
書籍【なぜ、TikTokは世界一になれたのか?】読了

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◎タイトル:なぜ、TikTokは世界一になれたのか?
◎著者: マシュー・ブレナン、露久保由美子(訳)
◎出版社:かんき出版
強力なレコメンドシステムこそが世界を制することに、創業時から気付いていたCEOのジャン・イーミン氏。
凡人には見えない未来が、彼にだけ見えるというのは、まさに「ビジョナリー」だ。
彼なりに論理的に考えて導き出しているのか、それとも過去からの経験で直感で「これはイケる」と思って邁進するのか。
どういう思考回路でこの結論に至るのか知りたいところだ。
様々な職業がAIに置き換わっていく中で、人間にしかできない仕事を選択していくのは、非常に重要なことだ。
経営判断こそ、AIに置き換わりにくいと言われている。
確かに過去のデータから分析して最適化を図ることだけが経営の仕事ではない訳だから、それも納得だ。
目まぐるしく変化する市場環境の中で、時には大胆にチャレンジすることもあるだろうし、撤退を決断することもあるだろう。
本書によって、ジャン・イーミン氏の思考回路の一部を覗けるだけでも、非常に役に立つ。
これだけ発展し尽くした社会の中でも、こんなイノベーションが突如生まれるのだから、まだまだ開拓すべき場所はあるということだ。
レコメンドシステムを磨きに磨いて、ショート動画の世界ではTikTokが頂点を極めた訳であるが、それ自体の考え方は歴史も古く、レガシーなものだ。
そんなレガシー機能を最大限に活用しようと思ったのが、たまたまイーミン氏だったということか。
多くの天才たちがインターネットやITの業務に従事しているが、誰も気が付かなかった訳ではない。
テックジャイアントの各社とも、レコメンドを活用していたし、ショート動画の可能性も気が付いていたし、インターネット上のさらなる覇権を握るために、様々な試行錯誤を繰り返していたはずなのだ。
さらに、ベンチャー企業の中で、新しいテクノロジーによって世界を変えようという会社が出てきたら、テックジャイアント側がすることは、徹底的に叩きのめすか、買収して傘下に収めることだった。
インターネット誕生から数えて今に至るまで、そんなやりとりの繰り返しだったはずだ。
それなのに、バイトダンスは驚異的な躍進をして、世界のトップに立つことができた。
これは奇跡と言ってもいいだろう。
普通に考えれば、テックジャイアントと肩を並べるくらいまで成長する前に、その芽を摘まれてしまうはずだからだ。
これにはどういう力学が働いたのだろうか。
我々が見逃しているところがきっとあるのだろう。
そこを愚直に見つけ出して分析していくことが、今後のためにも大事なのだろうと思う。
中国発アプリは、多くのユーザーを抱えているが、通常は中国国内ユーザーのみだ。
TikTokについては、文字通り世界を制した訳で、今までの中国向けアプリとは一線を画している。
世界に通用する日本発アプリはもちろん作れていない訳であるが、一体何が違うのだろうかと考えてしまう。
今でも「ダラダラとTikTokを見てしまって、1~2時間溶かした」なんて話をよく聞いてしまう。
「TikTokで紹介された商品を見て、ついつい買ってしまった」という話も当たり前になった。
今の若い世代は、スマホネイティブで且つTikTokが生活の一部なのだ。
彼らがこれからの社会をどう変化させていくのか。
本書を参考にできるところが沢山あるだろう。
未来が楽しみでもある。
(2024/10/29火)