【不妊治療体験談#10】心のなかで中指を突き立てながら、涙で終えた2度目の人工授精。
どんなにやさぐれてても夜は明け、1日が始まる。そんな毎日がつもりつもって、いつの間にか2度目の人工授精を終えていた。ほぼフルタイムで働くようになってからというもの卵胞が思うように育たず、排卵誘発剤をつかって人工授精にステップアップした4月。誘発剤さえ飲んでいれば、多少無茶をしても育つと思っていたのだけれど、そんなに甘くはなかったのでした。
今周期、クロミッドを5日間服用し、10日目の卵胞は右14mm。hcg注射を打って2日後に人工授精することに。仕事が重なり体調も良くなく、あまりのしんどさに何をどう処理すればいいのかもわからない。最悪のコンディションで迎えた人工授精当日。まさか、というか考えればわかることだけれど、成長していたはずの右卵胞の成長が止まり、左卵胞が14mmに。卵胞が育たなかった事実に、おまたぱっかーんの状態で涙が流れた。その上、排卵するかどうかもわからないのに何の説明もなく人工授精。「え、まって?絶対無理やん。今14mmやで?先生何考えてんの?F*ckkkkkkkkkkkkkkkkkk!!!!!!!!!!くそヤブ医者が!」ムカつきすぎてさらに涙。「こんなタイミングにやっても意味ないですよね?」震える声で訴えかけたけれど、「排卵するかどうかはわからないけど3日間は精子生きてるから十分可能性はあります」と、院長。いやいや、運動率悪いのわかってるやん。それなら先に卵胞測って別日にするとかあるじゃないですか。こっちは男性不妊も抱えてて、人工授精3回で切り上げるかどうか悩んでて、1回にかける重みがそれなりにあるんですよ。都会で病院を選べられたらいいのだけれど、田舎ゆえに選択肢がなくどうすることもできない。
帰りの車中。黙って泣いている私に気を使ってくれた旦那さんに連れられ、見晴らしのいい丘へ。道中寄った評判のパン屋さんで買った話題のマリトッツォを一口。こんなときでもうまいものはうまい。それだけで気持ちは落ち着いた。
心のなかで中指を突き立てるようなことがあっても、美味しいものを食べれば幸せを感じるし、今日観た「ジョジョラビット」みたいな傑作映画に出会ったときには生きててよかったって思う。あと何本こんな映画に出会えるのかなとか。監督、次の新作いつですかって。
でも充足感のあとに、ジョジョラビットの主人公みたいにキュートな男の子を育てたいとか。スカーレットヨハンソンみたいなお母さんカッコいいなとか。(愛は最強の力なんて絶対言わないけど)
思うようにならないのが人生。って30年も生きれば頭ではわかってるんだけれど、孤独に勝てるほど強くないことも十分理解しているわけで。60代で身寄りもなく独りになったら積極的安楽死を選べる世の中になっていてほしいって真剣に考えたり。(少子高齢化社会の切り札だと思うのだけれど)
養子までは考えられなかったり、そもそも自分の遺伝子が残るのってどうなのかと思ったり。でも母親を経験できない人生は嫌だって思っていたり。仕事減らしたほうがいいって思っていても、仕事内容に見合った対価、待遇を求めてキャリアアップしたり。もうね、矛盾だらけ。一体何がしたいの。
よくわからなくなって、「海辺に住みたい」って前よりも強く思うようになって日本海で別荘探したりしてね。迷走中。迷走しているときに思う「あぁ、生きてるんだな」って。子どもを諦めたら一目散に海辺に別荘建てよう。こんな感じの平家。海を眺めながらリモートで仕事して、会社がある大阪にも拠点作って海辺と大阪の2重生活とかね。悪くない。
迷走してても感謝は忘れちゃいけないって思ってる。最近できなくて困っているのだけれど。生かされているってことを忘れちゃいけないと思う。
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明後日月曜日は、院長じゃなく市内から週1回きてくれている不妊専門の先生に精液を見てもらうことになっている。実際に動きをみて、人工授精を3回で切り上げて体外受精にステップアップするのか、5回6回まで粘るのか決まる日。心の準備はできているのだけれど、きっとまた泣いてしまうんだろうな。でもどうせ死ぬまで生きることになるんだから、少しでも心地よく過ごせるように努力しよう。
「すべてを経験せよ
美も恐怖も
生き続けよ
絶望が最後ではない」
詩人 ライナー・マリア・リルケ
ジョジョラビットのエンドロールに映し出されるリルケの詩。辛い経験は他人の気持ちを理解するためにある。他人の気持ちを理解できることが強さ。そう思って生きているから、不妊治療の経験自体は財産だと思っている。今の会社で不妊治療を始める人が出たら少しでも役にたてるかもしれない。そうやって循環していけばいい。世界は循環で成り立っているんだから。
最後にジョジョラビットの最高すぎるラストのダンスシーンを貼り逃げ。生きる希望が湧く映画、タイカ・ワイティティ監督ありがとう!(戦争が終結したものの身寄りがいなくなった2人が踊るシーン)