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金銭的価値では測れないもの

上記のタイトルは2023年10月4日、ミュージシャンの後藤正文さんが週に一度書いている新聞のコラム「後藤正文の朝からロック」に掲載されたものだ。わたしは後藤正文さんというミュージシャンを知らない。だが、この日のコラムはとても共感し、いまだにその記事の切抜きを目のまえのコルク板に鋲でとめ、いつでも読めるようにしている。もう一年半近く前のコラムだが、紹介がてら書いてみたい。

後藤さんは、消費税インボイス制度に関する話題のなかで「売れないアーティストには価値がない」という言葉を耳にしたという。つまりインボイスが導入されることで金銭的に困る人は『作品の需要がなく才能がない』のだから廃業やむなしという見方があるのだと言う。

だが、果たして音楽等のアートって「売れる」こと、つまり商業的成功がその作品の価値につながるものだろうか? と問いかける。

もともとアートの役割って既存の価値を揺さぶることではないだろうか?

後藤さんはこのコラムを書いた年、働きながらバンドを続けている友人たちと一緒に音楽制作を始め、そこでうまれた楽曲の隅々から、バンドマンとしての彼らの人生や、現在の彼らの魂の震えが感じられて、たまらない気持ちになる経験をしたという。金銭的価値では測れない凛とした魅力がそこには確実に存在しているのだという。

「売れないアーティストには価値がない」という言葉には、それを放った本人の思想よりも、金銭的な価値が何よりも重視される社会の貧しさが映し出されている

この言葉はまさにそう。
バブル崩壊後、三十年たって日本は経済的に貧しくなったと言われる。そのような目に見える貧しさより、後藤さんの提起している「社会の貧しさ」はその自覚が本人にないかぎり、認識することができない。そのため、問題はより深刻であるように思われる。

いま話題の中居正広の問題も、この「社会の貧しさ」に憑き動かれされた結果、生みだされた最悪の事態の一つだと思えて仕方がない。最近、とみにそのような動きが、あちこちで出ているように思われてならない。


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