スプラ3のシャープマーカー環境が批判される理由
この記事の概要
スプラトゥーン1の頃から対戦ゲームにハマり、シャドバやポケモンユナイト、Apexなどの対戦ゲームを好んで遊び、仕事では対人対戦ゲームの開発&運営を経験している僕が、現在のスプラトゥーン3についてのシャープマーカー環境について語りたいと思います。
まずは対人対戦ゲームの基本であるメタゲームについて簡単に解説した上で、スプラトゥーン3の環境があまり「イカしてない」ということの説明につなげていきたいと思います。
メタゲームについて
対人対戦ゲームには、いわゆる「メタが回る」「メタゲーム」と呼ばれるような環境が必要です。
メタというよくわからない言葉の意味は、ざっくりいうと「有利をとる」くらいの雰囲気です。
「メタが回る」というのは、「有利を取るためにプレイヤーがそれぞれ工夫し続ける環境」という感じの意味合いになります。
この「メタが回る」「メタゲーム」の言葉の意味は、こちらのサイトがわかりやすいので紹介しておきます。
https://www.bigandsmallbro.com/entry/2019/11/18/171158
メタゲームのお手本「ポケモン対戦」
面白い対戦ゲームはこの「メタが回る」環境を整えるのがうまいです。
長く人気の「ポケモン対戦」がいい例ですね。
ポケモン対戦では「性能の高いポケモンで強い攻撃技を使う」という最強のプレイング(=トップメタと呼ばれる)がありますが、全員が全ての対戦でそのプレイングをするわけではないです。
それは「能力Downする特性や技で有利をとる」や「性能の高いポケモンがタイプ的に苦手な相性と耐久性能を持つポケモンを使って有利をとる」のような、トップメタに対する複数の対策が可能だからです。
そういった環境ですと、プレイヤーは「トップメタにはみんな対策用意してるから、やりづらいな…相手の対策を読んで、他の作戦を用意しようか…?」のように考えるようになります。
そうすると一時的にトップメタを使う人が減り、そうなるとトップメタ対策を使う人が減り、さらにそうなるとトップメタを使う人が増え…
これがいわゆる「メタが回る」状態。
対人対戦ゲームが面白くなる(かつ、飽きづらくなる)ためには、この状態が必要なのです。
回らないメタ環境とは?
メタが回る環境の必要性を理解するために、「メタが回ってない状態」を想像してみましょう。
まずはトップメタが強すぎる状態を考えます。
グーがチョキにもパーにも勝つじゃんけんはどうでしょう?
ポケモンなら、種族値が全て999で怯みや状態異常にかからない特性を持ち、威力999の必中急所確定の専用技を持ったポケモンが1体いるとしたら?
トップメタを対策する手段がないため全員がトップメタしか使わなくなり、結果的に「あいこ」状態の対戦結果しか生まれなくなってしまうでしょう。
逆に、トップメタが弱すぎるor存在しない状態はどうでしょう?
グーもチョキもパーも全てあいこになってしまうじゃんけん。
全ての役が同じ強さのポーカーはどうでしょう?
どの手段を選んでも全員が「あいこ」状態になる対戦結果になります。
どちらも、結果としてどの手段を使う意味もない対戦であり、何も工夫の余地がなく楽しくないでしょう。
(アクションが必要な対戦ゲームなら「アクションの練度、習熟度」という要因があるためメタ環境の悪さが誤魔化されることもありますが…)
飽きさせないためのメタゲーム環境変化
ここまで説明したメタゲームは、対人対戦ゲームの面白さの基本ではあるものの、永遠の面白さを保証できるものではありません。
変化のないものは必ず飽きます。
そのため、飽きない対戦ゲームを維持するために、メタゲームが2〜3周するあたりで環境を変化させる必要があります。
デジタルオンライン対戦ゲームが運営型で定期的にアップデートする理由はこれですね。
環境の変化は、基本的にトップメタを変化させるだけで十分です。
とはいえ、トップメタを変化させるということは、トップメタに対する対抗手段を複数用意して新しくメタが回るようにするということなので、とてもとても大変なのですが…
対人対戦ゲームの基本
まとめると、対人対戦ゲームが面白くなるためには以下のような環境が必要になります。
明らかに他に比べて強いと感じる手段=トップメタがある
トップメタに対して有利な手段が複数ある
定期的にトップメタが変化する
楽しい対戦ゲームというのは、高いレベルでこれらが考え抜かれた上で、バランスが設計されているのです。
(余談ですが、対戦ゲームにおける「バランス調整」とは、メタが回る環境を作るための「強い構築が強いと感じられる状態を崩さないように対策を複数用意できている状態に整える」もしくは「新鮮さを出すために新たなトップメタとその対策がが生まれるようにする」ということであり、勝率の高いものや使用率の高いものを下げるために弱体化することではありません。
強いと感じる構築が生まれない環境に整えられた対戦ゲームというのは、前述した「工夫の余地がなくメタが回らない」というつまらないゲームに近づいていきます)
スプラ3のシャープマーカー環境
さて、ここで本題である「シャープマーカー環境が批判される理由」について「メタが回る」環境かどうかに照らして考えてみます。
スプラトゥーンでは、メタが回る環境のためにいろいろな要素が用意されています。
武器同士のメイン射程の相性、ブキの機動性、インク効率による継戦性能の相性、ステージ構造とブキ性能の相性、塗り領域とスペシャルポイントの相性、スペシャル性能とステージ構造の相性、ステージ構造×ルールとメイン性能の相性…etc…全て書き出すのは不可能なほど様々な要因がメタが回るための素材として用意されています。
その中で、現在のトップメタと思われるシャープマーカーへの対策は何が考えられるでしょうか?
筆者はスプラ2からシャープマーカーを愛用しているプレイヤーなので、その視点から「使われて嫌だな」と思うものを列挙してみます。
(ちなみに、筆者はXP2000〜2400程度をうろうろしているエンジョイプレイヤーのため、トッププレイヤー視点からの意見も聞いてみたい…)
その1 : 洗濯機
まずメイン性能の相性が厳しくて、射程でも勝てないし、爆風範囲により塗りを利用して近づくことも遮蔽物を経由しながら近づくことも難しい。
スペシャルのナイスダマも、カニタンクに合わせて使われるとカニがほぼ無駄になるためとても苦しい。
その2 : ジムワイパー
圧倒的に射程で負けている上にサブもお互いクイックボムのためスペシャル以外では戦えない相手だが、カニタンクに合わせてショクワンダーを使われると弱点である背後をとられるため対応せざるをえない。
その3 : リッター4K、リッター4Kスコープ
常に射線を意識しながら動く必要があるため、相手にいるだけでかなり動きが制限されて一気にゲームが難しくなる。
無理やり近づいてキルを狙いに行くと、ルートにトラップが置かれていてチャージなしのメイン射撃と合わせてかなり簡単に処理されてしまう。
そして上手いリッターは平気でカニタンクのヘッドショットを決めてくる…
その4 : クアッドホッパー
塗りの強さで有利が取れない機動性能と、カニタンクに合わせて使われるサメライド(よく轢かれる…)&背後を取れる機動性能が苦手。
筆者がツラいなと感じる相手はこの4つくらいでしょうか。
トップメタへの対策が4つあるというのは、わりとちょうど良さそうな気もしますね。
ではなぜ、これほどシャープマーカーへの批判の声が大きいのでしょうか?
崩壊したメタゲーム
僕が思うに、理由は以下の3点かなと。
塗りが強くメインの機動性が高いブキゆえ、カニタンクを使える状況を整えるのが簡単すぎる
ブキグループのミラーマッチング
新武器の弱さ
上記に挙げた、シャープマーカーが苦手とする4つのブキは、戦いの中でスペシャルを貯めるのがシャープマーカーより難しいため、実はトップメタの対策として機能していないのです。
シャープマーカーの特徴である「動きが早くてメイン性能の塗りが強い」というのは実はかなり強くて、逃げ足が速いので長く生存できるため、理論値の想定よりスペシャルを使う頻度が高いです。
洗濯機はスペシャル必要ポイント増加による弱体化がされているし、
ジムワイパーはメインの挙動が少し重たいのでちょっとしたミスでデスしやすい。
クアッドホッパーは塗りが弱いために塗り合いよりもキルのために時間を使う必要性が強く、結果的にデスしやすいためスペシャルが溜まりにくい。
リッターはミラーマッチのせいで相手にもリッターがいることが多く、射程の優位をフルに活かせない。(シャープマーカーをじっくり狙ってられない)
シャープマーカーからみて難しいこれらのブキが、シャープマーカーのカニタンクに合わせてスペシャルを使うのがそもそも難しいため、トップメタの対策として機能していないのです。
変化しない環境
そして、そんな崩壊したメタゲームを救うはずだったアップデートによる新武器の追加。
そのありえないほどの弱さ…
新武器の追加というのは対戦ゲームをプレイしていて1番ワクワクする瞬間(トップメタが変わり対戦環境が変わるタイミング)なのですが、新武器が弱すぎて環境が一切動かなかったせいで、シャープマーカートップメタの環境が長くなりすぎ、飽きを含んだつまらなさからくる不快感によりどんどん批判が強くなってきています。
まとめ
ということで、タイトルで述べた「対人対戦ゲームの基本が崩れている」の意味は、
メタが回る環境を作れていない
トップメタがアップデートで変わらない
ということでした。
スプラトゥーンはアクションの練度、習熟度による強さの幅が大きいゲームのため、それでもある程度面白くはある(誤魔化されている)のですが、拮抗した練度をもつ人同士の対戦では「対人対戦ゲームの基本」が機能していないことでかなり面白さを削いでいることでしょう。
任天堂ともあろう最強でスペシャルな集団に、このことを理解している人がいないということはないと思いますので、どのような理由でこうなってしまっているのでしょうか…
野上さん…頑張って…
以上。
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