指標を新しくすることでビジネスが生まれる例(TVISION INSIGHTS社)
こんにちは、Hakaliのおがわです。
このnoteでは指標ポエムをひたすらに投稿することで、指標って面白いな、人を動かすのは指標(力学)なんだな、他にも面白い指標ないかな、と指標のトリコになる指標教の普及を目的としておりますが、第三回目の今回は具体的に、「新しい指標を作ることで、新しいビジネスが生まれた例」というものを取り上げてみたいと思います。
「視聴率」ではなく「視聴質」を計測する会社、TVISION INSIGHTS社
「視聴率」という言葉はほとんどの人がご存知だと思います。ビデオリサーチ社がやっているあれです。ランダムサンプリングした世帯にモニター用機器を接続して、何チャン見てるのかを計測、そのデータをテレビ局は番組の良し悪しの指標として使っていますよね。
でも、視聴率はあくまで「テレビが何チャンつけているか」というものを測定しているわけです。
例えば僕は、酔っ払って帰って来ると「よし、今から仕事するぞ」とか言いながらとりあえずテレビをつけて水を一杯飲み、「ちょっと休憩」と言ってソファに横たわったが最後そのまま寝てしまい、3時くらいのテレビショッピングの大げさなリアクションで目を覚まして、「あ、やべ、寝ちゃった。仕事明日でいっか」と言ってテレビを消してソファで寝直すか、ほんとにやばい案件がある場合は「ううむ...」と言いながらおもむろにパソコンを開いて仕事を始めるわけです。
この場合、テレビはついていてチャンネルもずっと固定されているものの、果たして「観ている」といえるのかというとかなり疑わしいですよね。
それ以外にも、主婦がテレビの前でかじりつきながら「昼顔」の斎藤工を観ているのと、テレビをBGMとして流しながらキッチンで料理作っているのでは同じテレビついていると言っても全く「質」が異なるわけです。にもかかわらず現在の視聴率は同じものとしてカウントしてしまう。
ここに問題(というか改善点、ビジネスチャンス)を感じ、指標を発展させたのが「視聴質」であり、視聴質を展開しているのがTVISION INSIGHTSさんです。
視聴質のとり方は視聴率のとり方と構造的には似ていて、ランダムサンプリングしたモニター世帯のテレビに機器をとりつけます。ただその機器はカメラになっていて、テレビの前の「人」をデータとして取得しているところがポイントです。
そもそも人がテレビの前にいるのか、テレビに対して正面を向いているのか、下を見ていないかといったデータをカメラから読み取ることで、「質」を測定しています。
これによって同じ視聴率でも、「より視聴者が集中して観ている時間帯は、番組は」といったことが分かるのです。なのでたとえばTV広告を多く打っているクライアントからすると、効率良いところに予算を配分できるのでよりコスト対広告効果を高めることができるわけです。
すごい!指標を変えたことでビジネスが新たに生まれました!しかも、視聴率自体を否定せず、視聴率をより精緻に見ることで広告効果が高まる、というポジショニングをとることで、視聴率自体を否定していないところもセクシーでエレガントなポイントですよね。その方が多分ビジネスしやすいですもん。いやーセクシー。Hakaliでもこんな指標を作ってみたいものです。
実は「ビッグデータの扱い方が肝」てことを声をビッグにして言いたい
というわけで、視聴質すごいねー、いいねーなんですが、わたくしもデータサイエンティストの端くれ、この「視聴質」というものの正体をもう少し紐解いてみたいと思います。
僕実はTVISION INSIGHTSさん、去年WeWorkのオフィスにお邪魔させていただいたことがあり(先日お引越しされたとのことです!)、その時にこの視聴質の話を聞いて感動すると同時に、一つの疑念が生まれました。
それは、「カメラのデータを一日中測定しているって、データ量やばないすか?」ということでした。
だってスマホの動画とかですら1分とったら数メガ数十メガですよね。サーバーすごいことになってないの?と。
それに対する答えはとてもシンプルで示唆に富んでました。
「『視聴質』という指標を先に定義していて、体が正面を向いているか否かの0/1、顔が前向いているか否かの0/1、といった数字のみを保存していくことになっています」
なるほど、保存するのは画像ではなかったのです。
カメラで撮影したものをそのままその場でモデリングして(ここが特許技術?)、上記指標に足るものだけを0/1等数値で表現してDBに格納するから、1回の測定(DB上1行で表現されるデータ)は十数列程度、結果として1日で全てのサンプル合わせて貯まるデータも大したサイズにならないという。なんという圧縮度!なんというエレガントさ!
ビッグデータ系の話って、「大量のデータあるからこれでビジネスしよーぜ」ていうことになりがちなのですが、データの格納の仕方をビジネス組み立てる時に決めておかないと、サーバーコストばっかりかかってしまいますよね。だから先に「質」を定義してそれ以外を潔く捨てる。これこそが大量データ扱ってビジネスする側としては目指すべき姿だなーと思いました(つまりデータあればあとは色々できるだろうと、意思決定を先延ばしにしないほうがコスト的に正しい姿勢であると)。
今もやってるのかわかりませんが、TVISION INSIGHTSさんのオフィス行くと実際のカメラとそのデータを画面にうつしてて、すごいスピードで数字の羅列が流れて行くのを観ることができました。
いやーWeWorkが全部スケルトンだったのもあいまってセクシーさ全開の訪問でした。結構な指標でした。ごちそうさまです。Thanks for the Index.
余談:テレビってなくなるでしょ?という声について
というわけで本論は以上なのですが、最後にその場でちょっと盛り上がった話を。ニュースで見る話でも、ネットで漁った感じでも視聴率自体はどんどん下がっている訳ではあります。
でもじゃあ果たしてテレビはなくなるのか、というと、おそらくNoだと思っています。視聴率はあくまで「テレビ局の番組を見る率」です。
でも我が家ではリビングのLGの60インチで、youtube,AmazonPrime,Netflix(なんなら「2048」といったゲームすら)といったサービスを延々と観ています。スマホでは「みんなで観る」がしづらいのです。家族団らんの核として、やはりテレビという箱は君臨し続ける強いプレーヤーだと思っています。
まとめ
そんなこんなで、指標を通して新しいビジネスを作るということは、世の中に新しい価値の軸を提供するということ。そんな素敵な指標を作ったTVISION INSIGHTSさんを株式会社Hakaliは応援しております。
そしてこの記事を書くことをご快諾いただいたYasushi Gunyaさん、ありがとうございました!!
Thanks for the Index!
では今回はこの辺で。
info@hakali.jp
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