かみさまはいつだっていじわるなんだ

更新は基本的にリアルタイム。ネットは脳みその外部記憶装置。私が思ったこと、感じたことを記憶させる。

「母さんが脳梗塞で入院した」
3日前、家族LINEに父からの連絡が入った。
私はその連絡をやけにクリアな頭で眺めていた。
山奥のコテージでひっそりとプライベートサウナを楽しんでいる最中だったのだ。すぐに父に電話をすると、命に別状はない。ただ、半身麻痺と言語障害が残る可能性がある、とのことだった。

すぐに帰る支度をして、東京に戻ってきたのは良いがいかんせん面会人数、面会時間に厳しい縛りがあり、妹と二人で見舞いにいけたのが今日だった。

「孝行したいときに親はなし」とはよく言ったもので、忙しさを理由にここ数年は家族旅行にも行っておらず、この先それが実現できるのか、ただただ色々な後悔が頭の中にあったけれど、命があるのだから前を向いていくしかない。
病室であった母は車椅子に乗っていたけれど、顔色は良くひとまず安心した。言葉も少し引っかかることはあるが、電話越しでも何を言っているのかわかるくらいのレベルなので問題はない。
ただ、左半身に関しては全く動かず、自分でパンツも履けないからオムツにしてもらった。このままだったらどうしよう。とぼやいていた。

人間の身体というものは不思議なもので、右脳をやられたら言語障害が、左脳がやられたら半身麻痺が残りやすいようだと聞いた。
意思の疎通ができるだけで介護は格段に楽になると私は思っているので、こうして話ができるだけでもよかったじゃない、と慰めにもならない言葉をかけた。

すでにリバビリが始まっており、頑張れば杖をついて歩けるレベルにはなれますよ、と医者は言っているが、大きな問題がある。私の実家は一軒家なのだ。

それも一階に浴室、二階にリビングというタイプなのである。
私は自分の顧客に戸建を進める際、絶対に一度は一階にキッチン、リビング、浴室、洗面、トイレ、できれば和室があるタイプが良い、と推してきた。なぜならこういう事態を想定しているからなのだ。
左半身に力が入らない老人が入浴のたびに階段を使って一階に降りるだろうか。では一階で生活した場合、食事のたびに二階に上がるだろうか。
どちらも困難だ。

それは私たち家族の中でもすぐに話が出た。
そもそも数年前から私と妹は両親を自分たちが住む近くのマンションへ移住してほしい、と話していたのである。母は7年前にも軽度のくも膜下をやっていたのだ。その時から誰かと一緒に暮らそう、もしくは実家を売却して移住してほしい、と話していたのだ。
ただこれには問題があった。96歳になる認知症の祖母(母の実母)が実家近くのグループホームに入っていたのだ。
祖母は私の実家で一緒に暮らしていた。母には兄と妹がいるが、性格的に一緒に暮らせるのが母だったから一緒に住んでいた。
祖母の話はまた後日にするが、とにかく祖母が生きているうちは離れられないよ、と語っていた。それがこの結末だ。
もっと早くに動いておくべきだった。しかし時間は戻らないし、祖母もまだまだ死なない。全てを忘れて生きるのは幸せなのだろうか。

母は「今の家を売って、妹の近くのマンションに移り住みたい。」と言った。私も妹も賛成だった。なんなら私はすでにいくつかの物件に目星をつけていた。面会時間も短かったので一旦家に戻り父も交えて打ち合わせをすることにした。

ところで、実家では犬を飼っている。私が家を出た後にきた子なので、私よりも頻繁に帰る妹に懐いていた。母が入院してから不安を感じているのか下痢が続いているので妹が一旦預かることになった。
私はこの犬輸送業務のために車で移動していた。

父に自宅を売却して、私たちの近くに住むのはどうだろう、と提案をするとそれは構わないが売れるのか、買えるのか、金銭面も含めて諸々不安ではある、と返答があった。
そこは不動産屋の峰不二夫だ。ソリューションの峰、と呼ばれるくらいこの手の話には強いので電卓を弾きながらいくつかのパターンを提示した。

■自宅をじっくりエンドに売却する。引渡しは4ヶ月。妹の家の近くには大規模マンションがあり価格差はあるが常に物件は出ている。タイミングが合えばそれを購入する。

■自宅をじっくりエンドに売却する。引き渡しは相手に合わせる。一旦家財はレンタルボックスか私の倉庫に移しておいて、引渡し後両親は私か妹の家に来る。そこからゆっくり物件を探す。(リフォームも含む)

■業者買取の金額を算出し、買い先行でいま出ている物件をまずは押さえる。引渡し猶予をつけて業者に卸す。

■上下の移動に不安があるのであれば、階段昇降機を設置していまの家でひとまず生活を再開する。

まだ残債がある家なのでリースバックも考えたが、家族の心理的に避けたいとなったのでこれは却下した。ちなみに私は年間数十件リースバックをやる部門にいたことがある。当事者の気持ちってこんななんですね。

いまは、母がどの程度回復するのかわからず、私たちは不安でいっぱいだ。後悔でいっぱいだ。悪い夢なら覚めて欲しい。つまり目先の話ばかりしてしまっている。
のちに降りかかってくるものはなにか。両親どちらかの死、である。
私たち家族は96歳の認知症の祖母、という巨大な負担を抱えている。殺したいけど殺せない。なかなかに厄介な存在に長年苦労させられている。
これを今後は私と妹が受ける可能性はいつだって存在しているのだ。

どちらかが亡くなった場合。
両親から認知症の雰囲気を感じる前に家族信託を行っておく。
母が認知症になった場合、物件を売却して施設費用に充てる。
妹の家には子供が二人いるが、10〜15年後というとちょうど高校、もしくは大学入学あたりだ。一番お金がかかる時期に施設費用に頭を悩ませるのは辛いだろう。全部お兄ちゃんに任せておきなさい。

相続が発生したあと、物件を売却した場合実家と新しく買うマンションであれば実家の方が私と妹に入る金額は大きい。これも伝えている。
諸々考えると今回、マンションに買い替えを行ったあと、我々に相続が降りかかってきた場合、賃貸出しても、売却してもある程度見入りが見込める物件に移ってもらったほうが良いのではないか、という話もしておいた。

かみさまはいつだっていじわるなんだ。
ようやく私に時間と余裕ができて、これからたくさん旅行に、食事に行こうと思っていた矢先にこんなことになってしまった。
でも起こってしまったことは仕方がない。いろいろなところに連れて行けるように鬼のようにリハビリに付き添ってあげよう。

妹と二人、まさかこんなに早く介護が降ってくるとは思わなかったけど、もうそんな歳なんだね、ともし両親どちらかが施設に入る必要があった場合、出せるお金の話もしておいた。

入院する二日前に妹は子供を連れて実家に遊びに行っており、こんな数日でなんでこんなことに、と言っていたけど、これを読んでいる皆さんにも起こりうることなので。
今後、母が戻ってきたら先に提示したパターンの中からどれかを選択することになるけれど、この手の「何かが起こった時不動産は、資産はどうするか」のシュミレーションは早めに行っておいたほうが良いです。
家族が病気で住み替えって案件は結構な数担当してきたから冷静に我が家のこれからについて、を話し合えたけれど、もし困っている方がいたらお気軽にご相談ください。

ただの書き殴りにお付き合いいただきありがとうございました。



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