マガジンのカバー画像

サンフランシスコにもういない

7
運営しているクリエイター

#夏の思い出

(7)夜の黒い箱(最終話)『サンフランシスコにもういない』

(7)夜の黒い箱(最終話)『サンフランシスコにもういない』

 夜、家に帰るバスのなかで僕はガイドブックに目を通していた。
 まだまだやりたいことはたくさんある。せっかくの日曜日がこのまま終わってしまうことは惜しかったけれど、夜間は不用意に歩かない方が良いエリアも多く、今日はおとなしく帰るのが無難だろうと思った。
 現に膝の上でちいさく開いたガイドブックにも治安が悪いエリアとその時間帯が強調フォントで書かれていた。
 本から視線を上げると、バスの内側を向いた

もっとみる
(6)テキトーに喋る男たち『サンフランシスコにもういない』

(6)テキトーに喋る男たち『サンフランシスコにもういない』

 近所のスーパーにシャンプーを買いに行った。ブロンドの女性店員にシャンプーの場所を訊いたが、そこには大量のボトルがあり、アメリカの製品に精通していない僕にはそのなかから自分に合ったもの選ぶのが難儀だった。
 そこで選択肢が多すぎて決めるのが難しい旨を彼女に伝えた上で、
「Which is the best shampoo for the best guy? (最高の男に合う最高のシャンプーはどれだ

もっとみる