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旦那に振られました。

私は昔から母に「お父さんみたいな人と結婚したい」と言っていました。

父と物凄く仲が良かった訳ではなかったけど
笑顔がかわいくて、仕事に真面目で、年を重ねても新しい趣味を常に楽しんでいるのが好きだったんだと思います。

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私が結婚したのは29歳でした。

ある日の夜、
駅の階段を上がっているとき不意に見た彼の横顔が、私の父そのものに見えたのです。それまで彼が父に似ていると思ったことは1回も無かったのに。「私この人と縁があるのかも…」と物凄く不思議な感覚を覚えています。
これがビビビか、と。笑

彼と付き合って間もなく、私の父は癌が見つかり余命半年の宣告を受けました。

父の病気をきっかけに、私たちは結婚することになりました。
もうほとんど意識のない父に花嫁姿の写真を見せることができたのは私の唯一の親孝行です。

亡くなった父は何か月もご飯を食べられなかったので、ガリガリに瘦せてしまいました。そんな父の姿を見るのは初めてでした。
皆で父の顔を見ていると、その父の顔は母の父の顔に、祖父にとても似て見えました。

私はそれを口に出さなかったけれど
母の姉「何か、お父さんにそっくりじゃない…??」
母「私もそう思ってた…!!」
と。

母も自分の父に似た人を無意識に選んでいたのかもしれないと思ったら
すごい繋がりを感じてしまいました。

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結婚して一緒に生活をしていると、彼は私が好きだった父によく似ていました。ユーモアがあって、優しくて、仕事に真面目で、趣味を楽しんで友達に囲まれてる人でした。

父のような人と結婚したいという思いを父が叶えてくれたんだなと思いました。

私は結婚して、落ち着く居場所が出来て気持ちが安定したようで
自分の人生で今が1番幸せだなぁと思っていました。


でも私はとても子供で、ヒステリックで、頑固で沢山彼を幻滅させてしまったのです。夫婦なので本当に色々なことがあって、その色々を乗り越えてやってきてたけど。

「もう好きじゃないし、この先の人生に必要ない」と
こっぴどく振られました。

断捨離されました。


まだ家族を失ってしまったことに立ち直れていないけど、父に似ていた彼の顔はもう思い出せません。

終わりは本当に呆気ないものです。



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