簡単な簿記の知識(ご自分の事業の経理のために)②小規模事業者のための経理の基本と帳面について
皆さんが事業を開始されるとき、会社(法人)であれば法人の設立登記などが完了すると事業所の所轄の税務署に法人の設立届(正式には「法人設立届出書」)を出します。個人事業の場合も事業所の所轄(もしくはご自分のご住所の所轄)の税務署に個人事業の開始届(正式には「個人事業の開廃業届」)を出します。
その際に付随して提出する書類の中に青色申告に関する承認申請書(正式には法人の場合は「青色申告の承認申請書」、個人事業の場合は「所得税の青色申告承認申請書」)」があります。
この青色申告というのはどういうことでしょうか。
個人事業の場合で説明しますと。
我が国の所得税は、納税者が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算し納税するという申告納税制度を採しており、1年間(1月1日から12月31日までの間)に生じた所得金額を正しく計算し申告するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を帳簿に記帳し、取引に伴い作成したり受け取ったりした書類を保存しておく必要があります。
そこで、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする方については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる青色申告の制度というものがあります。青色申告をすることができる所得には、不動産所得、事業所得、山林所得があります。
一定水準の記帳とは?
青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則ですが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっております。
これらの帳簿および書類などは、原則として7年間保存することとされていますが、書類によっては5年間でよいものもあります。5年間の保存でよい書類には、例えば、請求書、見積書、納品書、送り状などがあります。
というように所得税の法令で定めてあります。
つまり、青色申告という制度で申告しようとすると前述のような帳簿を備えなければいけないのですが貸借対照表や損益計算書を作成するということになると正規の簿記の知識が必要となります。
じゃぁ、青色申告以外にはないのか?というと、白色申告と云うのもあります。
個人事業の場合の青色申告には「決算書」を添付しますが、白色申告の際には「収支内訳書」になります。言葉のニュアンスから受けるイメージも青色申告の方がきっちりとした書類が求められるような気がしますね。
法人の場合には青色申告であろうが、白色申告であろうが、きちんと複式簿記の帳簿を用意する必要がありますのでいずれにしても簿記の知識が必要ということになりますね。
先述の、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳というものは複式簿記によって作成する総勘定元帳と言われる帳簿の一部です。
しかし、個人事業の青色申告制度では総勘定元帳までは求めていませんので、現金出納帳、経費帳というものがしっかりと記帳されていればよく、掛売り、掛仕入が発生しなければ売掛帳、買掛帳は不要となります。ですから、個人事業の場合には現金出納帳、経費帳を合わせたような収支日経式帳簿というものと、固定資産台帳、必要に応じて売掛帳、買掛帳があれば足りるということになります。
そして、これらはそれぞれ別々に単独で記帳することが出来ます。
例えば、現金の出入りを記録して、経費の発生を記録して、掛売り、掛仕入の発生と入金、支払いについてその都度記録し、年度末に固定資産台帳を作成することでも足りるわけです。
正規の簿記の知識がなくても青色申告は出来る。ということになります。
さて、青色申告制度の承認申請を出すってなぜなのでしょうか?
なぜ、申請書を提出して承認を受けるのでしょうか?
それは、青色申告制度で申告すると白色申告による申告よりもメリット(恩典)があるからです。
そのメリット(恩典)についてご説明しましょう。
一番大きなメリット(恩典)は青色申告特別控除が受けられることです。
具体的には売上から仕入原価(製造原価)と必要経費を引いて(控除して)残った所得に対して所得税の計算をするのですが、正規の簿記(複式簿記)で記帳して損益計算書と貸借対照表を作成して決算書を提出すればこの所得から青色申告特別控除として最高55万円差し引くことができます。(e-Taxによる電子申告を行っている場合は最高65万円、貸借対照表を作成しない場合は最高10万円となります。)
その他の青色申告のメリット(恩典)には青色事業専従者控除や貸倒金の計上ができる、(純)損失の繰越し、繰戻しができるというものがあります。それぞれについては、個々での説明は割愛しますので国税庁のサイトをご覧ください。ご不明な点があればコメント欄にてお問合わせください。
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm)
ということで、小規模事業者のための経理の基本と帳面について書かせていただきました。
これからの予定は、
③簿記の基本の勘定科目について
④貸借対照表について
⑤損益計算書について
⑥貸借対照表、損益計算書の見方について
⑦最後に
というテーマごとに短い記事をシリーズで投稿していく予定です。
今回は「小規模事業者のための経理の基本と帳面について」という記事でした。
次回以降もぜひ、読んでくださいね。
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