2. 中小企業の代表になられる方へ
実際の代表として活動を始めた時の内容について書きたいと思います。
厳しい状況
代表としてのポジションについた当初、経営状況は非常に厳しいものでした。多くの社員がその危険性を認識していないように見えましたが、長年エンジニアとしてこの会社で働いてきたことから、なぜ危ういのかもある程度明確になっていました。
代表として最初の仕事は、なぜ会社がそうなったのか、どのように現状を改善していくのか、具体的な方法を考えることでした。
最初に対処すべきと感じたのは、年齢の高い社員のみで構成されていたことでした。この問題を解決しなければ、技術の継承ができず、近い将来に会社が機能しなくなることは明らかでした。
しかし、小さな企業にとっては、人材を確保することも大きな課題となります。
そこで、これまで受け身の募集をしていた私たちは、エージェントを通じて紹介を受ける形に切り替えました。内定が決まると経費が発生しますが、ミスマッチを起こした場合の会社としての負担を考えると、選択肢はありませんでした。
教育問題
また、新しい社員をどのように教育していくのか、その問題もありました。
私は約15年間サッカーチームの指導者をしていた経験から、育成についてはある程度の理解がありました。
サッカーとエンジニアリングでは教える内容は全く異なりますが、育成の基礎は同じだと感じ、自分自身が新入社員の教育を行うことにしました。教育についてはまた別の記事で詳しく紹介します。
幸いな事に、ご紹介いただいた企業様と入社された方の努力もあり、想定より良い方向へ進んだ事で、次を見通すことができました。
ハードな業務
この時、エンジニアとしての業務、代表としての業務、教育者としての業務、そして全ての社内インフラの構築と管理を自分で行っていたため、年間で10日程度しか休むことができない状況でした。
特に最初の1年間は、経営業務全体を新たに構築する必要があったため、大変な時期でした。
その間、労働条件について詳しく調査した結果、社内規定にも問題があることが分かり、これを改訂することにしました。
また、その頃、私自身が肉体的・精神的に疲れていたためか、アレルギーを発症し、以降私の生活はアレルギーと向き合いながらの生活となりました。この話はまた別の機会に詳しくお話しします。
それにもかかわらず、楽しく仕事に向き合えていた感覚があったのは、自分が思っていたことを実行に移すことができる、それが何よりも幸せだったからです。
もう一つの支えとなったのは「強い責任感」でした。これがなければ、リスクを冒してでも会社を良い方向に導くことはできなかったと感じます。
今後に向けて
就任1年後の決算時には、明確な経営目標を設定し、半期・1年・5年の目標を設定し、それに沿って進めることにしました。以下に、5年間の目標を示します。
利益を上げ続ける
若いエンジニア中心の会社としていく
現状の2倍近くの人員を目指す
利益を社員に還元する
私が特に重視していることは「利益を社員に還元する」です。
現在の日本は、長らく成長が止まり、衰退しているように見えます。だからこそ、社員にはそう感じさせたくないと思っています。
今までの経営は年功序列でした。しかし、それでは優秀な人材を確保し続けることが難しくなります。それぞれの成果に応じて、年齢に関係なく十分な報酬を与えることがフェアだと思います。
もちろん、経験を積んだ人は多くの面で優れているのですが、若い方でも十分に実践で通用する能力を持っておられる方もいます。
私たちの会社の業務はJOB型の業務なので、評価しやすい利点があります。ただし、私の基準では、売り上げだけでなく、経営や教育にどれだけ関わっているかも評価の一つとしています。
私たちの会社では、年に3回の賞与を設けています。夏と冬は概ね固定ですが、期末賞与はその年度の社員各々の利益率や評価に応じて決めています。そして、賞与の内訳も明確に説明ができる形としています。
このようにすることで、利益を社員に還元しやすく、透明性を確保できます。
3月末決算の会社では、夏と冬の時点で年間の売上が確定していないため、売上に応じた賞与を提示するのが難しいと感じるのですが、期末賞与では年間の売上がほぼ確定しているため、社員に還元しやすくなります。
そのような理由から、私たちの会社では期末賞与が最も還元率が高くなります。
もう一つ重要なことは、会社の利益の90%から95%を社員に還元することです。一般的な企業では、設備投資やリスクを考慮して、そこまで還元する企業は少ないと感じます。
しかし、現在の日本に必要なのはこのような考え方だと感じています。実際、最近では多くの企業が給与を引き上げる傾向にありますが、それは裏を返せば、これまで還元していなかったとも言えます。
一部の大企業だけが大きな利益を上げ、多くの労働者が犠牲になるような社会は望ましくありません。現在の日本では、中小企業が全体の99.7%を占めており、その数は圧倒的に多いのです。
そして、良い製品を作るためには、そこで働く人々の生活が保証されていなければなりません。安定した生活があり、心に余裕がある状態でなければ、より創造的なものを作れるはずもありません。
だからこそ、私が経営の上で最も重視しているのは「社員の幸せ」です。会社を大きくするなら、社員を犠牲にするのではなく、一緒に成長していく会社にしたいと思っています。
その活動の中で作られたものは、きっとお客さんも幸せにする事が出来るのではないでしょうか。
私は、そういう会社を作ることが経営者としての義務だと感じています。