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「君の誕生日」ドキュメンタリーじゃないのに、ドキュメンタリーを観たかのような作品;;

涙なしでは見られないだろうとは思っていた。というか、エンドロールが終わってもしばらく立ち上がれなかった・・・泣いて・・・というより、もちろん涙は溢れまくっていたのだけれど、どうしようもないやるせない、どーんと重い石をのせられたような悲痛な思いで席を立つ映画です。

君の誕生日」修学旅行中の高校生300人以上が犠牲となったセウォル号沈没事故が起きたのが、2014年4月16日、6年以上たった今、あのころの高校生は社会人となっている人も多い。そんな犠牲となった高校生の息子スホと父(ソル・ギョング)、母(チョン・ドヨン)、スホの妹たち家族、そして、スホの友達や同じく犠牲になった子供達の親たちの今・・・誕生日は毎年訪れる、でも年を重ねる誕生日ではなく、そこで止まった誕生日・・・辛い、辛すぎる・・・ドキュメンタリーではないのに、それぞれ俳優さんたちが演じているのに、ドキュメンタリーのようなリアルさでした;;

韓国映画のすごいところは、絶対泣くだろう・・・と思ってはいても、思い通りの泣かせ方ではないところだ。セウォル号でなくなった高校生のその後の家族の話で、その高校生の誕生日をみんなで祝うんだな・・・という予告編でみた予備知識で挑むわけで。でもね、違うんだわ。お父さん(ソル・ギョング)が外国から帰ってくるシーンから始まる。。。で、お母さん(チョン・ドヨン)が住んでるアパートに入れてもらえない現在から始まるわけよ。え、なんで?なんでこの夫婦は、仲が悪いのか、どういうこと・・・これもいろいろあってね。だんだん、そういうことかーとわかっていきます。てっきりセウォル号の沈没シーンの再現とか、あの時にニュース映像でみた家族の方々の泣き叫ぶシーンとかあるのでは・・・と身構えていたのだけど、当分、この夫婦はなんで、こんな感じなの・・・の謎解きがあって、最初のあたりは静かに進んでいき、セウォル号の遺族の方々の周辺をしっかり描いていくわけです。
徐々に、この夫婦がなぜこういう関係なのかわかっていくわけですが、それとともに、一緒に亡くなったクラスメイトの家族や生き残った子たちの今も描かれていく・・・
すっぴん演技させたらピカイチ女優のチョン・ドヨンは今回も見事なまでに、子供を突然失った母親の喪失感とそのほか複雑に入り組む夫婦や家族事情、そして心の奥底にやどる暗闇の表現・・・本当に素晴らしいわ。
ソル・ギョングも物静かなお父さんなんだけど、悲しみがそこはかとなく漂うかんじで最高の演技です。(今まで、激しい役やクセのある役が多いんだけど、今回、どこにでもいそうな普通の平凡なお父さんです。それもうまい)
なんだろう~前半の静かな・・・それでいてみんな心の奥に危ういものを抱えている不気味な静寂間というか・・・そして、タイトルにあるように「君の誕生日」に向かっていくわけだけど・・・もうこの誕生日のシーンがたまらんです;;吐き出すことって大事;;このシーンはずっとカメラまわしっぱなしだったそうで、ここが本当にドキュメンタリーのようなんです;;
今でも苦しいであろう遺族の方たちの思い、生き残った方たちの思い、なかなかわかるとか簡単に言えないのですが、本当にこの2時間で、せめて少しでも知ることができたのでは(ほんの少しだろうけど)・・・いや、これはみんな共有すべきだ・・・と。終わってしばらくは、立てないくらいの思いを知るべきだと。突然大事な人を失い、今も悲しみを抱いて生きてらっしゃる方々への思いをちょっとでも感じること大事だなと思いました。もちろん、こんな事故は二度と起こらないように。

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巨匠イ・チャンドン監督(ペパーミントキャンディ、オアシス、シークレットサンシャイン、バーニングなど、人間の本質を描くすごい作品を作る方ですねー)のもとで経験を積んだという新鋭イ・ジョンオン監督の長編デビュー作。この監督自身がボランティア活動を通じて長い期間、遺族と接する中で、この作品は生まれ、この事故を初めて真正面から取り上げた作品です。映画の中でも出てきますが、こういうボランティアの方もいらっしゃるんですね。
韓国に行くと、路上に黄色いリボンのテントをよく見かけました。そして、人々は黄色いリボンを掲げて犠牲者へ追悼の意を表します。また、BlockBのZICOやWINNERのミノたちもタトゥーで黄色いリボン刻んでこのことを忘れないとインタビューでも言っていました。この日が近づくと、たくさんのスターたちも黄色いリボンを掲げるのを見かけます。二度とこのような悲劇が起こりませんようにと。

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にしても、ソル・ギョングの抑えた演技がすばらしい;;ソル・ギョング作品で記憶に新しいのは、「殺人者の記憶法」(2019)だけど、これまた、認知症の殺人者の役(難しい役どころなのに)見事にこちらが彼の演技に騙させるというか、翻弄させられたという~これはすごい作品(ポスターとかこわいけど)観てほしいです!!!

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過去作品について語るなら、韓国に興味を持ちだしてすぐに見たのが「ペパーミントキャンディ」(2000)~タイトルはかわいいので気軽に見たら・・・主人公のソル・ギョングが自殺する断末魔から始まるという韓国映画初心者の当時の私にもショッキングな作品でした。でも、背景にある光州事件とかいろいろ時代背景もわかっていって、韓国映画入門編にはいい作品です!!!(先日放映された、中居くんの番組「新・日本男児と中居~ナカデミー賞」でも、アツク語られてましたね。中居くんがあんなに韓国映画大好きとは嬉しかったわ。DVD派なのも中居くんだわ~)これは、なんと、NHKとの共同制作だったそうです。へー。中居くんおススメですしね。

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そして、「シルミド」(2003)北朝鮮へ侵入しようとする兵士の話で緊張するシーン満載で、これも号泣映画でした;;そしてそして、「オアシス」(2002)これもショッキングな映画でした;;ムン・ソリの演技もすごかったし、ソル・ギョングも怖かった;;

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力道山」(2004)これも、日韓合作で、あの有名な力道山をソル・ギョングが!!日本人レスラーもたくさんでてきて・・・でも力道山にこういう過去が・・・という「日本人がいちばん力道山を知らない」というキャッチコピーでしたからね;;日本人には観てほしい!

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日本版の「力道山」ポスター・・・ちょっと雰囲気が違う・・・中谷美紀、萩原聖人、藤竜也…日本人俳優もよかった;;

あいつの声」(2007)これ、日本ではあまり話題にならなかったけど、めっちゃいい作品です!(これも、中居くんが面白かった一覧にあげてました!)実際にソウルで起こった誘拐事件をもとにした、映画でハラハラドキドキです!お、アマゾンプライムで観られますね~また観なくては!「西部戦線1953」(2016)(これも中居くんランキングに入ってた~)は、韓国で観ました。朝鮮戦争のさなか、北の少年兵ヨ・ジングと対決してしまう韓国軍兵士のソルギョング、これもいい作品でした;;アマゾンプライムでみれます!そして「1987、.ある闘いの真実」(2017)これも中居くんが作品賞としてあげてました。社会派の作品は女性もみたほうがいいとも言ってましたね。(中居くん宅のDVD棚の韓国映画愛にあふれる作品の数々に感動したので、一度、中居くんと韓国映画談義をしたいものです!でも主演男優賞は、ソル・ギョングでなく、ファン・ジョンミンでしたが^^;)これも、実際に1987年に起こった、リンチにより亡くなった大学生のことを隠ぺいしようとした国家と闘う検事の話です;;もう、ほんとうにもう見てほしい!!!

作品ひとつひとつ語りたいけど、次は、チョン・ドヨン作品を・・・・
チョンドヨンの映画初主演作「接続コンタクト」(1997)はいはい=これも、韓国にハマりだした頃、近所のレンタルビデオ屋さんのアジア映画コーナーで必死に探してみた作品です。90年代っぽいな~という印象でしたわ。ハン・ソッキュとの共演でした。そして、うりイ・ビョンホンとの共演「我が心のオルガン」(1999)

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=これ、ビョンホンを好きになってすぐに買い求めたDVD~では、1960年代の田舎町を舞台に、26歳のドヨンが17才のかわいい生徒を演じていて、赴任してきた新米教師ビョンホンに恋心を抱くという~めっちゃかわいいドヨンでした。ちょっと「初恋のきた道」っぽい~これ、本当に観てほしい~古き良き時代の作品で~

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こんなかわいい役をやったかと思えば「スキャンダル」(2003)では、ペ・ヨンジュンとアツいシーンがあったり、「シークレットサンシャイン」(2007)ではハラハラどきどき・・・、そして、大好きなのは「ユアマイサンシャイン」(2005)~これ、お相手のファン・ジョンミンがたまらなくいいんですーー!「ハウスメイド」(2010)は、名作「下女」

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リメイクなのですが、怪しいドヨンさま・・・イ・ジョンジェの豪快ぶりがショッキングです;;

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いつも、日本タイトルや日本ポスターが韓国版よりダサくなると言ってますが、これは日本版のほうがよりエロくていい感じ~ではないかと思います。

そして「男と女」(2016)コン・ユのファンにはたまらない大人の作品ですわ;;(今や、いろんな映画、DVDが入手できなくても、アマゾンプライムなどのサブスクで、観られるので、さがしてみてくださいね)
そんなこんなで、そう、「君の誕生日」~~~今、松江東宝5で絶賛上映中!松江でめったに韓国映画が上映されないので~しっかりコロナ対策もされているし、映画館で観るのってやはり、世界に浸れるので、号泣したとしても、ストレス解消にもなります!


【山陰での韓国映画上映情報!】毎週行かなくっちゃ!!!

・「新感染半島ファイナルステージTジョイ出雲MOVIX日吉津松江東宝5で上映中

・「クローゼット」キム・ナムギル、ハ・ジョンウ(クローゼットになんかいる的なミステリー)松江東宝5 公開中

・「君の誕生日」チョン・ドヨン、ソル・ギョング(セウォウル号の家族の話 )松江東宝5 公開中

・「KCIA南山の部長たち」イ・ビョンホン主演、1970年代、朴正煕大統領暗殺にまつわる史実に基づいた作品。Tジョイ出雲 公開中。すでに見ましたけど、すごすぎます~また、ゆっくり書きます~

・「藁にもすがる獣たち」チョン・ドヨン 、チョン・ウソン 、ペ・ソンウ他 曽根圭介「藁にもすがる獣たち」原作のサスペンス!Tジョイ出雲 2/19~

・「野球少女」イ・ジュヨン 、イ・ジュニョク他 「梨泰院クラス」のイ・ジュヨンが野球少女になって、プロを目指す!Tジョイ出雲MOVIX日吉津 3/5~

感染対策もしっかりされている映画館でぜひ!!

私おがっちが韓国を旅したフォトエッセイ「おがっちの韓国さらん本~本当に知ってほしい韓国の話」もよかったら読んでみてくださいね。

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