スタッフがいないとイベントはできません:その1

はじめに。

スタッフ、オフィシャル、役員。
この記事にはいくつか単語が出てきます。ですが、記事内ではすべて同じ意味と捉えてくださって構いません。(とても大雑把ですが)

競技役員ライセンスの種目、有無、レース格式の違い、競技や組織の差異・・・細かい話をするととても長くなりますし、今回の話の中で、それは大きな問題ではないので無視しています。すみません。



では記事を始めます。







動画をご覧になっていただくと、ドライバーが「あまりお世話になりたくないですが」と、冗談めかしてコメントしていますね。
それ、「コース上でオフィシャルと直接会うのはクラッシュシーンだから」であります。

お仕事中のオフィシャルさん、かっこいいですね。



さて。

美しい話だけで済ませたいところですが、実はレース業界さん、オフィシャル不足に悩んでいます。

先の動画でも、その話が出てましたね。


こんな言い方はアレですが、

この「オフィシャルに感謝を伝えよう!!」動画は、オフィシャルさんへのお接待企画です。


ありがたいと思ってます、僕たちスターもあなた方に感謝してます、だからオフィシャルのお仕事を続けてください!

と、ドライバーやチーム関係者がご機嫌伺いをしたわけですね。
そういう意味では、単なるお涙頂戴ではないのであります。
(むしろ運営が人手不足に泣いてます。)


土屋圭一氏の「鈴木亜久里、飯島章、私が走っていた頃からやってくれてる方もいる」と「おじさん、おばさんへの感謝」を伝えているあたり、世代交代がうまく進んでいない可能性さえあります。

いや、長いことオフィシャルやると、こういう選手の成長(現役から監督や運営側へ、という意味で)を身近で眺められる・・・という僥倖もあるんですけどね。でもね、やはり「どんどん若手が参入してきて年配者が押し出される」くらいでないと「元気のない業界」という印象になりますね。



実際、オフィシャルが足りてないのは事実のようです。
Xで検索をかけると、そうした募集のポストが出てきます。







また、これはとあるサーキット関係者から聞いた話ですが、近隣のサーキットどうしでスタッフの遣り繰りをしてイベントを保持しているとのこと。彼らは「応援」と言ってましたが、その応援なしにはレース開催も危ぶまれるのが現状だそうです。
「だから同日開催のイベントはできないんです。人手がないから」

近隣といってもサーキットの話ですから、100㎞とか200㎞離れているわけです。それだけ離れていても、そして仮にいくら参加者が集まったとしても、イベントの同日開催は無理。それが現状だそうです。

まあ、昨今のモータースポーツは下火ですので、参加者が押し寄せる事態もなさそうですけども。(それはそれで寂しい。)



さて、この話。実は他人ごとではありません。
2輪レースでも、オフィシャル不足は常態です。






オフロードで言えばやはり華は全日本MXですが、実はその全日本でもオフィシャルの数と質の維持に悩んでいます。





こちらはTRですけども。







「やってほしい人」ではなく「とりあえず来れる人」を集めなくてはならない。そのため、オフィシャルの質を維持できなくなっています。
少ないスタッフなら少ないなりに教育を徹底する必要がありますが、そこもできていない印象すら・・・。



どうしてオフィシャルが足りないのか?といえば、一つには「働きに対して報酬が見合っていない」という説があります。



そうなんですよね。こんなに遠くから駆けつけてくださるんですが、交通費が出せるほどの予算はないと聞いています。




天下のF1でもそうなんですから、2輪業界は推して知るべし。




交通費を出せない代替案として、地元の派遣会社に依頼する運営さんもいます。自宅から通える人なら交通費も宿泊費も心配ないですからね。

しかしその場合、モーターサイクルスポーツにどの程度理解があるか?という問題が出てきます。
加えて、オフィシャルは基本競技役員ライセンスが要りますので、「すべてのポストを派遣で代替」は不可能です。
(レース格式によってライセンス所持者を必要人数確保するとか、ライセンスの種目を要求されるとか、組織によって要件があるからです。これに関しての詳細は、冗長になるので省きます。)

以上のことから、オフィシャルは「気軽に誰でもできる」ものではありません。安全に対する認識、競技への理解、ライダーへの公平性、観客への配慮などなど、全方位に神経を尖らせなくてはならない、かなりハードなお仕事です。

だから、それをきっちりやってるオフィシャルはかっこいいんです!




では、報酬はいかほどで?
といいますと。




(イケ氏は北海道から海を渡って各地に手伝いにいらしてました。ありがたや、ありがたや。)



そして、労働環境もなかなか過酷です。
雨、風、埃、マディはデフォ。加えて怪我のリスクもゼロではありません。

そういう業務なので「誰でも気軽にできるものではない」と言ったんですけどね。






事実私の知り合いも旗振り業務中にざっくりヤラレタことがありまして、救急搬送されました。
それでも彼は、その後もオフィシャルを続けていらっしゃいます。私としては尊敬でしかありません。




運営側も、何も考えていないわけではありません。
たとえば非売品のスタッフTシャツなど、お金で買えないオフィシャル・プレミアムを用意したりしてます。





そして、ボランティア状態のオフィシャルでも続く方がおいでなのは、やはりそれだけやりがいがあるからです。

やりがい・・・・と言うと、すぐ「やりがい搾取」という単語が投げられるので言いにくいのですが、でも本当にやりがいのあるお仕事なんですよ、オフィシャルは。









これこれ!これです。私がスタッフをお勧めする理由。

「中を知ると外からの景色がガラッと変わると思います。」

まさに、

情けは人の為ならず

自身の理解を深めるために、自分がやっている競技のスタッフ(オフィシャル)をやってみる。それはきっとあなたを大きく成長させてくれるはずです。





と、ここで終わるつもりでしたが、下のポストを見て自身の認識の甘さに気づいたので、もう少しお付き合いください。


コースの神様氏は、42年間もオフィシャルをなさったんですね。
ホームも拝見しましたが、氏のポストを見ているうちに、私がさきほど申し上げた「競技への理解が深まる、視野が広がる。自身のためにオフィシャルをやってみよう」では収まらないものを感じました。


42年は、競技者がコースにいる期間よりずっと長い時間です。
これはもう、コースの神様氏ご自身がオフィシャル道に挑んでいた感すらあります。


オフィシャル道。


それはライダーやドライバーが競技を極めようと切磋琢磨するが如く、コースの安全とイベントの成功に邁進する極みなのかもしれません。


締めくくりはこちらのポストで。

これはもしかして、あの動画の日に撮影されたものですかね。




そして、長くなったので、この記事はここで一旦終わります。
次は、対策を探っている例をまとめたいと思ってます。

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