サブカル・ハイカル化していくお酒文化
昨今、若者の酒離れをよく耳にします。他にもチョイ呑みや宅呑み&家呑みからBYO=Bring Your Own(店舗への持込み)などのさまざまなシステムまで、お酒との付き合い方は色々な選択肢が出てきています。
そして、現代のお酒文化は戦後復興&経済成長期のビールを中心にした大衆化=お酒のポップカルチャー化が根底にあります。
TVCM数なんかを見ていてもビールや発泡酒のCMはとても多いですし、今でもお歳暮のカタログなんかにはビールのセットがかなりの確率で掲載されています。
でも、現実的にはビール類(ビール・発泡酒・第三のビール)の出荷量自体は6年連続で下落中。ビールの税率が変わったのでチューハイに流れたなど色々要因はありますが、ほかの酒類を全部足してもトータルの消費量はここ20年ほどずっと右肩下がりです。(例外的に2009年頃にちょい持ち直しましたが、、、)
最近ではビオワイン、クラフトビール、ウイスキー、純米酒、クラフトジンと来て、お酒の趣向はどんどん多様になっているようにも感じます。
ポップカルチャーだったお酒文化が細分化してサブカルチャー・ハイカルチャー化しつつあるようにも思うのです。
手っ取り早く酔えればいい、というニーズ
お酒を飲むときのニーズは色々あると思いますが、大きな部分では2つに絞れます。
1つは「酔いの効能と中毒性」もう1つは「美味しいお酒を飲みたい嗜好性」です。
最近この嗜好の二極化が激しくなって来たと感じています。特に、手っ取り早く酔いたいというニーズが大きく前に出て来ているように思うのです。
ここ数年でコンビニのドリンクケース売り場の顔ぶれは大きく変わりました。
今まで長年センターを張っていた缶ビールが隅に追いやられ、ストロング系と呼ばれる高アルコール度数の缶チューハイが各社から大量に出始めたのです。
ビールの倍近いアルコール度数で、値段はビールより安い。
酔いたいという欲求を満たすにはコスパの良い選択肢です。いわゆるホッピーにキンミヤといった労働階級が赤提灯で呑んでいた酔うための酒のコンビニ版です。(余談ですが、黒ホッピーにシャリ金で焼き鳥とかは僕も好きです)
それとは真逆に、こだわりの造りで作られるハイクオリティなお酒も増えています。
国産ウイスキーでは常時品薄なものも多々ありますし、クラフトビールやクラフトジンやクラフトワインなど買いたくても買えないマニアックだけど人気な品もたくさんあります。
こっちは完全にハイカルチャー化しつつあり、値段も徐々に上がっています。中にはプレミアがついて市販価格の数倍の値段でオークションに出ているものもあります。
これってどっちが良いとかハイカルチャーは高尚で偉くて文化的とかいう話じゃなくて、手っ取り早く酔えるお酒もありながら、こだわりのお酒や文化的な味わいのあるお酒もある、そういう色々選べる状態がみんな幸せだと思います。
お酒の嗜み方は誰が教えるのか?
僕がお酒を好きになったきっかけは、両親の晩酌を楽しむ姿です。大人って楽しそうだなー、と思いながら育ちました。
その後、デザイン学校の先生が授業の後に飲みに連れていってくれるようになり、二次会〜三次会と残った数名はこだわりのお店へ連れていってくれてワインやウイスキーを教えてくれました。
卒業してインハウスデザイナーになった後は、飲食店を設計するチームに所属したこともありボスと一緒に飲みに行くことが増えました。労働酒的な赤提灯での体験はそこが原点です。
酔う為の労働者の酒=ローカルチャー的な酒文化と、味わい嗜む為の趣味や文化・教養としての酒=ハイカルチャー的な酒文化は二極化しつつありますが、どちらも入り口には道先案内人的なポジションの人との関わりがありました。
ひるがえって、35歳になった自分は、今度は先導役をする側に回りつつあるような気もしています。
文化・教養としてのお酒を伝えたい
手っ取り早く酔うという行為自体を否定するつもりはありません。
アレはアレで楽しいし、僕だって20台頭くらいは一気飲みとか飲み放題で朝までとかやってました。
でも、それとは違う、文化や教養としてのお酒の楽しみ方もあるという事を、10年前の自分には伝えてあげたい。まさしく、今の20台前半の後輩たちに、そういう場所を用意してあげたいな、とも思うのです。
上の本はちょっと煽りが極端ですが、実際に国際的な晩餐会などでサーブされるお酒には様々な意味が含まれます。
同じように、カクテルや各種スピリッツにしても、ウイスキーやクラフトビールや日本酒にしても、その1つ1つには作り手がいて意思や思想が詰まっていたり詰まっていなかったりするんですね。
酔いたくて飲むのも楽しいのですが、文化や教養を知りながら飲むのも楽しいんです。
最近、ストロング系チューハイがガンガン幅を効かせつつあるのを見ていて、ちょっと心配なんですよね。コンビニやスーパーの酒売場の棚がアレばっかりになるのは、ちょっとつまんないなって。
とはいえハイカルチャー的な酒文化ってなかなか触れる機会がないと思うのですが、僕の仲良くなった人たちをそこの入り口から沼へとどんどん突き落としていきたいと思っています。
手始めに今度、スーパーエレメントの中野さんを日本酒沼へ落とす会をやろうかな。
それこそ拠点ができたら定期的にそういう会を開催していきたいのです。20台の若者に良い酒を飲ませて沼にはめる会とかやりたい!きっとそういう若い世代への投資が、脈々と続いて酒文化を守ることにつながる気もするんです。
なんて、月曜からいきなりうまい酒飲みたいという日記でした。
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