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読書『きみは赤ちゃん』:妊娠出産の闇と光
川上未映子さんの妊娠出産エッセイ『きみは赤ちゃん』読んでみた!
各種痛みの話が出てきて、あぁ、そうだった…と共感の嵐だった。
根強い「痛み信仰」
やっぱり痛みの代表格は出産。
作者さんは無痛分娩を選択。日本は費用が多くかかることに加え「無痛分娩はねえ…」という意見が根強い。
私の義妹ちゃんは生後3週間くらいの大変なときに、見に来た義父の姉に「産むときの痛みがないと愛がないから…」と言われたらしい。
信じられん!
痛みがなければ愛がないなら世の父親はどうなっとるんや。作者も言ってたけど、「痛み経験しといたほうがいい」という考えは意味わからん。
私が無痛分娩にしなかったのは、無痛分娩できる病院が県内に1箇所のみでスペックで選べないし、遠すぎて毎月健診に行くのが物理的に厳しかったから。近くにあれば迷わず無痛を選んでた。もっと田舎にも選択肢が広がってフランクになってほしい。
作者は破水してしまって、最終的には帝王切開に。私はなんとなく産むの帝王切開の方が楽なんじゃないかというイメージがあった。大変失礼だった。帝王切開の産後のツラさをこの本で思い知った。
また、作者は完母。私は母乳が出なくてオムツ〜両乳20分ずつ&足りないからミルク〜洗って消毒とかで毎回1時間くらいかかってて、充分に母乳が出る人が羨ましかった。でも完母の場合は授乳を人に代われない。どんなに痛くてもツラくても。
結局出産・産後は何を選んでも痛いし大変なんだな…!
妊娠・乳幼児期のプレッシャー
痛みとは別に、命を預かるというプレッシャーがすごい。母乳最強説とか3歳神話とか、「これを逃したら取り返しがつかない」系の話が本当に多い。
右も左も分からない当時の私は端から信じてた。作者が「全てカンペキに出来なければ子どもを育てる資格が剥奪される気がした」と言っていたのすごい分かる。
今でも気にしてないようで信じてること多いと思う。触れ合いの質とか量とか睡眠とか食事とか言い出したらキリがないけど、実際は取り返しがつかないのは命に関わることくらい。育てる資格なんてものもない。んだけどね。
産後クライシス
そして、訪れる夫婦の危機。
眠れなくて、ただ寝ている人にイライラするって気持ち分かる。こっちは痛みとプレッシャーと余裕のなさでヤラレてるときに、どうして平気でヒゲ剃れるのか、とか。
共倒れになる方が困ると頭では分かるけど、お前も親なら同じ苦しみを味わえ!でなければ子を愛でるな!という謎の怒りに支配される。
語り、聞くという救済
痛みも精神面も含め、もとからの友人にもママ友にもここまでの話ってなかなかできない。
この本を初産の前に読まなくてよかった。コワすぎる。もしかして上手に言語化できることで痛みやツラさをより明確に認識してしまう面もあるんだろうか。
でも語ることで救われる面もあると思う。この本を読むことでも「自分だけじゃなかった」と感じられた。
何があっても生まれてきた命は愛しくて尊くて、大切にしたいと思えた一冊だった。
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