【愚痴日記】イケメンっていいな
先日、お昼休みに同僚の男性が女性社員と仲良く話していたのを目撃しました。その同僚は同い年なのですが、色白で細身。清潔感の権化のような存在です。しかも、高身長で声も低く綺麗なバスボイス。頭もそこそこ良くて仕事もできるまさしく非の打ちどころのない人間。そんな彼はいつものようにその魅力を存分に発揮して、女性社員を周りに集めていました。
僕は彼に興味はないので一人で携帯を眺めていたのですが、如何せん湖の水面くらい静かな場所だったので、どうしても話し声が聞こえてくるわけでです。まあ、別に悪口を言うような人達ではないので、どうでもいいかと聞いていると彼はこんなことを言っていました。
「俺さぁ、福山雅治に似てるって言われるんだよね。似てるかなぁ」
「えー。でもちょっと似てるかもしれませんよー。かっこいいし背も高いし声も低くて」
「そうかなぁ。ガリレオやれるかなぁ。今度から眼鏡かけてこようかなぁ。似合うと思う?」
「絶対に似合うと思いますよ。知的に見えるんじゃないんですかね。かけてみたらいいんじゃないんですか」
「そっか。じゃあ、考えてみようかな。目が良くなっちゃったらみんなの可愛い顔が見えやすくなっていいね。透視して下着とかも見えちゃうかも」
「ちょっとー。何言ってるんですかー。やめてくださいよー」
「ははは。ごめんごめん。嘘だよ。実に面白い」
実に面白くない!!!ぜんっぜん面白くない!!なにも面白くない!!いかに面白くないかを数式で表したいくらい面白くない!!
何が面白くないかって、あからさまなセクハラをしているのに女性たちがみんなキャッキャと笑っているところなんですよね。口ではやめてくださいよーなんて言っているくせに顔が笑ってるんですよ。どういうことなんですか。僕が話しかけたときは真顔で能面みたいな顔になるのに。たまに般若みたいな顔しているのに。少しはおかめみたいな顔してくださいよ。お願いします。
それにしても、本当にかっこいい人ってずるいですよね。多少こういうことがあっても何も言われないわけですからね。それどころか、こういうスキンシップが逆に良いよねとかわけのわからないことを言う女性もいる始末でですから、本当にずるいです。
高校生の頃もいたんですよ。バスケ部の色白長身塩顔イケメンが。その人と二年間同じクラスだったんですけどね、それはそれは良い人で。青サバが空に浮かんだような顔をして歩いている僕に向かって小川のせせらぎのような爽やかボイスで「おはよう」って言ってくるんですよ。教室で地縛霊のように座っている時も「何してんだよ」と笑いながら話しかけてくるんですよ。そのたびに僕はあっ…あっ…とカオナシのように返事をしていたわけです。千が欲しい。千が欲しい。
さらにイケメンには甘い蜜でも滲み出ているのか、女の子が寄ってくるんですよね。甘い甘い猫撫で声を出して、上目遣いをして歩いてくるんですよ。僕からしたらこのイケメンを早く連れて行ってくれ。と思っているんですけど、そこは女の子。彼女たちはイケメンに印象よく見せたいからか、僕に優しくしてくるんですよね。友達がいない陰キャ男に優しくしてる私!優しいでしょ!じゃあないんですよ。顔が笑ってないんですよ。イケメンによく思われたいのが見え見えなんですよ。イケメンも馬鹿じゃないからそんなことくらいわかってるんですよ。
でもそこはさすがイケメンなわけで。そんなことをわかってるうえで褒めるんですよね。そういえば最近髪の毛切った?なんか雰囲気変わったねとか言うんですよ。それに対して女の子は、わかるー?どう?似合ってるでしょ?とか言ってるんですよ。僕の目の前で。どっか行け。
それだけならまだいいんですけどね、イケメンってどこまでもイケメンなので友達いない僕を輪の中に入れようとするんですよ。お前こっち来いよ。とか言ってくるんですよ。嬉しい!最高!とか思わないんですよね。だって彼の友達はいい顔してないですから。おいおい。わけわかんねー陰キャを連れてきやがって。誰だこいつは。って顔してるんですから。僕はカオナシになるわけですよ。俯きながら、あ…あ…と呟くわけです。これはもうイケメンの彼があらてのいじめをしているのでは?と思うくらいです。
そして、男子高校生ですから、当然下ネタとかもう言うわけです。あの子可愛いよなとか、あの子巨乳だよなとか言うわけです。そこに僕も参加しているわけですよ。何が起こると思いますか?そう、皆さんの思った通りです。それを聞いた女の子たちはイケメンとその仲間には楽しそうに「ちょっと、マジキモいんだけどー」と言うのですが、僕には何も言わず、軽蔑した表情を向けるわけです。聞こえてきますよ。お前はなんでそこにいるんだ。っていう心の声がね。でも僕と仲が良いわけではないし話しかけやすい人間でもないので何も言えないんでしょうね。僕が女の子を見ているとそれだけで変態性犯罪者予備軍なので下ネタなんてもってのほかなんです。ただ、イケメンはそれを見て「いやいや、冗談じゃん」なんてかばってくれるわけですよ。女の子はイケメンにはいい顔をしたいから「まあ、別にいいけど」とか頬を赤らめながら引き下がるわけです。どっか行け。
でも、社会人になったら容姿なんて関係ないだろって思ってたんですよね。勉強して大学に行ってさらに勉強すれば顔なんか関係ない。そう思ってたんですよ。そう思って勉強してた僕の視界の端で女の子と楽しそうに話しているイケメンをたくさん見てきましたよ。ククク…あと数年したら俺は勝ち組だ。イケメンより幸せになってやるんだと思ってたんですよ。そして大学三年の就活が始まる年。なんやかんやあって死にそうになって苦しんでいる僕の視界の端で内定を勝ち取り喜んでいるイケメンが見えたんですよね。笑いましたよ。イケメンと言うハイスペックのエンジンを積んだ人間が僕の後ろの方から一気に抜いていったのですから。しかも女性を乗せて話しながら。本当に笑いました。笑いすぎて涙出てました。何なら僕を抜かすときに「大丈夫?手を貸すよ」とか言ってたような気もします。
実に面白い!!イケメンだったらなんでもできるこの世の中!実に面白い!幸せに生きてきたから人間的にもイケメンなの本当に面白い!
今日もイケメンの同僚は楽しそうに女の子と笑ってますわ。仕事もそつなくこなしておりますわ。青サバが空に浮かんだような顔をしている僕にも爽やかに挨拶してきましたわ。自己肯定感と自尊心が高そうで何よりですね。僕はカオナシらしく端っこで生きていきます。
神様…来世はイケメンにしてくだせぇ…