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128.キャリア学習④
しばらく時間が空きましたが、今回は「島根県立松江北高等学校 2年生」が対象です。初めて高校生が対象です。中学生とは異なり多くの問答があり、互いに大きな学びの時間となりました。
コミュケーションの質
まず初めに感じたのはここです。今回来られた生徒さん達が秀でていたのか現時点では経験が少なく判断が出来かねるのですが、質問の内容が「こちらが聞いてほしいと感じる内容」ばかりでした。
そうしたこともあり、私も質問されるたびに次から次へと伝えたいことが湧き出てくるような状況で、とはいえ一つの質問に時間をかけすぎると他の質問を受けれないので、バランスを取りながら受け答えする点に注意しました。
いたって素朴な質問が多いのですが、それだけにホントに疑問に感じていたことを率直に聞いていただけたことが嬉しかったです。
質問や問いの数々
ざっくりですが、以下が頂いた質問やこちらから投げかけた問いです。一つ一つで記事が1本書けてしまう内容ばかりでした。
モチベーションのあげ方
一つのソフトウェアを作るのに何人関わるか
ソフトウェア制作で大切な所
工場が作られる場所はどのように決められるか
価値とは
人との関わりの大切さ
AIは活用出来るのか
100%が求められるシステムとは
半導体工場とは
様々な経験の重要性
ベストパフォーマンスと体調管理
他にもありましたが記事が長くなりすぎるので、これらについて話したことを簡潔にまとめておきます。
1.モチベーションのあげ方
これは「やらされている」ではなく「やっている」と感じられることが重要です。例えば、好きなことをしているときは「やっている」ですよね。でも、人から言われて行動すると「やらされている」です。
つまり「やらされている」ではモチベーションを上げることはできず「やっている」でなければならないということです。では、どのようにして「やっている」とするのか。
日常様々な問題が発生します。このような時、周囲の人々や環境の問題としたならば、その状況を変えることは難しくなります。なぜなら、コントロールすることが容易ではないためです。しかし、自身の行動や考え方を変えることは難しくないはずです。何故ならそれは自分だからです。
全てを自発的な行動に変えることで「やらされている」が「やっている」に変わります。つまり、それ自体がモチベーションにつながります。少し考え方を変えるだけで、物事というのは難しくも簡単にもなります。この柔軟性を持つことで人生はより良い方向へ流れていくことをお伝えしました。
2.一つのソフトウェアを作るのに何人関わるか
期間さえあれば、規模に関係なく優秀なエンジニアであれば一人で作成可能です。私が現在作っているシミュレーターは一人で作っていますが、ソースコードは数千に上ります。
これだけのソースコードがあれば、概ねどのようなシステムでも作成が可能と言えます。しかし、実際は一人では作成できません。なぜなら、ソフトウェアというのは作ることよりテストにより多くの時間を必要とします。特に産業用のソフトウェアの場合、失敗が許されないため質が重要となります。
テストを自動化するのはもちろんなのですが、それは製作者が行う範囲の作業で、実際には第3者がテストを行い評価することが重要です。というのも、制作者はソフトウェアの動作を知り尽くしているので、テスト時に無意識のうちに問題が発生しないオペレーションやテストを行ってしまう場合が多いためです。
そのため、実際に現地で作業されるフィールドエンジニアまで入れると、半導体の工場のような規模感だと1つのシステムには100名以上が関わることになります。
3.ソフトウェア制作で大切な所
2でも少し書きましたが、まずは質です。この質というのはプログラムのパフォーマンスはもちろんのこと、メンテナンス性が求められます。
機能を追加しやすい仕組みや、ソースコードが読みやすいか(コメントを多く入れる、条件分岐を少なくする、ソースの分け方等)などの工夫が必要です。
あとは問題が発生した時に、何が原因かを調べることが出来る仕組み(ログを取る、状況を把握できるツールを作っておく等)も必要です。
ソフトウェアは人が触るものなので、人が理解しやすいコードがメンテナンス性の高いコードと言えます。しかし、実際エンジニアという人種は「トリッキーなコード=かっこいい」と思い込み書きたがる人が、私含め多いです。笑
4.工場が作られる場所はどのように決められるか
地政学リスクを考慮して作られる場合が多いです。例えば、現状半導体大手の台湾だと戦争になってしまうとどうなるでしょうか。そのため、多くの国に分散して工場を建設することで、このリスクを回避出来ます。
また、工場には水が必要になることが多いので、供給しやすい場所というのも重要です。他には輸送に関しても考慮されることが多いです。
5.価値とは
価値というのは言われたものを作っているだけでは、大きな価値を生み出しません。例えば、お客さんが「○○をしたいから、この仕様の物を作ってほしい」と言われた時に、素直に「はい、分かりました!」とその仕様のまま作ってしまうと、実際に使った時に「期待外れ」となることが多いです。最悪、使いづらいから使われなくなることすらあります。
なぜこのような状況になるかというと、仕様を作っている人と現場で使っている人が異なるためです。また、発注元より実際にソフトウェアを開発している側のが詳しい場合が往々にしてあります。
ENDユーザーが直接ソフトウェアを制作する側に発注をかければ、期待に近い形となるのですが、通常商社や大手メーカーが間に入るため、このような状況となります。特に機械制御の場合は、ENDユーザーも制御が分からないので発注が出来ない状況となります。
そこで重要なことは、ソフトウェア制作を行う側がヒヤリングを行い提案もすることです。そうすることで、実際に必要とされるソフトウェアに近い形のものを作ることが出来ます。
但し、これを行うにはソフトウェア制作側に高いスキルが求められ、それがないと技術的提案を行うことが出来ません。そのようなことから、価値を生み出すにはソフトウェアエンジニアに高度なスキルとコミュケーション能力が求められます。
6.人との関わりの大切さ
2や5の説明の通りで、多くの人との関わりでソフトウェアは作られます。であるならば、同じベクトルで皆が目的を達成するために活動する必要があります。そのため、人との関わりが重要となります。
一人では小さなことしか出来ませんが、大きなことをするには多くの人との関わりは避けては通れません。エンジニアにコミュケーションの質が求められるのはそのためです。
7.AIは活用出来るのか
ロボット単体のような1つのデバイスとしてみると、活用は可能ですが工場全体となると難しい所があります。というのも、産業用システムの場合は失敗が許されません。AIは99.9%は行けるかもしれませんが、100%にはなれません。そこが失敗が許されないシステムとの相性が悪いのです。
量子コンピューターも同じで「エラーの訂正をどのように行うか」この部分が重要とされています。最近では従来型のコンピューターとの複合システムで精度を高める研究も進んでいます。
半導体の工場の場合、システムをいったん止めてしまうと復帰までに一か月程を要するほどに影響が大きく、絶対止めれないシステムとなっており冗長性が重要となります。
このようなことから、部分的には可能だが全てとなると現時点では難しいと言えます。
ちなみに、エラーを見つけるという点においてはAIの活用が生きる分野と言えます。過去の統計情報やリアルタイムな情報から「この辺注意してね」などは、得意分野と言えそうです。
8.100%が求められるシステムとは
例えば、ゲームソフトでバグがあっても「アップデート配信までまってください」が許されますが工場システムの場合はそうはいきません。停止している時間によって、損失が拡大するためです。
半導体工場はもちろんなのですが、自動車の製造ラインなどでも1時間止めるだけで億単位の損害が出るシステムも存在しています。
産業用の自動化システムの難しさは、常に100%が要求されることから関わるエンジニアの負担が大きく、常に人材不足となりがちです。
9.半導体工場とは
まさに、8のシステムとなります。「絶対に止めれないシステム」と言えます。半導体工場が特にその傾向が強いのは、複数の理由からです。
そのうちの1つが、極めて高いクリーン度が求められるためです。例えば、装置が追突した場合周囲に多くのゴミをまき散らすこととなります。このような状況では生産に支障が出てしまうため、クリーン度を元に戻すための期間が必要となります。
もう一つが多くの工程から製造される仕組み上、工程を途中で止めることが出来ない点です。それぞれの装置は常時稼働し続けていることを前提に調整されています。そのため、停止させてしまうと再起動時に調整が必要となってしまいます。それが、全ての工程で必要となるため、元に戻すのに一か月程かかる場合があります。
これらのことから、全ての装置やデバイスは冗長性を持たせたものを利用し、コンピューターにおいても切り替える仕組みが存在していることから、複雑なシステムになる傾向が強いです。
10.様々な経験の重要性
学生の時に明確な目標をもって、その目標のために学業に励んでいる人は少ないと思います。もちろん、それが出来れば良いのですが経験の少ない中で何が自分に合っているのかなど、判断出来ないですよね。
そのようなことから、社会人になるまでに様々な経験を積むことが重要です。特に実際の労働ですね。何故なら、お金の価値を知ることができ、人との関わりの大切さを学ぶことができます。また、自身に合う仕事を見つける参考にもなります。
私が学生の頃は高校ではアルバイトも許可されていたのですが、最近では許可されていない学校が多いです。しかし、冷静に考えると社会人になった時に学問と労働の経験、どちらが将来役立つでしょうか。
もちろん学問はアカデミックな企業や研究職であれば活かせるのですが、どれだけの人がその分野の仕事に就くのでしょうか。
労働の経験があれば、どのような仕事が自分に向いているのかを体験することが出来ます。しかし、それが無い状態で何が向いているか、正しい選択が出来るのでしょうか。
最近ではインターンの形で体験可能な企業も増えては来ましたが、インターンを中小企業で行うのは負担が大きいと感じています。人的・資金的リソースが不足しているためです。
しかし、日本の企業の99.7%は中小企業です。
これが、様々な経験の重要性を感じる所です。
11.ベストパフォーマンスと体調管理
ベストパフォーマンスを出すには体調管理が重要です。どれだけ高い技術があったとしてもそれを発揮できなければ意味がないためです。
年齢を重ねると、自然と体調管理の重要性を認識出来るようになるのですが、20代は多少の無理も効くので、夜更かしされている方が多い印象を受けています。私の場合は単に仕事が忙しすぎてハードワークせざる負えない状況でした。
今はカオスな業務は少なくなっているのですが、20代はまずスキルに磨きをかけることが重要です。スキルを得ることで、効率的に業務をこなすことができ、その結果短い時間で結果を出せるようになります。すると、自己管理にシフトしやすくなるばかりか、余った時間を自由に使うことが出来ます。
そのサイクルが持続できるようになると、仕事の効率はさらにアップします。このことを理解されていない20代の方が多い印象を受けます。転職についても深く考えたほうが良いです。スキルを身に着ける前に転職してしまうと、都度リセットされ自己管理につなげる前に疲弊していきます。
スキルを得て初めて自己管理も出来始めます。そして体調管理を行い常にベストな状態で生活することを大切にして欲しいと願っております。
まとめ
今回は私にとっても大きな学びとなりました。それは、多くの疑問を持っておられる学生さんの存在を知れたことです。
人生の中で大切なところとして「疑問を持つ事」があります。疑問を持つからこそ次の行動へつながります。もし、それを持てないのであれば現状に不満がないことになるので「よりよくしたい」と考える必要性がありません。
そのような人達ばかりになってしまうと、社会は衰退していきます。楽にお金を稼ぐことばかりを考える人たちが増えてしまうのです。今の日本は少なからずそうした傾向があるようにも感じています。
経験者が何が大切かを伝えることで、そこから現実と照らし合わし疑問が出てくると思います。これが大切だと私は感じています。「よりよくしたい」という欲求を人は無くしてはいけません。
また、他者を犠牲にして良くするのも違います。それは一時的に自身は良くなるかもしれません。しかし、人生終盤に差し掛かったときに後悔することとなります。せっかく生まれてきたのだから、人生に後悔したくないと誰しも思いますよね。
今後もキャリア学習を通して経験と考え方を共有していきたいと思います。
但し注意してください、私が伝えていることについても「疑問を持つ事」が大切です。そこから先は自身で判断し行動することが求められます。それが出来て初めて「自立した個」となります。
引き続き、今後の日本を支える人たちとの交流を続けていきたいと思います。
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![尾川 俊司](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/126774333/profile_2d9e1446b5cc8f11c0d30f20fde500aa.png?width=600&crop=1:1,smart)