福祉で働く人は優しい人?
障がい者福祉の仕事をしていると言うと
『それは素晴らしい、あなたはとても優しい人ですね』
と言われることがあります。
特にオンライン英会話をしているときに言われます。そもそも障がい者福祉の仕事をしているということを英語で伝えるのがとても難しいです。
英語が話せるわけではなくケアやヘルプを用いて素人なりに伝えています。
新卒で入った福祉の会社をやめて転職エージェントに相談したときに、福祉業界から別の業界への転職は高い壁があると言われました。
福祉の人は優しいから、ノルマ達成や競争などの面で負けやすいと思われるからマイナス評価になりやすいと言った内容だったと思います。
それを言われた7.8年前は偏見だなと思ったけど、福祉にどっぷり使った今ならその意味がわかります。
自分の優しさや弱さに気づいたということではなくて、福祉サービスの本質に対して自分なりに感じることがある今だからこそという意味です。
福祉が提供する価値は『時間』
福祉の収入のほとんどは給付費と呼ばれるものです。つまりは税金で集められたお金のうち社会保障に回されたものです。
ビジネスは提供された価値に対して対価が支払われます。
つまりは問題解決に対する報酬です。
では我々福祉が提供している価値とはなんでしょうか?
それは『時間』です。
福祉サービスを提供して得られる給付費の報酬単価は提供した時間に対して基本報酬というものが決められています。
それにプラスして専門職などを配置した加算報酬などが上乗せされることはありますがベースにあるのは時間に対する基本報酬です。
上乗せ部分の加算報酬はより良いサービスを提供したということに対して得られるものと捉えると良いかもしれません。
話を戻すと我々福祉が提供する価値とは
『安心安全でより良い時間』を提供することです。
これが示すことはサービスによって得られる報酬の単価が固定されているということに加えて、1日あたりの売り上げの最大値と1施設あたりの売上の最大値が決まっているということです。
さらにはその価値を提供するにあたってかかる人件費などの費用の最低値が固定されているということです。
もう一ついうなら、福祉で働く人は自分の時間以外に切り売りできるものが少ないということです。
売り上げの上限が決まっている事業で利益を最大化するためにはどうするかと言われると
よりたくさんの利用者さんをより少ない支援者でサポートすることです。
しかし、先に述べたように福祉サービスは施設の大きさや設備などに応じて定員数やスタッフの最低配置基準が決まっています。
実際にたくさんの利用者さんを基準を下回るスタッフで対応するとなると安全を守れず事故などのリスクが高まります。監査などで不備が見つかり給付費の返還や営業停止処分となります。
これは安全とサービスの質を守るために決められていることです。
つまり福祉サービスはそれ単体では売り上げの上限が決まっていて、
さらには人件費の支出が固定化されているビジネスです。
そして職員の時間の切り売りしたコストに対して報酬は掛け算的には増えないと思っています。
誤解がないようにいうと僕はこの状況を否定しているわけではありません。
僕は福祉を電気やガスなどと同様にインフラだと思っています。
なので当たり前に安心が提供されることは何より優先されることだと思っています。
でも福祉サービスの仕組みは人によっては必死に働いても報われなくて、働かなくても差が生まれにくいと言えるかも知れません。
実際にはそんなことないのかも知れません。
でも成果が見えにくいサービスなのでそう映るということです。
だからあの転職エージェントさんは、福祉から他業種への転職のハードルは高いと言ったのかも知れません。
福祉できるって優しいねを履き違える人
『福祉やれるって優しい人なんだね』
その言葉を間に受けると僕たち福祉の人間はすぐに自分の仕事を勘違いしてしまいます。
それは障がいがある人のお世話をすることが自分たちの仕事だと思ってしまいます。
そして厄介なことに自分の中の正義に突き動かされ一才の悪気がありません。
でも先ほども述べましたが私たちの提供する価値は『時間』です。
介護という関わりだけが支援でも仕事でもないんです。
福祉の仕事に関わらず、呼吸するように他者の気持ちになれる人はいます。
福祉の仕事をしていたって自分勝手な正義を押し付ける人はたくさんいます。
仮にも福祉に10年いると福祉が向いている人と向いていないなぁと思う人がいるのは事実です。
向いていないなぁと思う人ほど、福祉を勘違いして自分はプロだと言ってる気がします。
そんな人ほど優しいを履き違えて、他人を教え導こうとしたり、その場を制圧してコントロールしようとしたり、褒めるか叱るかの関わりしか持てない人が多い気がします。
『上下関係を作っちゃう人』
いや上下関係の中で生きている人と言った方が正しいかもしれません。
正直福祉業界にはこの上下作っちゃう人多すぎ問題があると思います。
支援者は利用者さんの安全を守る義務はありますが、そこに優劣も上下もありません。相手の脳で考えて行動できる人で溢れてほしいと思ってます。
福祉だけが優しいんじゃなくて、そんな人がたくさんいる世界になればいいなと思っている次第です。
僕が目指す持続可能な福祉は、福祉サービスが給付費以外の財源をもとにさまざまなニーズに対してさまざまな人が関われる環境の実現です。