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8. エンジニア業界の問題点

今現在実感しているエンジニア業界の問題点について書きたいと思います。


経験

エンジニア業界の現在の問題点の一つとして

「経験豊富なエンジニアが足りていない」

が挙げられます。しかし、単純に若い優秀な人材を育成すれば良いという問題ではありません。なぜなら、そうしたくてもできない事情があるからです。

日本ではどの業界でも、大手企業は人件費を削減するために、外部に出せる業務は可能な限り外注する基本戦略を採用しています。その背景には、日本の雇用制度において

「簡単に人を辞めさせることができない」

という問題があります。大手企業が多くの正社員を雇い、社内で全ての業務をまかなってしまうと、不景気などで売り上げが落ちたときにリストラが困難になり、経営が厳しくなります。

その結果、日本では派遣業や中小企業が多く存在します。これら中小企業の割合が99.7%に達するのも、このような事情からです。

業務を外部に委託すると経費が増える一方で、大手企業が売り上げを伸ばすことができるのは、強いブランド力を持っているためです。

ブランド力を維持するためには、製品の質やサービスのレベルを高く保つ必要があります。そのため、大手企業から仕事を受ける中小企業に対しても、同様に高品質な製品やサービスを提供することが求められます。

しかし、私が現場で活躍していた20代の頃は、いわゆる「就職氷河期」の真っただ中で、多くの企業が新卒の採用を見送る状況でした。

その結果、その世代のエンジニアの数は他の世代に比べて少ない状況となりました。このような背景から、現在経験豊富なエンジニアが足りていないという問題が生じています。

当然少ないエンジニアで業務を回しますので、業務内容が苛酷になり以下の「駆け出しエンジニアの多忙な時期」


で書いたように厳しい業務の中で、多くのエンジニアが挫折してこの業界から去っていきました。

経験豊富なエンジニアが不足している要因の一つとして、現在の45歳から50歳前後のエンジニアたちが関係します。

この世代のエンジニアは就職氷河期を乗り越え、第一線で活躍し続けてきた人々で、彼らが担当する業務が多いため、下の世代に知識を伝える時間が十分に取れていない状況です。

大手企業は、ブランド力を維持するためにできるだけ経験豊富なエンジニアに業務を依頼したいと考えています。なぜなら、システムのダウンやその他の大きな失敗が発生した場合、それがブランド力の低下につながるためです。

そのため、大手企業は中小企業に業務を依頼する際にはいくつかの制約を設けます。制約の具体的な内容は業務によりますが、以下のようなものがあります

  • 実務経験が3年~5年以上

  • 同じ業務を長らく経験した者

  • 経験者で有資格者


このような制約の結果、中小企業では業務に関わることができるスタッフが限られてしまいます。その結果、若い優秀な人材を採用したとしても、それらの人材を業務に関与させることが難しくなります。

理想的な状況では、経験の浅いエンジニアはOJT(On the Job Training)などを通じて、経験豊富なエンジニアから直接技術や知識を学ぶことが望ましいのですが、大手企業の設けた厳しい条件下では、経験の浅いエンジニアを現場に連れて行くこと自体が困難になります。

経験の浅いエンジニアを現場に連れて行くことができたとしても、その費用は中小企業が負担しなければならないばかりか、大手企業の制約により新人エンジニアが直接業務に関与することができないため、彼らは実務を経験することができません。

このような状況が続くと、若いエンジニアの育成はさらに難しくなり、経験豊富なエンジニア(例えば、私と同年代の人々)は依然として第一線で働き続けることになります。

もし彼らが体調を崩したりして業務ができなくなった場合、その代わりを務めるエンジニアがいないという状況に陥ります。

この結果、業務を委託した大手企業も深刻な打撃を受ける可能性があります。しかし、現状ではそのような危機的状況に対する意識が大手企業側には足りていないと感じられます。

本来であれば、資金に余裕のある大手企業側から、業務を委託する中小企業に対して育成の観点からもある程度の配慮が必要ではと感じます。

なぜなら、中小企業にはそうした余裕がないためです。

以下の「受注が階層構造である事の問題点」


で書きましたが、これでは、大手企業と中小企業にますます差が出来てしまいかねない状況です。

私自身もそうなのですが、弊社でも負荷の高い業務をこなしている社員がいますので、何とかその状況を改善する事が、今後の課題となっています。

#育成 #エンジニア不足 #若手 #問題点

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尾川 俊司
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