(Twitter調査で)2020GWのケンタvsマックの需要を分析してみた。
noteのキービジュアルはimgur.comでシェアされていた画像を引用させて頂きました。
【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。
自己紹介
株式会社秤の小川と申します。セールスプロモーション業界で4年、電通グループなど広告会社の営業とプランナーとして10年、データ分析を軸にしたコンサルティング支援3年強。マーケティング戦略から戦術まで幅広く関わり、2018年11月に「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」という書籍も出版しました。
2020GWを終えて
緊急事態宣言の中、2020年GWはいかがお過ごしでしたか?私は4月28日が誕生日なんですが、(今年42歳)その日はケンタッキーを食べまくってました。リモートワークの影響(言い訳)もあり中年太りが加速しており、ふだんは抑制してますが、この日は心おきなく家族と一緒に大好物のケンタッキーフライドチキンにむしゃぶりつきます。ここ数年のわが家の恒例行事です。このnoteを書いてたら、また食べたくなってきました。そんな時は、イギリスのケンタッキーが公開したPR動画のチキンが揚がる音で心を落ちつかせ、
ブランド公式の映像を見て高ぶる気持ちをコントロールします。
肉の部位ごとの食べ方の動画を見て、復習したりもします。
本題に戻ります。
このnoteでは、筆者の好物のケンタッキーとマクドナルドを題材として、最後にいつ買いましたか?食べましたか?」といったアンケート調査から年代ごとの購買回数の分布もできる「ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデル」という分析手法など、データドリブンな意思決定を行うための知識を共有する研修の紹介を行います。
今年の誕生日は予約してお店にチキンを取りに行きましたが、行列が出来てました。もともとテイクアウトに強いブランドなので、この状況でも業績好調のようです。(参考記事)
マクドナルドは必要な買い物のとき、ドライブスルーで利用しました。こちらも4月は前年比6.5%の売上増だったそうです。(参考記事)
特殊な状況化にある今年のGW、例年よりさらにお世話になったこの2つのブランドの需要を分析してみたくなりました。
確率モデルで需要を把握
マーケティングの分析に「最後にいつ〇〇したか?(ここでは食べたか?)」というアンケート結果(専門用語でリーセンシーデータ)を分析することで、需要を把握できる「ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデル」という手法があります。これは、USJを再建させ、今はマーケティング精鋭集団で活動されている日本を代表するマーケター森岡毅氏と、日本を代表するアナリストの今西聖貴氏の共著「確率思考の戦略論」
で紹介されていたものです。著書では、競合のTDLの来場数を推計する方法のひとつとしても使われたとされています。
「最後にいつ〇〇したか?」という調査から、自社だけでなく、競合など自社以外のブランド顧客の需要を構造的に把握できるので便利です。
この方法を使ってGWのマクドナルドとケンタッキーの顧客の需要を把握してみます。誕生日はケンタッキーと決めているファンなので、今回はもし私がケンタッキーのマーケターだったらという立場で、競合のマクドナルド比較での強みや弱みを考察し、同ブランドを打ち負かすための戦略を考えてみようと思います。
Twitterでスピーディ&安価に調査
Twitterのアンケート機能とターゲティング広告を使ってユーザーの需要を年代ごとに把握してみます。10代20代30代40代50代の男女の10セグメントに対して全国を対象に広告配信しました。
設問は2種類です。1種類めはデリバリー以外での利用です。(メインはテイクアウト、次いでドライブスルーや店内を想定)※20代女性の例
もう1種類はデリバリーでの飲食です。
リーセンシーデータを手に入れることができれば、各年代の需要を構造的に把握でき、得られた分析結果から需要の予測にも使えます。
調査結果をそのままグラフ化
そのままの調査結果をバタフライチャートにしました。まずはテイクアウト他(テイクアウト、ドライブスルー、店内)です。
マクドナルドのほうが、最後に買ったタイミングが90日以内の方が圧倒的に多いです。続いてデリバリーです。
こちらも。90日以内の方の割合はマクドナルドのほうが高いですが、デリバリーのほうが2ブランドの差が小さい様です。
本当はツイッター調査の標本から、全国民の需要を拡大推計したかったのですが、この時点で、分析結果に違和感を覚えました。マクドナルドもケンタッキーもデリバリーでは40代より50代のほうが、直近利用者が多いことに対する違和感です。ツイッターユーザーに向けた調査であるため、多少の偏りは覚悟していましたが、50代のツイッター利用率は男性24.26%、女性が21.64%と年代全体の1/4しかないので、偏りが激しそうでした。ITリテラシーが高く若々しい嗜好の方に標本が偏っているため、40代より50代のほうがデリバリーの直近利用者が多いのかもしれないのではないかと考えました。
今回は全国民ではなく、約2,980万人のTwitter利用ユーザー数を母集団として分析することにしました。
ユーザー性年代ごとの人数をバタフライチャートにすると下記となります。
各年代ごとに購買分布を把握
「確率思考の戦略論」では、消費者の購買の回数の分布において共通する「法則」があり、それを用いることで需要を定量的に把握する方法が紹介されています。その法則を再現する数式が下記に参照する負の二項分布の数式です。ある一定期間における市場浸透率(Pr)を計算できます。
分布をつかさどる2種類の係数がMとKです。Mは、自社ブランドを全ての消費者が選択した延べ回数を消費者の頭数で割ったものです。
例えば、ゴールデンウィークでマクドナルドの総販売回数が2.4億回で、母集団となる国民の数が1.2憶人であれば、M=2です。観測しやすいデータから簡単に求められます。Kは、消費者の購入確率がどのような分布の形になるかを決める係数です。MとKという値が決まると、例えば2週間以内に購買した方は何パーセントか?(期間別市場浸透率Pn)という予測値も求めることができます。その予測値と実際のリーセンシーデータの値との誤差(正確には誤差のを2乗した値の合計値)を最小化するMとKを求めて市場構造を把握します。重い計算ではないので、Excelのソルバーという計算ツールですぐに解を求めることができます。
分析方法について詳しく知りたい方は下記のnoteをご覧下さい。
たとえば、20女性のマクドナルド(テイクアウト他)で5月6日以前の10日間のMとKを求めたものが下記です。
MとKを求めることができれば母集団人数(20代女性ツイッターユーザー数推計457万人)のうち、5月6日から過去10日間で購買回数が0回だった人は1回だった人など回数ごとにそれぞれ何パーセントか(オレンジ色のセル)計算し、その値を元に、購買回数ごとの人数や延べ購買回数(緑のセル)などの値を自動計算できます。
これを性年代ごとに計算し集計していきます。
年代ごとに購買回数の分布をグラフ化
まずは、テイクアウト他で各性年代別の人数に対して3回以上買った人、2回買った人、1回買った人がそれぞれ何パーセントか集計しました。
5月6日以前の10日間で、マクドナルドのテイクアウト他で「3回以上」購入した人が、30代女性で8.22%もいます。次いで40代男性が6.74%です。対してケンタッキーで「3回以上」購入者の割合が一番多いのは50代男性の1.23%です。ケンタッキーをGWの10日で3回以上食べるって相当なファンですよね。
次はデリバリーで比較します。
マックとの差はありますが、テイクアウト他と比較するとデリバリーでは2ブランドの差が小さいようです。
マクドナルドでは20代男性の7.54%が10日間で3回以上食べています。次いで30代男性が7.18%、30代女性6.08%と続きます。ケンタッキーはデリバリーでは40代男性の2.32%が3回以上食べており、次いで50代男性の1.54%です。
ケンタッキーのマーケティング戦略を考える
マクドナルドが若い世代に強いことを改めて実感しました。テイクアウト他で30代女性にヘビーユーザーがいて、デリバリーでは、20代男性と、30代男女がヘビーユーザーになっています。
ケンタッキーはテイクアウト他で3回以上食べたヘビーユーザーはほとんどいません。デリバリーでは40代50代の男性にヘビーユーザーがいました。
ヘビーユーザーだからデリバリーをするのか?デリバリーするからヘビーユーザーになるのか?因果の向きは定かではありませんが相関はありそうです。フライドチキンは揚げものなので、私のような40代ではそんなに頻繁に食べられないはずですが、現状のヘビーユーザー(デリバリー)は40代~50代が中心です。本来であれば、もっと若い世代をヘビーユーザーにできる伸び代があるのではないでしょうか?マクドナルドより高いといってもお酒を伴う外食などと比較すれば安いものです。
私の世代では、子供の頃からケンタッキーはちょっとしたご馳走でした。でも、私より下の世代(20~30代に)そうしたイメージは希薄になっている気がします。たとえば最近のお子さんはケンタッキーよりファミチキといった話も聞いたことがあります。
現在、40代男性がケンタッキー(デリバリー)のヘビーユーザーとなっている理由を洞察し、それをヒントに、マクドナルドが強い20〜30代をヘビーユーザーにする戦略に伸びしろがあると考えます。さらに俯瞰して2ブランドの顧客数を定量的に捉えるため、人数で集計しました。
購買人数を集計
先ほどの性年代ごとの購買回数3回以上、2回、1回の割合にツイッターユーザー推計数を掛けあわせ購買人数を集計しました。
GW期間(5月6日までの10日間)で
テイクアウト他でマクドナルドを買った人数はおよそ800万人で購買回数は1,300万回に対して、ケンタッキーは283万人で351万回(人数はマクドナルドの35%、回数は27%)
デリバリーでマクドナルドを買った人数500万人で購買回数1,200万回に対して、ケンタッキーは215万人で350万回(人数はマクドナルドの43%、回数は29%)
ケンタッキーはデリバリー購入者の獲得が功奏しているようです。GW期間中「GWはお家で映画」といったTVCMによるコミュニケーションをしていました。映画をみるときは、デリバリーのほうが都合が良いですよね。
2019年7月時点に公開されていた東洋経済ONLINEの記事によるとケンタッキーの顧客調査では「年に1回利用する」と答えた人が約4割で年に2回が約2割で、合わせて6割にも上った」そうで特定の時期にしか利用してもらえなかったそうです。私のように誕生日やクリスマスなど特別な時に食べるものという方が多かった状態から、ランチなどに注力し、日常的なものに変えることに注力した戦略が当たったようです。
しかし、今回のガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデルの分析からマクドナルドとの差が可視化され、日常的にデリバリーでケンタッキーを楽しむ若い世代(20~30代)から購買頻度が高いファンを増やしていくか?いかにして若い世代に強いマクドナルドの牙城を崩していくかが焦点となりました。
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【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。