロジェクト「エブリバディストライダー（EBS）」の誕生

　月日が経ち少しずつ実施件数も増えた2014年には、ランニングバイクのパイオニアであるストライダージャパンさんと出会います。時を同じくしてオージーケーカブトさんからも応援をいただき、新プロジェクト「エブリバディストライダー (EBS)」が誕生しました。

　ストライダーが展開するランニングタイプと、ペダル＋ブレーキ付き自転車タイプ、この２つの車両を使い分けることでキッズ向け自転車教室としては新しいスタイルの、とても効率的なプログラムへと進化させることができました。

　もう一つ大きなポイントは「安全教育」という点。子どものヘルメット着用率が全国でまだ4割程度だった頃に、体験時はヘルメット必着、というのは保護者や先生たち大人にとてもわかり易いものでした。
　子どもたちのヘルメットに関しては、こちらもパイオニアのオージーケーカブトさんの製品を使用することで、頭部を守るために重要なサイズフィッティングや正しいかぶり方の話を、ちゃんと安全性認証マークが付いた製品で行うという、本格的な安全教育環境が整ったのです。

　じつはすでに過去5万人以上もの子どもたちにプログラムを体験してもらい、いまも乗り物の楽しさと安全な使い方について伝え続けています。

🏘️交通安全について地域・企業と協力し、さらに広げていく活動も

　活動は多岐に渡り2018年には、「子どもたちの安全で楽しいキッズバイクライフを支える組織」として“一般社団法人日本キッズバイク安全普及推進協会(JKSA)”が発足され、僕は副代表理事として活動をさせていただいています。

現在、JKSAでは主に各自治体や警察などと地域の安全を守る活動をさまざまな形で展開しています。
▪️公式サイト: https://jksa.org/

　今後は、自転車が楽しく安全に乗れる環境整備がしっかり地域にも引き継がれていくようイベントや体験機会を通じ、保護者の理解や協力を得ることにも注力したいと思っています。

ちなみに個人的な活動に話を戻すと、警察関係のお仕事をいただく機会が増えました。

　東京都では警視庁とご一緒させていただき、ヘルメット着用努力義務化に伴うイベントでは、自転車乗りのプロとして、ヘルメット着用の重要性PRのお手伝いをさせていただいたり、小学校や高等学校など学校関係で自転車指導をおこなうなど活動の幅を広げています。

　2023年にはそんな活動が評価され、警視庁より「秋の交通功労者」特別優良団体ということで表彰されるという貴重な経験をさせていただきました。

近年、道路交通法が改正され自転車にまつわるルール規制が厳しくなり、それに伴う自転車講習や、一般イベントでも安全啓発コーナーを目にする機会が増えました。自転車の交通ルール無視やマナー違反、また電動自転車や電動キックスケーター問題など、まだまだ課題が山積みなので、今後も警察や自治体への協力は続けていきたいですね。

🚲自転車を安全に楽しむために 🛠️これからの目標 🛤️

　また現在、子どもたちの走行遊具が増えたこともあり、自転車乗車の低年齢化が進んでいるそうです。
それに合わせて各自転車メーカーからは小さいサイズのラインナップが細かく設定されているようにも感じます。自転車に早く乗れるのは良いことですが、単に「乗れる」のと「安全に走行できる」のとは別の話。一人でペダルが漕げることがゴール、ではなくそこからがスタートです。安全に乗るためには、知識と理解そして操作技術が必要で、何より「危険に対する予測」と「咄嗟の判断能力」は不可欠です。これら多くを必要とする“安全運転”は、子供にとっては非常に難しいことだと思います。

　専門家の講習を受けたり、保護者と一緒に交通公園や広くて安全な場所で継続的なトレーニングを積む必要があるように感じています。安全は「体験」をもって担保できるからです。
　僕が目指すキッズ向け安全指導は、やがて幼保や学校でのカリキュラムとなり「教育」の一環として普及して欲しい！と思っていて、引き続き活動の目標としています。

　私たち大人が真剣に取り組むことで、やがて子どもたちが課題の多い交通社会もきっと変えてくれると信じています。僕たちの活動を応援してくれているオージーケーカブトの子ども用ヘルメットHPに書かれたキャッチコピーを知っていますか？

「やさしい未来のために」

　今後も僕たちは応援してくださるブランドの理念を共有しながら、自転車を安全に楽しむための安全啓発は活動のメインとして継続していきます。
バイクパフォーマンスに関しては、できる限り長く乗り続けていこうと思っていますが、体力の限界がきたらあっさり引退ということもあるかもしれません(笑

なので数少ないパフォーマンス機会は、できるだけ応援に来てくださいね！
MTBだけではなくロードバイクでロングライドや仲間とお楽しみライド、時にはイベントに参加！なんてことも考えています。
E-bikeという最新バイクの普及も、今後のさまざまな可能性が広がるかもしれません。まずはいろんなバイクに乗って自分が楽しみながら仕事にしていければと思っています。

🌟最後に～今後もみんなと共に走り続けたい～

最後になりますが、
僕は本当に運がよくこれまでに多くの人に助けられてきました。コロナ禍ではイベントもなくなり、子どもたちの教室も開けなくなり、ほんとにどうなることかと思いましたが、なんとかやってこれました。
これからも皆さんと一緒に走り続けたいと思っておりますのでよろしくお願いします。
もし次の険しい山がやってきても、置いてきぼりとかなしですから、、、、　峠の頂上では待っててくださいね(笑