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Facebookの進化:エンタメとユーティリティのバランス戦略 Daily Memo - 6/6/2024
今日のDaily MemoはFacebookなど多くのSNS企業がどのようにエンタメとユーティリティの軸を行き来して進化しているのかを解説しました。こちらはOff Topic Clubメンバーシップ向けに平日に投稿している「Daily Memo」ではありますが、少し長文で画像などを表示する必要があったため記事として書かせていただいてます。気になる方は是非Off Topic Clubに参加してみてください!
アメリカ・カナダの18〜29歳の8割がFacebook DAU?
今年20周年を迎えたFacebookは21.1億人のDAUを抱えている。年々伸びているのはすごいことではあるが、アメリカでは今後どうやって若者層を囲い込めるのかが課題だと思っている人たちが多い。Facebookアカウントを持って主要のSNSとして使っていると言うアメリカのZ世代は中々ない。もちろん親会社のMetaとしてはInstagramなどもあるので、そこにユーザーがエンゲージしてくれたら良いと思うかもしれないが、そうなると今後Facebookはどうなるのか?このような課題設定をする人たちは多数いるが、実態としてはFacebookは若者層を取り戻す戦略はとっていて、もしかしたら思っている以上に成功しているのかもしれない。
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Facebookの21.1億人のDAUのうち、2.05億人はアメリカとカナダからのユーザー。実はそのうち、4,000万人(19.5%)は18〜29歳のユーザーとFacebookアプリ担当者のTom Alisonが発言している。カナダでは18〜29歳の人口は大体550万ぐらいと想定、アメリカでは4,500万人ぐらいいると想定した場合、約8割のアメリカとカナダの18〜29歳は実はFacebookユーザーであることが分かる。
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10代と18〜29歳のFacebook利用のギャップ
ただ、アメリカの10代の人気なSNSプラットフォームやSNSの利用率を見ると逆の数字が出ている。2015年では71%のアメリカの10代がFacebookを使っていたのが、2023年では33%となっている。4,000万人の18〜29歳のDAUと33%の10代しかFacebookを使わないギャップがある理由は明確ではないが、個人的に3つの仮説を立てられると思っている。
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まず一つ目はどちらかの数字が嘘であること。これは恐らく可能性としては最も低い。4,000万人の数字はアプリ調査会社から来ているのではなく、Facebookのアプリ担当者が自ら語った数字で、33%の数字はPew研究所が出した結果で、大幅に間違っているとは思えない。二つ目の仮説はFacebookを使っていないとPew研究所のアンケートで回答した10代の子達は意図的、もしくは使っていたのに知らずにFacebookを使っていなかったと回答したこと。意図的に回答する理由は周りからFacebookはそこまでイケてないと聞くので、自分が使っていると言いたくないかもしれないこと。そして知らずにFacebookを使っていたのは、Facebookのフィードではなくグループやツールを活用していて、それをSNSのFacebookとしてカウントしてなかったこと。
三つ目の理由は、どちらの数字も真実であること。もしかしたら10〜17歳ぐらいのアメリカ人はあまりFacebookを使わなくて、18歳以降で使うようになるかもしれない。個人的にはこの三つ目が本当の理由だと考えている。Facebookとしては10年以上前から若者層がFacebookから離れ始めていて、Instagramなど競合アプリに移行しているのを知っていた。2018年にリークされた社内レポートでは、どこまでFacebook配下のアプリ(Facebook、Instagram、WhatsApp)のユーザーが被っていて、どこまでそれがFacebookアプリにとってリスクなのかを調査していた。それが今ではここまでコアなZ世代を囲い込むことが出来たのは、Facebookがプラットフォームの役割をシフトさせたから。
ユーティリティとエンタメの軸
Metaとしては、Facebookアプリのフィードで流れるSNSコンテンツの価値は若者層にとって下がっているのを理解していた。だからこそ、彼らはもう一度ユーティリティにフォーカスすることを決めたはず。多くのSNSはユーリティティとエンタメの2軸でポジショニングを分けられる気がしている。最初からすごいエンタメ性のあるコンテンツを出すのが非常に難しいからこそユーティリティとして始まるSNSアプリが多い。例えばInstagramは写真のSNSになれる前に、写真のフィルターを提供してユーザーを引き寄せられた。そのフィルター機能を無料で提供していたからこそユーザーはInstagramで写真を撮り、そのまま写真を投稿した。その投稿数がどんどん増えたことによってようやくネットワーク効果が生まれ始めた。TikTokが買収したMusicalyも同じく、より簡単に動画を編集できるサービスとしてスタートし、後にSNS化したとも言える。SNS業界ではこれをよく「come for the tool, stay for the network」(ツールのために来て、ネットワークのためにとどまる)と言う。
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Facebookはもちろんそのツールからネットワーク化したフェーズを遥か昔に通り越しているが、だからと言ってずっとネットワークが保てるギャランティーがないと理解している。特に世代ごとで前の世代と同じSNSに居たがらない流れがあると言うことも知っているので、違うSNSに行く時にはネットワーク効果がどんどん薄れていくリスクがある。だからこそSNS企業は常に自社のユーティリティとエンタメの軸の今現在のポジショニングを理解し、どっちに偏るべきかを知らなければいけない。もしエンタメ要素が落ちている場合はユーティリティでユーザーを囲い込んでそこから再度エンタメ化して、エンタメ化しているのであれば次のユーティリティとなるものを仕込むのが大事になる。
実は多くの企業はこのユーティリティとエンタメの軸を行き来している。
・フェーズ①:大学で友達を探すツール(ユーティリティ)
・フェーズ②:SNS、フィード(エンタメ)
・フェーズ③:マーケットプレイス、グループ(ユーティリティ)
・フェーズ④:ソーシャルコマース、マッチング(エンタメ)
・フェーズ①:写真フィルター(ユーティリティ)
・フェーズ②:SNS、フィード、ストーリーズ(エンタメ)
・フェーズ③:メッセージ(ユーティリティ)
・フェーズ④:Reels(エンタメ)
TikTok
・フェーズ①:動画編集(ユーティリティ)
・フェーズ②:ショートフォーム動画(エンタメ)
・フェーズ③:検索、クリエイターツール(ユーティリティ)
・フェーズ④:TBD
Snapchat
・フェーズ①:消えるメッセージ(エンタメ)
・フェーズ②:メッセージ(ユーティリティ)
・フェーズ③:オリジナルコンテンツ、Spotlight(エンタメ)
・フェーズ④:AIチャットボット(ユーティリティ)
まとめる図はこんな感じになるかと思います。
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Facebookのユーティリティ化
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