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やっと「創造的人生」の10年がきたかもしれない
ずっとずっと、自分がクリエイティブでないことがコンプレックスだった。
原因は、身の回りにすごいクリエイターが多すぎることだと思う。
高校生の時には、とびきりデザインができる子と一緒に、文化祭でファッションショーを開催した。わたしはヘアメイクのリーダーをしつつ、プロジェクト全体を支えて、作れる子たち、才能のある子たちが、のびのびいいものを作れるように振る舞った。大成功して観客からの評判もよく、「ここ数年で一番よかったよ」と先生たちからも褒められて、鼻高々。嬉しかったけど、このあたりから、わたし自身はクリエイターではなく支える側なのかもと認識するようになった。
大学生になってからは、リアル脱出ゲームの企画運営をするSCRAPでアルバイトをした。当時のSCRAPは東京に進出したばかりで、初台のマンションの一室でぎゅうぎゅうになって車座でブレストをしているような、まだ小さなチームだった。社長の加藤さんやクリエイター達のものすごい企画力のひらめきを間近でまざまざと見せつけられた。みんな、ばんばんアイデアを思いつく。その横ですごいねぇ、とわたしはにこにこしている。自分で作れなくても、新しい面白いことが生まれる横、クリエイターのそばにいることはとてもわくわくして楽しかった。わたしは、なかなかアイデアは思いつけないので、ブレストを盛り上げる雰囲気づくりをするようになった。
社会人になってからも、1社目は空間デザイナーやプランナーたちを支えるバックオフィスの仕事をして、2社目はWebデザイン会社の広報をした。身の回りでは常にハイクオリティなデザインが生まれ続けていて、目ばっかりが肥えた。
一方、自分で作ることは全くしない。自分で何かを作ろうとしても、自分で気に入る、許せるクオリティには到底達せないだろうことが目に見えていて、挑戦しようとすら思わなかった。諦めの気持ち。でもクリエイティブは好きなのでインプットはたくさんしていて、「アウトプットしないのに、無駄インプットだなぁ」なんてちょっと悲しく自分を笑っていた。
そんな私に転機がやってきたのが、2024年だ。
2024年に、自分の気持ちや体験をエッセイに書くことをはじめた。大学の時にバイトをしていたSCRAPは、元々フリーペーパーの会社で、みんな文章がうまかった。しかし、わたしは生来あんまり見る目がないのか、正直文章のうまさというのがよくわからなかった。みんなが「このテキストうますぎるなぁ!」と盛り上がっている時も、隣でぽかんとしていた。たしかに面白いけど、うまいってなんだろう? 文章をつくることに関してはそんな解像度だったからこそ、なんとなく書いてみようかなという気になれたのかもしれない。書いてみたら、反応がもらえてうれしくなって、また書けた。
うれしいことに、2024年に書いた何本かのエッセイをたくさんの人に読んでもらえた。私にとってみれば、そりゃあもう、たくさん! 自分の創作物を多くの人に読んでもらえるだなんて、本当に思ってもみなかったので、すごく嬉しい。ともだちから「読んで思わずLINEしちゃった!」と連絡をもらったり、見知らぬ人から読みましたと感想のDMが届いたりした。
2024年に、私の「創造的人生」がやっと始まったのかもしれないと思えた。
「創造的人生」という言葉は、ジブリ映画『風立ちぬ』に登場する。夢だった飛行機の設計を仕事にする主人公の青年・二郎に、憧れの設計家カプローニが夢の中で言う。
「創造的人生の持ち時間は10年だ。設計家も芸術家も同じだ。君の10年を力を尽くして生きなさい。」
この映画を初めて観た2013年、大学生だった私は「創造的な、クリエイティブな人には、10年も時間があるのか、うらやましいな」と、他人事に思っていた。
しかし、32歳、やっと訪れた創造的人生が「10年だよ」と言われると、そんなに短いの?! とビビる。上手に長引かせている人は、身の回りにもいるし、世の中にもたくさんいるはずだけど……。10年? もっとほしいよ。もしかしたらこのセリフは、作る人にとっては呪いのような言葉なのかもしれないと知った。
でも、まずは10年しかないと思っていた方がいいのかもしれない。他人事だと思っていた「創造的人生の持ち時間は10年だ」という言葉を胸に、まずはわたしの10年を力を尽くしてみようと思う。創造的な人生のしっぽを逃がさないように、ぎゅうううっと握り締めながら。
このnoteは、毎日書いている日記の練習の、本番です。2024年12月の日記の本番でした。
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