コロナ時代の小売業界とD2Cスタートアップの最新動向
自己紹介
こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、D2C企業の話や最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!
はじめに
正直この話を書くことについて、かなり悩みました。医療機関のサポートや、アメリカで行っている良い新型コロナウィルス対策の取り組み(ソーシャル・ディスタンシング)の方が今は必要ではないかと考えました。ただ、先日書いた「COVID-19: (D2C)ブランド/スタートアップの課題とこれからの消費者行動への準備」記事もそうですが、今は起業家や経営者の方々も大変厳しい状況の中、有力な情報を求めていることを思い、今回は新型コロナウィルスの拡大という悪い環境の中でもうまく自社ブランドや売上が向上している会社のマーケティング・コミュニケーション事例を少しでも参考になれたらと思ってまとめさせていただきました。もちろんアメリカの事例なので日本で上手くいくかは分かりませんが、これをきっかけに新しいアイデアなど生まれたら嬉しいです。
さらに、元投資家として、新型コロナウィルスの影響で経済不況になるのは圧倒的なチャンスでもあると考えてます。既存プレーヤーが苦しみ、消費者の行動が変わる時でもある。このチャンスを見逃さないブランドが今後強くなっていることだと確信してます。そんな前向きな思いも込めて、アメリカの今の状況を共有させてください。
まず、リテール業界へのインパクトを理解しましょう
コロナ影響の前と後で、どれだけインパクトがあったのかを幾つかのグラフでお見せしたいと思います。売上、コンバージョン率、Facebook広告費用、Google広告費用をカテゴリー別でWithinというパフォーマンスマーケティング企業がシェアしたサイトや、店舗来店者数のデータをまとめたPlacerのグラフを以下まとめました:
オムニチャネル企業:直近で売上は復活して、その分Facebook広告へ投資している企業が増えている。このまま上がるか、それともフラットになるかが見所です。
引用:https://covid19.within.co/covid-19retailpulse/
ECオンリー企業:売上がコロナ前と比べて-50%のままで、まだ復帰する様子が見えない。
引用:https://covid19.within.co/covid-19retailpulse/
ファッション企業:週末を通じて復帰し始めている様子。ただ、平日になるとどうなるかが気になる。3月12日時点で最高値まで行っている。
引用:https://covid19.within.co/covid-19retailpulse/
必需品を売る企業:やはり需要が高く、広告をガッツリ(特に検索)へ投資している。
引用:https://covid19.within.co/covid-19retailpulse/
ラグジュアリー企業:週末に数字が上がり、今後も暇な時にオンラインでのショッピングが期待できるかも?
引用:https://covid19.within.co/covid-19retailpulse/
店舗来店者数
アメリカの大手企業の店舗来店者数をみたい方はPlacer.aiが素晴らしいまとめをしております。以下Costcoの例となります、引用リンクに行きますと他のお店の状況も見れます。
引用:https://www.placer.ai/covid-19/
この状況の中、Everlaneみたいにレイオフを行っている企業もいれば、D2C企業で採用している会社もいる。必需品ではないかぎり、ブランドはこのタイミングで重要なのはユーザーにプロダクトを売り込むことではなく、感情的コネクションを作ること。
何故この時期はD2C・リテール企業にとって重要なのか?
大変な時期ほど人・ブランドの本性が明らかになる。こう言うタイミングの発言や行動が一番ユーザーの印象に残る。直近だと24 Hour Fitness、GameStop、Whole Foodsは対応がかなり叩かれてブランド価値が下がっている。逆にTexas Roadhouseなどは良い面で見られると共に、既存ユーザーからのロイヤリティーが上がり、新規ユーザー獲得にも繋がる。
最も辛い時だからこそ、今やることがユーザーに響く。それを失敗すると逆にブランド価値が大幅に下がり、コロナ後も苦しむ可能性がある。このタイミングでどれだけ人・空気を読めるか、そしてそれに対して自社ブランドと合った、良いことをできるかが勝負となる。
新しい「普通・日常」へのシフトを出来るかで今後の成功が決まる
以前noteで紹介したニールセンが発表した「新型コロナウイルス海外での影響(日本語版)」の消費者行動パターンの6つのフェーズによるとコロナの影響で根本的に消費行動が変わると予想されている。このシフトにブランドが追いつけるかが肝となる。Facebookがスマホの可能性を見てモバイルシフトしたように、経済不況のタイミングも一つの可能性である。
2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染者が急激に中国に増えた際に、大きなサプライチェーン向けイベントのCanton Faireがキャンセルとなった。そのイベントにかなり賭けてた当時のアリババはリテール業界のサプライチェーンは変わると感じ、TaobaoとAlipayを作り、B2B事業からP2Pマーケットプレイス事業へ移行した。
21日で習慣が生まれると良く言われるが、コロナの影響で恐らく世界中の人は21日以上家に閉じこもるだろう。そうすると新しい習慣などが生まれる。既に中国では新しい消費者行動が見えていて、それがアメリカや日本に来るのかが見所:
1) スーパーのデリバリーとレシピアプリ
中国では2月のスーパーからのデリバリー売上が60%増、レシピアプリの利用率も44%上がった。フードデリバリーは50%下がった。アメリカではBlue Apronが1週間で株価が500%上がり、Walmartも株価が高い。
2) メンタルヘルス
中国ではTencent Healthの新しいプログラムのDAUが33万人から3,600万人に上がった。アメリカだとCalmやHeadspaceなどがチャンス。
3) エンタメ
中国ではインターネットの利用時間が平均6.1時間から7.3時間に上がり、ショート動画(YouTubeなど)のDAUが4.92億人から5.69億人に上がった。アメリカでは映画館からNetflix/Disney Plusや、ニュースアプリ、UGCコンテンツのアプリへシフトする可能性が高い。
4) SNS
中国ではSNSのDAUが年比で1,400万人増えて、利用率も27%増えている。アメリカではHousePartyも復活した。
5) ゲーム
中国ではオンラインゲームのDAUが年比で30%増。利用時間も40%増えて平均159分に。アメリカでもフォートナイト、Roblox、Call of Dutyのプレー時間が増えている。
6) 教育
中国ではオンライン教育のDAUが46%増えた。しかも中国ではコロナのピーク後もオンライン教育の利用率が減ってない。アメリカもZoomなどでオンライン教育化されている中で、今後変わる可能性はある。
7) 電話会議
中国では電話会議・コラボレーションソフトウェアのDAUが1.4億人から1.5億人に増えた。アメリカではZoomやTandemの利用率が増えている中、今後もリモートワークが普通になるかも?
8) eコマース
中国ではEC売上が5%増加した。アメリカではEC率がまだ11%だったのが15%まで上がり、今後も上がる可能性が高い。
9) フィンテック
中国ではオンライン保険が10%上がった。決済や保険などオンライン化されにくいが、アメリカでは今後増える可能性がある。
ブランドはこの行動シフトを理解した上で今後のブランディングやマーケティング戦略を考えるべき。
不況だから起業しないのは間違い
この不況を乗り越えられてさらに強くなるブランドが今後育って業界を代表するブランドになり得る。
少し前だが2009年のKaufman調査を見ると、2009年のFortune 500起業の内、51%が経済不況の時期に設立されている。
引用:Kaufman 2009年調査
さらに、2008年〜2009年に設立されたスタートアップを見ると、Airbnb、Slack、Uber、WhatsApp、Pinterest、Squareなど、今ではスタートアップ業界の代表例となる会社がいる。
今D2C企業のレイオフが行われている中、逆にアーリーステージの会社や起業するブランドのチャンスでもある。高いスキルセットを持っている従業員の採用が可能になる。
デジタル広告の変化について
今年のCasper上場前から多くのD2Cブランドが広告から違うユーザー獲得チャネルを検討していた中、コロナの影響でより広告予算が減っている。パフォーマンスマーケテインング企業のWithinのクライアントは平均的に広告予算が20%下がっていると発言。同時に、多くのD2CマーケターからCPCやCPMが下がっていると報告がある中、その実態を調査したいと思います。
P&G、Staples、Ollieなど多くのリテールとECブランドのオンライン広告を運営するSocial Fulcrumからのデータによると、全体的にCPMが落ちて、CTRはあまり変わりなく、CPCが下がっているとのことです。さらに、オン際とコンバージョン率も下がっていて、ユーザー獲得コストが全体的に上がっているとのことです。ユーザーは色んなサイトに行っているが、実際購入をしてない。以下詳細データ:
3月1日からCPMは毎週20%落ちている。
引用:Advertising & Covid by Social Fulcrum
FacebookからのCTRは変わってなく、CPMの下がり具合と合わせると、CPCが全体で40%下がっていることが計算できる。
引用:Advertising & Covid by Social Fulcrum
オンサイトコンバージョン率はマイナス53%と大幅に下がっているが、直近では少し上がった。
引用:Advertising & Covid by Social Fulcrum
CAC(ユーザー獲得コスト)は上がっているが、徐々に下がっている傾向。
引用:Advertising & Covid by Social Fulcrum
この状況に踏まえて、以下戦略をオススメします(日本ではワークするか分かりませんが):
1) 新しい顧客を探すことに専念するべき
リテンションが一番インパクトされている今、新規獲得 / リテンションの広告予算の割合を帰るべき。
2) クリエイティブの変更
複数人が入っているクリエイティブを取り除く。一人の写真、もしくはプロダクトだけの写真を使い、クリエイティブでは安全性と便利さを推すのが重要。直近だとアメリカでは「rapid delivery」(速達)や「ships from US」(国内発送)の言葉が入っているクリエイティブの方がパフォーマンスが良い。
3) サイト内プロモーションを検証
Everlaneもやっているが、全体で25%オフなど、サイト全体でディスカウントを検証しても良い。プロダクト別でのディスカウントはあまり上手く行っていない様子。
4) プロダクトメインのキャンペーン・LP作成
今のユーザーの行動を見ると、コンバージョンはあまりしてないもの、商品を見たがっているので、それ用のページやキャンペーンなどを作った方がパフォーマンスが高い。平均2倍ぐらいのROASだったのがプロダクトメインのキャンペーンに変更した時に16倍ROASになった話も出てきている。
ディスカウントするべきか
このタイミングでディスカウントをするべきか悩むブランドは多い。Everlaneも珍しくサイト全体で25%ディスカウントをオファーしている。
D2Cデータベースを作っている2PMの418社の内、約34%がディスカウントをしていました。その142社の内の116社のサイトのスクリーンショットを撮ったCommon ThreadがDropboxにて共有しています。
これで画像のポジショニングや、どう言うディールを提供しているのかご参考までになれば。
Supplyの広告プロモーション
剃刀D2CのSupplyはコロナの影響で2020年で最も低い売上額を記録したのを見事に挽回してサイバーマンデー以来の売上を達成した。Supplyの剃刀は普通の剃刀より3倍〜5倍ぐらいの値段なので、このタイミングで買う人は少ない。
それでSupplyが取った戦略は抽選で勝った人は1年分の剃刀を無料でもらえるキャンペーン。それを用の広告も出したり、カートに自動的に入る仕組みも作った。その結果、初期はROASが5.07倍、スケールした際にも3.12倍のROSと良い数字となった。
オフラインからオンラインのコミュニティ
直近アメリカでは増えていたD2C企業開催のオフラインイベントがオンラインへシフトした。オンラインへ早めにシフトするアドバンテージや、上手くやっているブランドの事例紹介:
Haus:バーチャルハッピーアワー
低アルコールを販売しているhausは元々サンフランシスコ、LA、ニューヨークなど重要な市場でオフラインイベントを行って徐々にコミュニティを広げていたのを、早い段階でバーチャルなフォーマットへ切り替えた。週次で「online aperitivo hour」ハッピーアワーを開催。
引用:Haus Twitter
初回は50人以上集まった回となり、そこで軽く情報交換や今後どう言うハッピーアワーを行うべきかユーザーからフィードバックをもらった。
そして2回目はデオドラントD2CのSchmidts Natural創業メンバーと一緒にInstagram Liveを行って、D2Cブランドの作り方、グロースの仕方、M&Aの話を語り合った。
早めに動くとD2C業界の著名人たちも気づいてくれる
Tracksmith
ランニングウェアのTracksmithは元々オフラインでローカルのランニングクラブやユーザー向けのミートアップを開催していたが、それをデジタル化している。エクササイズコンテンツをユーザーに送ったり、Slackグループを作ってユーザー同士エクササイズ方法のアドバイスを共有できる場を作っている。
引用:Tracksmith Running Slackグループ
オンラインコミュニティを作るときのティップス(First Round Reviewより)
色んなフォーマットを試すこと
最初から大規模なバーチャルイベントを開催しなくても良い。まずは小さいディスカッショングループをZoomで開催したり、アイスブレーカーセッションなど行ったり、簡単なQ&Aセッションを開催するだけで良い。でかいイベントをやりたければスピーカーなど外部の方にコンテンツを提供してもらうこと。そしてでかいイベントをやるのであれば20個の小さなウェビナーより20人のスピーカーを読んで一つのイベントで開催しても良いかも。
早く動くこと
次の半年ぐらいで色んな企業がバーチャルイベントを開催する。そのアテンションの競争になるので、早めに動くこと。場所の確保や設営とかがないため、オンラインイベントの方が早くイベントの開催ができる。スピーカーの確保とプロモーション時間だけ気にして、早めに進めるべき。
イベント体験の全てを一つの場所で収めること
マルチプラットフォームを使ってしまうと、URLを探すのが大変だったり、エンゲージメントが下がる。でかいカンファレンスではHopin、Airmeet、Vfairsなどのツールを使うとメインステージプレゼン資料からサイドイベントなど一括にまとまった場所で管理・見ることができる。
ローカルコミュニティを繋げる
場所に限られたイベントを開催している人たちも多くバーチャルイベントに切り替えている。その場合全てのバーチャルイベントを閲覧できるページを作るのも良い。
どう言うトピックにフォーカスするかを決める
既に多くのユーザーに使われて愛されているプロダクトであれば、ユーザーが集まってプロダクトなどについて熱く語り合える場所は作りやすい。そう言う場合はプロダクトの使い方の学び合いや体験を共有する場を作ると良い。逆にまだユーザーが多くない場合はプロダクトをトピックにするより共感できるトピックを選ぶべき。例えばBranchはモバイルアプリのグロースについてのコミュニティを作ったりしている。
とりあえず始めよう
コミュニティを作るには単純にZoomでイベントを開催したりウェビナーをやり続けることではないが、迷っている方がいればまずやってみよう。やりながら学ぶことがほとんどですし、人にためになることを目的としたイベントは自然と広がる。SlackグループやZoomでウェビナーをまずローンチして、リアクション・フィードバックを見てみましょう。使いやすいツールから始めた方が良いが、もし有料ツールなどどうしても使いたければMighty Networks、Discourse、Khoros、Higher Logic、Vanilla、Tribeなど多くのオプションがあります。
オンラインイベントのアイデア集(First Round Reviewより)
ディスカッショングループ
10人以下のグループで何かについて話し合いが出来る場を作る。スピーカーはいなく、お互いから学び合えるスペースを作るのが大事。グループがでかくなったらZoomなどでグループを分けられるツールなどがあるのでそれを使いましょう。
スピーカーとウェビナー
何かのトピックのエキスパートを見つけてインタビューする、もしくは登壇してもらう。チャット機能やQ&A機能を入れるとよりインタラクティブになる。
スピードネットワーキング
Icebreaker.videoなどを使ってコミュニティ内のメンバーが1対1で話せる場所を作る。
コラボレーションとブレーンストーミングセッション
バーチャルホワイトボードやコラボツール(Google Docsでも良い)を使ってオンラインハッカソンやアイデア出しセッションを開催する。
体験の共有出来る場
ダンスパーティー、音楽フェスなど、色んなバーチャル体験を開催しているブランドがいる。
バーチャルカンファレンス
複数の体験とスピーカーを合わせて大規模なイベントを開催する。
意外とコミュニティを作れるきっかけが苦しんでいることを赤裸になって話すことだったりする。ユーザーがそれに共感してくれて、より強いコミュニティになるケースも多々ある。そしてそう言うユーザーの集まりが出来れば新しいコアユーザーが生まれたりする。
メール配信の対応
アメリカではここ数週間の間、コロナの影響を感じたブランドの多くがユーザーへメールで自社の状況を説明している。ただ、全てのユーザーに送るのはどうかなと思うし、ユーザーもほとんど関係性のないブランドからメールが来ている事が逆効果(ブランドの信頼性を下げている)と発言している。
逆に良いメールを出すと、ユーザーは喜ぶだけではなく、ブランドのプロモーションまでしてくれる:
ブランドによってはユーザー(特にコアユーザーじゃない人たち)は特に連絡は必要としてなかったりするので、メッセージング以上に、まずは「メールを送るか」を考えましょう。さらに、コロナについてメール送信を遅らせるほど必要なくなってくる。それはコロナ情報、エンタメ情報、その他今パートで紹介する「良いメール」集をユーザーは何回も読みたくないから。以下良い例と悪いメール例をまとめました:
悪い例:Tacobell
Tacobellがコロナについて出来る事、そしてユーザーに伝えることはかなり限られている気がする。このメール自体は単純に周りのブランドが似たようなことをやっているからとしか見えない。
悪い例:JNCO
ジーンズを売っているJNCOからのメールを見ると、別に悪いことを書いていない。ただ、普通なので、「このメールは必要?」となってしまう。
良い例:Andie Swim
水着D2CのAndie SwimユーザーはAndie Swim CEOのMelanieさんから直接メールをもらった。自分の思い、感情、そして感謝を込めた、非常にパーソナルなメール。直接メール出来るように自分のメールアドレスを公開し、それ以外に電話サポートやInstagramなど色んなチャネルでエンゲージ出来るようにしている。感情が詰め込んだメールが本当にユーザーに響くだろう。
引用:Andie Swim Melanieさんからのメール
良い事例:Pattern Brands
クッキングウェアを売っているPatternは上手く自社のミッションとコロナ対策のアプローチをマッチさせたり、自社プロダクトではなくユーザーのニーズについて触れているメール。そしてコロナの影響で自炊する人が増える中、有料サービスだったクッキングコーチとSMSで会話できる機能を無料にしている。書き方、そしてコロナ対策のソリューションもブランドの一部に聞こえるのがめちゃくちゃ上手いところ。
引用:Brand Messaging in Times of Crisis: 8 DTC Brands Worth Celebrating
唯一の悪い部分はメールの長さかもしれない。色んなコロナメールを受け取っているユーザーにとってこの長さはちょっと多いかもしれない。
良い例:Blume
女性向けセルフケアD2CのBlumeのメールはBlumeのことを触れてないことが良いところ。コミュニティをBlumeに近づけるためのメッセージではなく、人が人と繋がるよう、サポートし合うように仕向けているメール。他のブランドと比べると圧倒的に短く、簡単なコンセプトなどで目立つ。そしてBlumeのブランディングに繋がるメッセージとなる。
引用:Brand Messaging in Times of Crisis: 8 DTC Brands Worth Celebrating
良い例:Rothy’s
靴ブランドのRothy’sはコミュニティを作るためのアプローチをとっている。ユーザーへの感謝と、その感謝の返しとして癒される・明るくなるコンテンツ(Rothy’s従業員の犬)を紹介。タイトルも「We hope this makes you smile today. 💙」と端的に言いたいことを伝えている。よりブランドを人間化している。そして犬の画像がGIFになっているところがセンスを感じるw。
引用:Brand Messaging in Times of Crisis: 8 DTC Brands Worth Celebrating
良い例:Bambu Earth
スキンケアD2CのBambu Earthは他のほとんどのリテール企業と同様で売上が大幅に下がっていた。3月1日〜10日の売上と比較すると、1日の売上が25%下がっている状況になっている。
そこでBambu Earthのブランド担当と創業者のAmber Hawthorneが動画を録画して一通のメールをユーザーに送った。その中での重要なメッセージは:
・まだ配送はしているが、いつまで配送できるかが分からない
・変に爆買いしてもらいたくないが、同時に在庫切れさせたくない
このメール一本で$33.8K(約360万円)の売上を達成。
引用:Online Shopping in the Age of Coronavirus: 10 Strategies on Becoming “Essential” by Common Thread
その他コンテンツ
メールやオンラインコミュニティ以外のユーザーとの接し方はある。その中で良かった例を紹介します:
水着ブランドSummersaltのSMS
水着ブランドのSummersaltはユーザーに明るいメッセージを伝えたく、24321に「JOYCAST」とメッセージを送ると、気晴らしができるメッセージを送られてくる。瞑想動画、簡単なセルフケアのアイデア、可愛い動物のGIFなど。
引用:Why this swimwear startup just launched an emotional support hotline by Fast Company
子供向けの本を売っているA Kids Book About
A Kids Book Aboutはコロナを子供が分かるように説明する本を売り出した。
クリエイティブの対応
デジタル広告、コミュニティ、メール以外で使えそうなブランディング・プロモーション戦略を以下紹介します:
ロゴ・スローガンの変更
アメリカの様々なブランドはコロナ対策で必要なソーシャル・ディスタンシングを表現するために一時的にロゴやコピー・スローガンを変更している。以下いくつか良い例を紹介:
コカコーラは今流行の会社名の文字のスペースを空けているのと、コピーを変更している。
引用:Brands Promote Social Distancing With Altered Logos, Slogans by AdWeek
バナナなどを売っているフルーツブランドChiquitaはロゴに入っていた「Miss Chiquita」を取り除き、「Miss Chiquitaは家にいる」と発言している。
引用:Brands Promote Social Distancing With Altered Logos, Slogans by AdWeek
Nikeも素晴らしいコピーを書いている:
引用:Nike Twitter
D2Cブランドではオートミルクを販売しているOatlyが良いデジタル広告を出している。ちゃんとユーザーが思いつきそうな発想を考えて、少しでも今の状況を満足させようとしているコピー。
ロゴのアイデアが必要な人は@dongtentと言うコピーライターを採用するべき(以下ロゴは全て彼が考えて、それがバズったおかげで色んな人からコロナ用のロゴをリクエストされている):
Blue Cross Blue Shield
The MET
Chanel
Tiffany & Co.
Target
Nestle
KitKat
Unilever
Gap
ちなみにGapの実際のコロナ用のロゴはこちら:
Zoomバックグランド
今流行の電話会議ソフトウェアのZoomだが、Zoomではバーチャル背景を作ることが出来る。Zoomでの会議を盛り上げるために様々なバックグランドを作っている人たちがいる:
例えばStar TrekのU.S.S.エンタープライズのバックグラウンド:
ブランドは面白いバックグラウンドなどを作ってMeme化してユーザーへ提供するべき。逆にこれからZoom背景の広告が出てきそう。
メタバースやゲームのコラボ計画
以前メタバースについての記事でも書いたが、FortniteみたいなメタバースやゲームでD2CやC向けブランドが広告・プロモーションしても良い話が思った以上に早く来るかもしれない。
FortniteやCall of Dutyなどのゲームの利用時間が大幅に上がっている。イタリアではインターネットのトラフィックが70%増、その中で大きくその数字にインパクトしているのはFortniteなどのゲームとForbesが報道。PCゲームマーケットプレイスのSteamは2,000万人の同時アクセスユーザーを超えて、記録的トラフィックを達成。シューティングゲームのCounter-Strike: Global Offensiveも100万人の同時アクセスユーザーを超えたり、同じくシューティングゲームのCall of Duty: Warzoneが2020年3月10日にリリースされて3日で1,500万人のユーザーがプレーした。ゲームが記録的な数字を出す中、ブランドはゲーム内で広告が可能なFortniteやRobloxに集まるだろう。
さらに、最近Roblox上で学校の卒業式を行う高校もいる。
実際にRobloxはコロナの影響で去年末の同時アクセス数から約1.5倍の400万人まで増えている。
引用:Coronavirus Launches Roblox to Four Million Concurrent Players In 2020 by RTrack
オフラインイベントがオンライン化されているため、これからはオンラインコミュニティに対して広告・宣伝をするのが普通となりそう。
結論:今とこれからの行動変化を読み取り、より人間らしく
コロナの中で上手くメッセージングをしているブランドの共通点は主役を何にしているかである。メッセージを見ると、ほとんどのブランドはプロダクトをフォーカスに置いてなく、メールやメッセージングは人ベースになっている。他の人と接するような言葉遣い、助け合い、話をブランドが行っている。コロナに関しての情報共有をするブランドもいれば、より明るくしてもらいたいためにおもしろ動画を送るブランドもいる。明らかなのはこのタイミングで積極的に売ることにフォーカスするとユーザーはブランドを評価しなくなること。
Awayはこの良い例だと思う。通常だと頻繁に新しい色のスーツケースのメールや、コラボ商品、トラベルティップス、イベントなどのメッセージが多かった。ただ、3月15日にAwayが全店舗をシャットダウンすると言ってからユーザーにメールを出していない。これはこれで正しい判断だと思う。しかもAwayはInstagramの投稿戦略も変えている。元々スーツケースをメインとした投稿や、旅行先の投稿が多かったのを、スーツケースを使ったエクササイズ方法など、トーンをちゃんと変えている。これは限りなく自社のブランドメッセージをちゃんと考えてエクセキューションまでしているブランドである。
逆にこのタイミング、いわゆるユーザーが行動変化をしているからこそローンチしているブランドもいる。元Glossier COOのHenry DavisがArfaを初め、3月17日に最初のプロダクトHikiをリリース。ただ、コロナの影響で、初期戦略を変更して全商品を無性にして医療機関関係者に渡すと宣言した。もちろん他のアーリーステージの会社よりは資金もあるが、彼らはこの初期投資が後のブランド認知になると分かっている。
引用:HIkiサイト
最終的にブランドとしてこの時期を乗り越えるには今の人の心境、そして行動変化を理解して動くこと、そしてより人間らしい行動を取ることが必要だと思う。
ポッドキャストもおすすめです
Off Topicでは、米国を中心に最新テックニュースやスタートアップ、ビジネス情報をゆるーく深堀りしながらご紹介する番組です。
Spotifyからも聞くことができます。
Written by Tetsuro(@tmiyatake1)
引用:
・https://www.forbes.com/sites/mattperez/2020/03/16/video-games-are-being-played-at-record-levels-as-the-coronavirus-keeps-people-indoors/#57df3c6457ba
・https://slate.com/business/2020/03/coronavirus-brand-corporate-emails.html
・https://www.forbes.com/sites/kaleighmoore/2020/03/16/how-retailers-are-transitioning-in-person-events--communities-to-online-environments/#127e5a6768a2
・https://www.nytimes.com/2020/03/20/well/virus-virtual-happy-hour.html
・https://www.travelandleisure.com/style/shopping/summersalt-joycast
・https://2pml.com/2020/03/23/optimism/
・https://twitter.com/Nik_Quinn/status/1241436772808056834
・https://newconsumer.com/2020/03/covid-19-email-marketing-tone-context/
・https://www.linkedin.com/pulse/weeks-retention-bite-dtc-must-godtp-here-kristen-lafrance/
・https://www.morningbrew.com/retail/stories/2020/03/23/arfa-adapted-first-brand-launch-coronavirus-era
・https://2pml.com/2020/03/09/coronavirus/
・https://firstround.com/review/dont-just-throw-together-a-webinar-the-virtual-events-crash-course-you-need/
・https://commonthreadco.com/blogs/coachs-corner/online-shopping-coronavirus-essential-strategies
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