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茶が紡ぐ静岡 ニッポン・チャ・チャ・チャ
新型コロナウイルスが変えた働き方と茶の距離
新型コロナウイルスの蔓延で、通勤・通学は控える傾向が強くなっている。ビジネスマンは在宅によるリモートワーク、学生はオンライン授業へと切り替えられた。
そうしたリモートワークにの普及により、多くの人たちがライフスタイルを変化させる。これまで、通勤・オフィスワークのために必要とされたスーツは着る機会を減らし、そもそも通勤時間という概念も消滅。小さなことものいる家庭なら、お父さんが保育園の送迎をするなんて光景も増えてきた。
そうした在宅仕事の普及は、もちろん新型コロナウイルスによるものだが、それだけでは説明できないような普及ぶりだと思う。新型コロナウイルス の感染拡大が叫ばれてもなお、満員電車は解消しなかった。つまり、感染症に罹患するよりも、仕事優先。それが美しい日本の醜い現実だった。
在宅仕事をリモートワークと呼び変えることで、家で仕事なんてできない!というイメージを一蹴。これが、結果的に奏功しているような印象がある。なんだかんだ理屈に合っている説明をしても、どんなに合理的かつ効率的といえども、生産性の向上なんてお題目を謳っていても、日本企業は心のどこかで上意下達を好む。
在宅仕事などという、出社しない働き方など、上が許さない、そんな事情から、いっさい普及することはなかった。それが新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、「リモートワーク」「テレワーク」の名称とともに一気に定着した。こうした働き方が、新時代の働き方なのだ、と。
リモートワークが普及する以前から在宅仕事の多い私だが、一息つく際に飲むのはブラックコーヒーばかり。仕事の合間に、コーヒーを淹れるのも、もはや仕事の一部にさえなりつつある。少しばかりコーヒー中毒の気もする。
お茶王国・静岡 給食と緑茶
家では淀みなくコーヒーばかり飲んでいるが、コーヒー党になってからは日が浅い。紅茶党の方が歴は長い。
紅茶との出会いは、どこのコンビニでも見かけるリプトンのミルクティーだ。高校生の時にコンビニで目にしたリプトンのミルクティーを味わってから、こんな手頃な価格で、うまい紅茶が味わえるなんて!という衝撃を受けた。
とはいえ、静岡市出身の私にとって、飲料といえば何を差し置いても”茶”だった。しかも、緑茶。もっと言えば、煎茶だった。
小学校の通学路には大きな製茶工場があった。その製茶工場は同じ学校に通っている子の実家だった。同じそろばん塾に通っていたこともあり、顔は知っていた。
しかし、学年も違えば、女子の家に気軽に遊びに行くような性格でもなく、またその子は素晴らしく頭がよかったので気後して、遊びに行ったことはない。
ただ、製茶工場裏の道が通学路になっており、下校時には製茶工場の様子は毎日のように見ていた。下校時に通ると、工場の機械がけたたましく動き、お茶のにおいを周囲に漂わせていたことを覚えている。
換気のためなのか、製茶工場のシャッターはいつも開いていた。そのため、機械を間近で眺めることができた。機械から吐き出されるように出てくる煎りたての茶葉が面白くて、悪ガキどもはそれを手で受け止め、それを近くのドブ川に流して遊んだりもした。
のどかな時代だったからそんな悪行が許される雰囲気だったが、製茶工場としては商品をパクられているのだから、たまったものではない。
牛乳を追いやった茶の強さ
かつて学校給食はパンが主流だったこともあり、提供される飲料は牛乳が当たり前だった。たまに米飯も出てきたが、それでも飲料は変わらずに牛乳だつた。栄養価ということを考えれば、タンパク質・カルシウムを摂取できる牛乳は学校給食にとって欠かせなかったのだろう。
しかし、時代は変わった。米飯主体の学校給食が広まると、しだいに米食に牛乳は合わないのではないか?という意見が相次ぐ。
今ではいろいろな学校で牛乳に替わってお茶が提供されるようになっている。スーパーやコンビニでも当たり前に牛乳を買うことができる。私が小学生の頃は、まだ牛乳の戸別配達に元気がある時代だった。
鮮度が物を言う牛乳だから、配達が成り立っていたのだろう。また、牛乳の産地は北海道に偏重している。安定供給、仕入れの面からも、配達の方が優れていたと思われる。
牛乳に比べる比べると、お茶の産地は広く分布している。少し前まで、お茶栽培の北限は宮城県気仙沼といわれていたが、技術の向上は目覚ましく、そして温暖化も相まって青森県黒石でもお茶栽培が試みられている。早晩、北海道にもお茶栽培は上陸するかもしれない。
つまり、それだけお茶は身近な飲料といえる。地産地消を取り入れることで食育という教育目標も盛り込める学校給食において、牛乳よりもお茶を重視するという流れが加わるのは自然だったのかもしれない。
学校給食で提供されるのは、基本的に煎茶。たまに、ほうじ茶も出たような気がする。子供だったから、そのあたりはあまり覚えていない。
1980年代後半だから、まだペットボトル茶は登場していない。缶入りのお茶を自販機で見かけることはあったが、「なぜ、わざわざお金を出してお茶を買う必要があるのか?」という疑問が常にあった。
それほど、静岡では当たり前のようにお茶と接する生活だった。缶入り茶の習慣が当たり前になり、そしてペットボトルでお茶を飲むのが主流になり、健康志向の高まりからコンビニでもお茶の方が棚の大半を占めるまでに至っている今、時代の移り変わりを感じさせる。
静岡県富士市の茶畑
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