【YouTube文字起こし】自閉スペクトラム症のある方のコミュニケーション支援
それでは自閉スペクトラム症のある方のコミュニケーション支援について話していきたいと思います。
コミュニケーションについて
本題に入る前に、私たちの日頃のコミュニケーションについて振り返ってみたいと思います。
皆さんは、日頃どんなコミュニケーションを取られているでしょうか。
例えば、生活の中では、職場の方に「おはようございます」と挨拶をしたり、わからないときに「教えていただけますか」と質問をしたりします。
職場に限ってではないですけれども、自分のことを伝える、体調が悪いことを伝えたりとか、今忙しいということを伝えたりとか、友達と連絡をとることもコミュニケーションでしょうし、困った時とか嬉しい時なんかに、ちょっと近くの人と目を合わせたりするようなアイコンタクトとか、そんなこともコミュニケーションの1つかと思います。
日頃当たり前にとっているコミュニケーションですが、辞書でコミュニケーションについて調べると、いろんな定義があるようなんですけれども、1つご紹介をしています。
日常的に行われているような伝達のための行為で、目で見たりとか、耳で聞いたりするようなやり方でとっているものである、というふうに書かれているものがありました。
この動画では、支援について話をしていくので、そういったコミュニケーションにおいても、伝えるとか、表出をするという発信の方に焦点を当てて、話を進めていきたいと思います。
それではここで、自閉スペクトラム症について振り返ってみましょう。
以下ASDとさせていただきますが、DSMという診断基準では、ASDの特徴として2つ挙げられています。
ひとつがコミュニケーション/社会性の特徴に関することで、もう1つがこだわりに関することです。
今回の動画の内容であるコミュニケーションについても、多くの人と比べて違いがある場合があるというように考えられています。
それでは、コミュニケーションの話に戻りますが、先ほどお話ししたように、普段当たり前のように行っているコミュニケーションでしたけれども、もし、これを全くしなかったらどうでしょうか?
わからないことが質問できなかったり、体調のことが周りに伝えられなかったり、仕事が進まなかったりとか、体の不調はそのままになってしまったりとか。
困ることが出てきたり、もしかするとQOLという部分にも影響が出てくると感じる方もいらっしゃるんじゃないかなと思います。
先ほど、(ASDの)特性の話がありましたけれども、そういったコミュニケーションの部分に違いがあるかもしれないASDのある方、ご本人の状態に合わせて支援をしていけるといいのかなと思います。
ASDのコミュニケーション支援のポイント
それでは、ここからは、おがるで考えているASDのある方のコミュニケーション支援について、ポイントを3つ紹介していきたいと思います。
①伝えたいという気持ちを育てていく
支援のポイント一つ目です。
伝えたいという気持ちを育てていくという視点ですけれども、下にも書いてありますが、伝えて良かったという経験を育てていこうということです。
まず、私たちのコミュニケーションについて考えてみた時に、なぜコミュニケーションを取るのかと考えると、きっと、伝えるといいことがあるということがわかっているから、伝えるんだと思うんですね。
お子さんが、お菓子の袋とかをお母さんのところに持って行って、開けてもらったりとか、大人同士であっても、何か手伝って欲しいときに、「ちょっと手伝って」と言うとか。そういうように、伝えることで自分のしたいことが叶ったり、助けてもらえたり、理解してもらえたりするということがあるから、コミュニケーションを取るのかなと思います。
でも、この良いことというのが、わかりにくかったり、コミュニケーションをする土台のところに違いがあるかもしれない、ASDタイプの方については、コミュニケーションをとると良いことがあるという、土台作りから学んでいく必要があるかもしれません。
ここで、練習をするときのポイントについて、少し深めてみたいと思います。
「コミュニケーションをとって良かった」というポジティブな経験づくりにアプローチする視点が大事です。ここが少し難しい部分かもしれないんですけれども、支援者とか大人の側が良いんじゃないかな、必要なんじゃないかな、こういうことができたら良いんじゃないかなという視点ではなくて、本人にとって、コミュニケーションを取ると良いことがあったと経験できることが大事です。
例えば、お菓子のチョコを指差したらチョコがすぐにもらえるとか、欲しいおもちゃのパズルを「とって」と言ったらすぐに取ってもらえるとか、抱っこというふうに手を出したら抱っこしてもらえるとか。
そういった伝えると良かったというポジティブな経験をする中で、この土台の部分である、コミュニケーションをとったら良いことがあるというところにつながっていくということが考えられるかと思います。
②コミュニケーションの機会を増やす
次に機会を増やすという支援ですが、違いがあって、人に頼んだりとか一緒にやろうとしたりする機会が多くないかもしれない、ASDのある方。
コミュニケーションに限った話ではないと思うんですけれども、スキルは練習すること、そういった機会があることでより上手になっていくということが考えられるかなと思います。
もともと、違いがあって、自分から(コミュニケーションを)取ろうとするということが少ないのであれば、支援ではコミュニケーションを取る機会をあえて意図的に設定していく必要があるかもしれないと思います。「あれとって」とか「それちょうだい」とか、「貸して」とか、本人が発信するような機会を言葉に限らず作っていくというイメージです。
例えば、ブロック遊びが好きなお子さんと一緒に遊んでいる時に、大人がブロックを多く持っておいて、続きを作りたいお子さんが「ちょうだい」とこちらに伝える機会を作ったり、好きなものとか、好きなおもちゃを棚の少し高いところに置いて「取って」と表出するような機会を作ったりするようなイメージです。
そういった好きなものについては、要求が出やすいということが考えられるかと思いますので、本人の好きなものの情報を集めて、練習するということもポイントかもしれないと思います。
③コミュニケーションの方法って?
最後のポイントですね。
コミュニケーションの方法ってと書いてありますが、この方法についてを考える時には、どうしてコミュニケーションを取るのかということに立ち返ってみるのが良いかなと思います。
目指しているのは、本人が周りに伝えられること。さらにその状況が増えていくということかと思います。多くの人は言葉を使ってコミュニケーションをとっていると思いますので、コミュニケーションを教えるといえば、言葉を教えようというふうに考えがちなところがあるかなと思います。
言葉で伝えられるということも、もちろん目指したいことの一つとしてあるかなと思うんですけれども、発達の年齢とか、コミュニケーションの違いがあって、目で見えるカードで伝える方法の方が伝えやすいというお子さんや大人の方の場合は、絵カードで練習するという方法もあるかもしれないですし、状況によっては、ジェスチャーとか指差しとかで十分な場合もあるかもしれないですよね。
なので、この方法が良いということに限定しないで、その人とか、その状況に使いやすいのはどういう形だろうという視点で考えてみるのも良いかもしれないと思います。
おがるの研修動画である、オンラインコンテンツの中に、幼児さん向けのものにはなってしまうんですけれども、コミュニケーションについて扱っている研修動画もありますので、よろしければご参照ください。
まとめ
3つのポイントで紹介してきました。
生活の中で、大事な要素の一つとして言えるかもしれないコミュニケーションですが、その人に合った、良かったという経験づくりとかコミュニケーションの形、そしてそこから広げていくというイメージで支援をしていけたら良いかと思っております。
私からの話は、これで以上となります。
ありがとうございました。