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技能実習制度は今後どうなるのか?

令和5年10月18日、10時から12時の間に第12回の技能実習に関する有識者会議が行われ、政府への提言がまとめられました。

かねてより数々の問題点が指摘されている技能実習制度が今後どのようになるのか、提言を検証してみたいと思います。

そもそも技能実習制度とは?

この技能実習制度は1993年に導入された制度です。

その目的は、日本の技術を外国の方に学んでもらい、母国に持ち帰ってその普及に努めることを目的としており、いわば国際協力のための精度であるという建付けになっております。

ですので、技能実習の理念としては
1 技能の実習のための準備がしっかりできていなくてはならない
2 労働力の確保のために行ってはならない

という二つの点があげられます。

1993年の時点ではまだまだ日本の技術力も総じて高水準を保っており、国際貢献という意味で制度が始まった趣旨は理解できます。
ただ、労働力の確保のための制度ではないとされているためにどうしてもひずみが出てきてしまうということが起こります。

それまでは研修という制度で外国人に座学を伴わない技術の習得のための在留資格があったのですが、1993年には労働を伴う活動としての技能実習制度に一本化されることとなります。

ただ、研修の在留資格も廃止されたわけではありません。

これにより技能の実習として扱われる時間の内労働を伴うものは、労働基準法の対象になるなど、改正が行われたのであるが、この時点ですでに労働に関してトラブルが数多くおこっていたことがあげられる。

その後も機構ができるなど実習生を守るために様々な改革が行われましたが依然として実習生の給料は低く、取り巻く環境もあまり褒められたものではないという時期が続いております。

そこで今回はその”発展的解消”を有識者会議で提言するということになり、「技能実習制度廃止」というニュースが数多く報道されるに至りました。

では、技能実習の問題点は何でしょうか?

技能実習の問題点

技能実習生の2022年、逃亡者数は過去2番目に多い9000人を超える数となりました。
コロナの影響で賃金の支払いが悪かったり、適切なサポートを受けられないといったことも背景にあると考えられますが、それでも9000人はかなりの数ですね。

また、技能実習生は原則、転籍(てんせき)と呼ばれる転職の自由がありません。
雇用側の企業としては、せっかく技術を教えているのに物になってきたところで他社に転職されてはたまらないことと思われます。
しかし、実習生の立場で考えると、一度技能実習生として日本に来た後は、たとえ職場の人間関係や環境が合わなかったとしても、環境を変えるすべがないということになってしまいます。
その点も技能実習制度のひずみと言えるでしょう。

こういうことも踏まえ、驚くべき結果をお伝えします。
龍谷大学が行った調査についてWIKIPEDIAに記載がありましたので転載します。

龍谷大学の行ったベトナム人技能実習生に、日本のイメージを問うアンケート調査では、来日前には0%だった「あまり良くない」が、来日後には37%、来日前に63%だった「良い」が、来日後8%にと、日本に対するイメージが悪化した、またアンケートの回答が「受け入れ先に報復されかねない」と、多くの技能実習生が回答を断っていた

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

また制度の趣旨と現実の乖離も大きな問題です。
建前は日本の技術を持ち帰ってもらうためとする技能実習制度ですが、実際のところ低賃金で外国人労働者を雇用する方法の一つになっています。

今回の提言は?

それ等を踏まえて、今回の提言が行われることとなります。
上記羅列した問題点の解決のために出ている提言は以下のリンクで見ることができます。

新たな制度及び特定技能制度の位置付けと両制度の関係性等

今回の提言をまとめると次の通り。

1 技能実習制度を発展的解消し新たな制度の創設
2 3年間の実習期間で、特定技能1号の要件を満たす人材を育成する
3 やっぱり家族帯同はダメ
4 企業単独型は他の在留資格に以降

ここで問題点の解決になるのは新たな制度。
提言の中にはどのようなものになるかなんとなく書かれている。

具体的な話だと
1 新たな制度は特定技能1号への移行を目的とする(つまり人手不足解消が目的)
2 特定技能1号への移行には試験の合格が必須
3 各分野ごとに受入れの人数の上限を設ける
4 転籍は1年間働いた後に日本語能力試験に合格すればOK
5 ただ転籍は同じ業種以外認めない
6 新たな制度でも技能実習と同じく組合などの管理団体は必須
7 新たな制度では受入れ費用は受け入れ企業が負担する

なんとなく改善されそうな感じにみえますが、正直これはちょっとがっかり。
現実で考えてみるとうまくいかなさそうな点がいくつかある。

まず、3に関しては、労働力の確保も必要だが日本の市場縮小の視点も必要かと思われます。
また、各分野ごとの受け入れ人数の上限も正直政府が把握できてるとは思わない。
実際の申請数などで照らし合わせて、もし外国人の総数を制限したいならトータルで考えた方がよさそうな気もする。
人気のない業種の自助努力も促せる気もするし。

また4は自民党の顔色みすぎちゃったかなって感じです。
1年働かないと転籍できないって日本人の転職ではありえない話。
人権意識がここは国際的な基準を満たしていないように感じます。

で、7番。
6に関しても管理団体があまりに機能していない現状で、まだ続けるかって感じですが、7ね。
背景にはベトナムなんかの来日までの外国人本人の負担減の話だと思うけど、そもそも送出し機関の制限を日本からどの程度できるか分からない現状では厳しいものがある。
台湾なんかでも逃亡者の大半はベトナム人。
背負ってるものが多いのね。

100万円近い借金を背負って日本に来るベトナム人は当たり前になってしまっているので、その負担を減らし逃亡数を減らすという意味では理にかなってる気もするけど、その一方でこの構造は、変わらない気がする。

どっかの国みたいに、送り出しの費用ではなく、保険料やなんなり別の費用を徴収されて終わるんじゃないかなって。

また、地方の企業にとっては死活問題。
転籍が認められるとなると、給与の高い都市部に人気が集中する可能性が非常に高いと思います。

今回の提言に関しては、2日後の自民党内の意見交換で侃々諤々の議論があったとかなかったとか。
このままの形での実現の可能性はおそらくないんだろうと思われます。

ただ、介護を外国人労働者に任せることに振り切った台湾にしてもそうだけど、少子高齢化が進む国では人手不足の解消は避けては通れない問題となっている現在、人材の確保はもはや国際規模の競争になってしまっている。

是非柔軟な発想やほかの国の状況などを勘案して、この問題に取り組んでほしいと思います。

このような議論や提言がなされつつある現在はいい方向に向かっていると思いたい。

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