七月七日の空想
静かに、静かに、湧きたつもの。
寛やかに、たおやかに、夜空に放つ。
今宵の君を月の向こうに見る幻想。
想い出の君は、もう長いこと別れたままの姿でいて、
僕の胸は流れ行く歳月に焦燥し。
かの地からの帰還者に君の話を聞く度に、
胸を引き裂いてしまいたい衝動に駆られる。
あの時抱き寄せられなかった肩を空っぽの腕の中に引き寄せて願う…会いたい。
静かに、静かに、願うもの。
切に、切に、夜空へ飛ばす。
今宵のあなたを探して、月明かりよどうか少しだけ
雲に隠れておくれではないか。
夢の中のあなたは今日も、私に微笑みながら涙を流す。
拭って差し上げたくとも、その手は空を切り、どんなに伸ばしても届かない。
かの地の噂を伝え聞き、ざわめく胸を抱えてこの闇に飛び込んでしまいたくなる。
あの時触れられなかった頬を空っぽの手のひらに包んで願う…会いたい。
三百と幾つの夜の空っぽを抱きしめて。
やっと今夜君に会える。
三百と幾つの夜を握りしめて。
やっと今夜あなたに会える。
今日だけは、今だけは。
時を紡いで良かったと、手と手を重ねて、互いだけを。
2022年7月7日の収録より。
https://stand.fm/episodes/62c656c40b3bf2000644d027
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