書籍【日本有事】読了
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◎タイトル:日本有事
◎著者:清水克彦
◎出版社:集英社インターナショナル新書
台湾有事が起こる可能性は極めて高い。日本が巻き込まれることを想定した場合、今から何を備えておくべきか。
地理的状況を考えると、日本は非常に厳しい場所に位置している。
戦争する、しないという単純な話ではなく、結局「仕掛けられたらどう対応するのか」という話なのである。
端的に言えば「もし日本が攻められたら、どうするのか?」ということだ。
これは、「攻めて来ないでしょ」とか、「平和が大事」とか、「戦争反対」という議論のレベルではない。
状況を考えると、相手が日本を攻めてくる可能性が極めて高いのは間違いないのだ。
そんな台湾有事が起きた際に、日本を囲む周辺諸国はどう動くのか?
状況次第では、戦場が拡大してしまう可能性すらある。
台湾有事に関連する書籍については、過去から複数冊読んでいるが、概ねどの書籍についても論調は同じだ。
それは「台湾有事は必ず起こる。起こる前提で備えろ」ということだ。
もし、台湾有事が起きた際は、日本は相当に難しい判断を迫られる。
起きてから考えたのでは、遅いのである。
私自身も、正直ロシア-ウクライナ戦争が起こるまでは、対岸の火事と思っていた節がある。
しかしながら、まさかという侵攻が起こり、20世紀のような泥臭い戦争が展開されることとは思わなかった。
更に言えば、ロシア-ウクライナの状況で「戦争をした場合、国際社会も含めてこういう展開になる」という、悪い意味での事例が世界に示されてしまったのだ。
中国は、このロシア-ウクライナ戦争を相当に研究している。
今日のウクライナは、明日の台湾ということになる。
すぐには攻めてこないかもしれない。
しかし、ロシアはウクライナに突然侵攻した。
こうなると、やはり起こることが前提で事を進めるしかない。
近接した日本は極めて深刻な状況にあるということだ。
こんな状態であるにも関わらず、日本国民の意識は依然として低い。
こういう話をし出すと、「戦争を奨励しているのか?」とすら言われてしまう。
平和ボケも甚だしいとはこのことである。
これを「国民性」という一言で済ませてよいとは、到底思えない。
まずは、国民の意識改革から行う必要があるが、第2次大戦での敗戦以後、日本はただの一度も戦争をしていないのだから、ここも相当に難しい。
今の段階で下手に騒いでも、なるようにしかならないという諦め感すらある。
そうは言っても、我々に出来ることはあるはずで、まずは強い意志を持つことだ。
断固として、この有事を乗り越えるという覚悟が大切だと思っている。
確かに、台湾で有事が起これば、米軍が介入する可能性は高い。
しかし、巻き込まれた日本を、米軍が率先して助けるかと言えば、それは期待ができない。
まずは、自分の国を自分たちが身体を張って守ることだ。
そうでなければ、アメリカ軍が日本のために戦う理由がない。
日本にある米軍基地は、当然標的にされるだろうから、そこに向かってミサイルが飛んできた場合は、日本はどういう対処をするのか。
戦局によっては、日本駐留のアメリカ軍人は、グアム・ハワイまで引き下がるのが濃厚だ。
これは、アメリカ軍人だって家族を連れて、日本に駐留しているケースがある訳で、家族を日本に置いておく訳にはいかない。
当然、日本にある米軍基地には、容赦なくミサイルが飛んでくる。
この話だけでも、単純な話ではないことが想像できる。
もちろん、日本そのものが標的にされることも想定する必要がある。
専守防衛が徹底された自衛隊だけで、本当に守り切れるのか。
本来であれば、相手のミサイル基地を事前に叩いておけば、ミサイルは飛んでこない訳である。
こんな単純なことなのに、今の日本は対処することができないのだ。
本当にこの状況を、他人事としておいてよいのか?
自衛隊が何とかしてくれるという意識は、いますぐ変える必要がある。
自衛隊が専守防衛である以上、撃たれる前に撃つことは許されない。
日本国民の命を守るために、自衛隊が戦うのは間違いない。
しかし、撃たれて死んだらそこで終わりなのである。
そういうことだということを、国民の旨に一つ一つ意識として刻むことが大切なのではないだろうか。
日本国憲法の改正論が出ているが、発布後一文字の変更もされていない状態で、改正には高い壁が立ちはだかっている。
憲法を守ることは確かに大切だが、攻められた時に物理的に自分たちを守るのは果たして憲法なのだろうか?
思想も価値観も異なる人たちが話し合いに応じて、現実的にお互い納得できる合意ができるのか?
もちろん、最大限戦争を回避するよう、外交努力をするとしても、結局仕掛けられたら戦争から逃げることはできないのだ。
これだけ混沌とした世界の中で、今後の国家運営の舵取りは、本当に難しい。
様々な周辺諸国との状況や、過去からの経緯などをつぶさに見ると、日本周辺は相当に厳しい状況だと思う。
近々、中国がGDPでアメリカを抜いて1位になる時が訪れるという。
中国は経済力と軍事予算にものを言わせて、軍備について拡大の一途である。
日本も確かに、軍事力では世界上位クラスだと言われている。
しかし何度も言うが、自衛隊は自ら相手に攻め込むことは出来ないのである。
習近平国家主席の年齢なども考えると、いつまでもこのままの状態なはずがない。
さらに言えば、攻める以上は絶対に勝つ勝負をするに決まっている。
気まぐれに戦争を起こすとは考えにくい。(しかし、プーチンは予想外に侵攻を開始した)
絶対に、確実に台湾を奪取できるという確信のもとに攻めてくるはずなのだ。
これはつまり、台湾有事が起きた時点で、相当に日本にとっては厳しい状況なのだということだ。
この文脈だけを考えても、何をどう考えても、何とかして戦争を起こさせないようにするしかない。
つまり中国に対して「攻めても勝てない。台湾は奪えない」と思わせ続けないといけない訳だ。
しかし、その方法だけで安心する訳にもいかない。
この素晴らしい平和な日本を後世に残したい。
心からそう思うのだ。
(2024/8/7水)