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リアルタイムのニルヴァーナ

シングル「Smells Like Teen Spirit」がヒットしていたのが91年の秋から冬にかけて。当時俺は15歳で、暇な時間があればピアノのあるオーディオルームでTVKのビルボードトップ40を観ていた。今と違って結構寒い冬で、部屋にあったストーブの灯油の匂いまで思い出せる。

チャートではマライアキャリーが無双していて、他にはカラー・ミー・バッドとかブライアンアダムスとかが常に上位にいた。アルバムではガンズの大作「use your・・・」とかR.E.M.の名作「OUT OF TIME」がチャートインしていた。カラー・ミー・バッドのアルバムを買う程(1STは未だに好きな作品だけど)、ビルボードトップ40に洗脳されたメインストリートを歩く軟弱な中学生だったので、当時のロック界隈の、アクセルの短パンな野獣ぶりや、スラッシュのブラックエンジェルズの松田さんばりの熱苦しさにビビっりつつ、一方でカラフルなR.E.M.のMVには「なんじゃこれりゃ!」とその異質ぶりにオルタナを感じつつ、「でも耳に残るな!!」と何度もMVを見返していた。それが当時の俺のリアルだった。

で、そこにニルヴァーナの登場だ。「NEVER MIND」はバンドにとって2作目のアルバムだったが、ビルボードトップ40では、「シアトルから突如現れた話題の新人バンド」的な扱いだった。「「Smells Like Teen Spirit」のMVは、カートのドアップと、リフに合わせたチアガールのダンスが印象的で、ガンガン流れていた。チャートをじわじわ上がっていき、最終的には5位の大ヒットになった。おどろおどろしい雰囲気も相まって、正直「面白MV」にカテゴライズされる作品だった。一方でポップなリフとわかりやすいメロデイは1回聴いたら耳に残った。要は、サウンドもビジュアルもわかりやすくインパクト抜群で、ポップなチャートものを聴いていた中坊にもしっかり届くマーケットを意識したプロダクトだったということだ。

俺はアルバムが出たら速攻買った。アルバムもポップでわかりやすい曲がたくさん入っていた。ヒリヒリした感じもあって、めちゃくちゃ気に入った。しばらくしてビルボードチャートから離れ、ロッキング・オンを買うようになった。

このあとアル・ヤンコビックがパロディ化したように、リアルタイムのニルヴァーナは「なんじゃこれ」って感じで、エンタメ要素満載だった。ただ、出オチ感が強く、将来このバンドが神格化されるなんて全然思わなかった。もう少しこのあたりのリアルタイムの状況が伝えられるといいのにな、と思う。その後のカートやニルヴァーナに付き纏うシリアスさは、当時のエンタメ満載ニルヴァーナから表面的には感じなかった。

俺の今を作ったロッキング・オン94年6月号。レディオヘッドもブラーもプライマルも載ってた

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