宵闇亭キ片 「寸足らずの梯子」
いつからここにいる
人の生は走馬燈
俯瞰すれば一瞬
注視すれば終わりなき夢幻
苦痛は永遠
後悔は無限
怨嗟は尽きることがない
這い蹲る汚泥の溜まったビルの狭間の側溝
ビルから吐き出される黴と埃の臭い
痛みはない
疾うにない
ただ痺れを伴う冷たさに犯される
己が擦れていく
廃油の如き感情を残して
足掻けど足掻けど抜け出せぬ
恨めど恨めど怨みは届かず
詛い詛えど応えるモノなき
天に昇る梯子すら寸足らずで
乾いた嗤いを漏らし
湿った嗤いを聞く
黒い影がわらわらと湧いて
じめじめと湿った影じとじとと
怨み怒り妬み
行き場のない詛いの吹き溜まり
翳に宵月の皓り差せど
天に通じる道はない
*
.ビルから吐き出される
黴と埃の臭い
痛みはない
疾うにない
足掻けど足掻けど抜け出せぬ
恨めど恨めど怨みは届かず
詛い詛えど応えるモノなき
天に昇る梯子すら寸足らずで
乾いた嗤いを漏らし
湿った嗤いを聞く
影
怨み怒り妬み
省みられぬ詛いの吹き溜まり
月皓りが差す