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田村貴昭衆院議員・紙智子参院議員が何を訴えたか――日本共産党・農林水産分野における国会活動

 208通常国会における農林水産分野での議論は、
①コロナ禍によって著しい需要減と価格低下に見舞われた農林水産の生産者が、ロシアのウクライナ侵攻による燃油・肥料・飼料・資材高騰でさらに打撃を受けていること、
②それが過去最低レベルとなった食料自給率の低下と、急激な食料生産基盤の崩壊のさなかで起きていること、
③同時に農林水産分野での環境保全・温暖化対策の必要性が抜き差しならない段階に入っていること、が重大な課題となる中で行われました。
 審議を通じて明らかになったのは、これらの「危機」といえる事態は、輸入自由化・大規模化・効率化・競争力強化に固執する自民党農政では到底乗り切れないという点です。
 政府は、せいぜいスマート化・輸出強化を強調することしかできず、5月末になって打ち出した「燃油・物価高騰対策」においてすら総じて既存政策の枠組みから出ることができませんでした。それどころか、インボイス導入に固執し、水田活用交付金を削減するなど、崖っぷちの農家を谷底に蹴り落とすような政策を実施しました。
 田村貴昭議員・紙智子議員は、全国から湧き上がってくる現場の怨嗟の声を政府・国会に届け、農政の抜本的転換を求めて奮闘しました。

■音を立てて崩壊する農業生産基盤

 田村議員は2022年度予算編成に関する財務省の建議書を引用し、わずか5年で基幹的農業従事者がほぼ4分の1に相当する約40万人も減ったこと、20年後には7割減の42万人となることを紹介。農業生産基盤が急激に崩壊していることを指摘しました。財務省は対策するどころか、「(これまでの)3倍の農地集積を達成していることが必要」などと記載しているとし、「これでは、誰もいなくなった農村に超効率的な大規模農家がポツンとあるようなイメージだ」と批判しました。(3月2日、農林水産委員会での発言。以下、表記がなければ農水委)
 紙議員は農業経営体全体が一貫して減少していることに加え、増加傾向だった企業などの雇用型経営も2015年の5.4万経営体をピークに2020年は3.6万経営体と減少に転じたことを指摘。農業経営に雇用されている人数(常雇い人数)も22万人から15.6万人に大きく減ったとし、「新たな担い手が育っていないのは、競争力強化路線により認定農業者に施策を集中してきたことで、多くの中小家族農業を離農に追いやってきたことが原因だ」と批判しました。(3月4日)

■農家の危機に追い打ちをかける補助金カット

 田村議員が指摘した2022財務省財政制度審議会の「建議」には、米の需要が減少する中で水田を単価の安い畑作物などに転換した場合の補助金「水田活用の直接支払交付金」をカットするべきとの答申が記載されていました。農水省はこれに従い、水張りができない農地(畦畔や用水路がない農地等)は交付対象水田から除外し、播種を行わない多年生の牧草は補助金を減額するなどの大幅カットを行いました。
 政府の米価下落対策は実質的に「農家の自主的な減反」を呼び掛けるだけでした。農家はそれに応え、史上最大となる6.5万haもの作付け転換を行いましたが、その報いが補助金カットです。田村議員は、「転作を推進する国の指導に従って頑張ってきたのに、はしご外しだ」と批判しました。(3月2日)
 院内で行った農民連の要請行動には、全国の農家が参加。口々に補助金カットを批判しました。
▶「ソバの土壌を5年に1度水田に戻せなど、机上の空論だ。あんたらは東京にいて、俺たちの生活はどうなってもいいと思っているのだろう」
▶「輸入飼料が入ってこない状態で、国産の飼料を確保しようという政策に逆行している」
▶「これでは放棄地にするしかない。どうしても田んぼにもどせというなら、水漏れ防止の工事代は国で負担しろ」
▶「多年生の牧草だって、地代、水利代、人件費がかかる。補助を3分の1以下にするのはどういうコスト計算なのか」
▶「究極のはしご外しだ。転作面積が増えて予算が足りなくなったからか?引きはがして胸が痛まないのか?」
▶「命取りだ。すべて放棄地になってしまうが、それでいいのか?」。
 田村議員は、水田などの農業用排水施設の整備や維持管理を行う土地改良区内では、同交付金は施設維持のための賦課金支払いに充てられてきたが、交付金がなくなれば支払えなくなり、転作農家を苦しめ、土地改良区の経営にも影響を与えると指摘。特に農地転用時の決済金の支払いもできなくなる可能性があり、土地改良区にとっても打撃だとし、水田活用交付金カットを見直すか、新たな支援を行わないと解決できない」と迫りました。金子農水相は「現場の課題を把握、検証しつつ、5年かけて必要な対応を検討する」と答弁しました。(3月15日)
 紙議員は、「安倍政権が示した活力創造プランでは、10年間で農業所得倍増を豪語したのに、水田作の農業所得は1時間当たり181円で2013年の592円から半減以下になっている」と指摘。「全国各地で生産者や団体、地域を切り捨てるような補助金カットは撤回するべき」と主張しました。また世界的な穀物需要の不安定化のもとで、麦・大豆の転作への支援が重要だとし、転作が進まなかった要因を検証するべきだと要求しました。(3月8日)

■迫る食料危機 農漁業政策の抜本的転換が必要

 ロシアのウクライナ侵略に伴い、飼料や肥料がひっ迫、価格が高騰しています。飼料用トウモロコシではウクライナが世界シェアの22・2%、肥料(窒素・リン・カリ)でもロシアとベラルーシで2割を占めており、トウモロコシはバイオ燃料需要増も相まって高値に拍車がかかっています。小麦の一大輸出国であるウクライナからの積み出しが阻害され、国際取引価格が上昇、日本国内の政府売渡価格も17.3%引き上げられました。世界的な食糧危機が叫ばれ、自給率向上と食料主権の確保が重大な国際的課題として浮上しています。
 田村議員は、「養豚は経費に占める飼料の割合が6割にのぼる」と述べ、輸入に頼る配合飼料価格が2006年の1トン当たり4万円強から9万円弱まで高騰したと指摘。「豚熱予防などの設備投資が重なっているのに豚肉価格は横ばいだ。これ以上の飼料高騰は耐えられない」として抜本的な対策を求めました。また、原料をほぼ輸入に頼る肥料が2年前から高騰しており、緊急の救済策と中長期的な価格安定制度の必要性を訴えました。(4月14日)

■インボイス導入、苦しい農家に追い打ち

 田村議員は財務金融委員会で、農家をはじめとする零細な免税事業者に大打撃を与えるインボイスの導入を中止するよう、再三要求しました。JAを通さず産直センターなどと取引をする農家にとって、消費税納付に必要なインボイスの発行には課税事業者になることが必要で、インボイスが発行できなければ、取引から排除される可能性があります。田村議員は、憲法の「営業の自由」の侵害だと強く批判しました。
 さらに、農家の約9割が売り上げ1000万円以下の免税事業者であるため、取引を行う産直センターでは、農家が課税事業者にならなければ消費税の納税額が大幅に増加し経営が破綻すると指摘。武部農水副大臣は「仕入れ税額控除の変更が生じる事業者は全体の1割」などとはぐらかし、負担を被る業者の実態を把握せず、措置を講じていないことが明らかになりました。逆に農家が簡易課税制度を選択した場合、税込みの年間売り上げ900万円の事業者では利益180万円で年間13万円の消費税負担になるとして、「増税で離農が激増する」と批判し、中止を求めました。(2月9日、財政金融委員会)

■畜産の危機 農家守る対策を

 田村議員は、畜産用配合飼料の国際取引価格が、原油価格高騰の影響(トウモロコシを原料とするバイオエタノール需要が増大するため。)を受け、2020年度から急激に上昇し、21年度第3四半期の平均輸入原料価格は1年間で1・7倍に高騰していると指摘。現行の配合飼料価格安定制度では、配合飼料価格が1トンあたり4万1520円へと1万6442円も上昇したのに、補てん金額はわずか8500円しかないとして、「このままでは内部留保のない畜産農家は破綻する。総合緊急対策では畜産農家の負担をすべて補てんする制度とすべきだ」と要求しました。農林水産省の伏見啓二審議官は、全額補てんできない仕組みだと認め、支援策は検討していると述べました。
 また、4カ月後に補てん金額を支払う現行の仕組みでは資金繰りが困難になると指摘し、日本政策金融公庫の融資などの対応を要求。鈴木俊一財務相は「資金繰り支援は重要だ。万全を期したい」と述べました。(4月27日)
 紙議員は3月の農林水産委員会で、学校が春休みになる年度末から5月にかけ、生乳の需要減による廃棄の危機に直面するとして、対策を要求しました。紙議員は、コロナによる業務用需要の減により、昨年は5000㌧が廃棄の危機に陥ったとし、年度末から同様の危機が起こるのではないかと質問。畜産局長は「取り組みが行われなければ、生乳廃棄も懸念される」と答えました。
 紙議員は、環太平洋連携協定(TPP11)枠ができたことにより、原料用などの輸入粉乳調製品が増え、脱脂粉乳は2016年度の6000トンから19年度には1万2380トンに倍増したと指摘。日欧EPA(経済連携協定)でも輸入枠が設定され、輸入が増えていると述べ、「生産者に生乳生産増を求めながら輸入も増やす。需要が減れば被害を受けるのは酪農家だ。輸入を国産に置き換えることも含めて対応を」と迫りました。金子農水相は「指摘はわかる。どういう対策があるか検討する」と答えました。(3月16日)

■人と環境に配慮した農業政策へ みどり戦略

 今国会は、農林水産業における温室効果ガス排出の削減、化学肥料・農薬の削減を図り、2050年までに有機農業を全農地の25%・100万㌶に拡大する目標を掲げる「みどりの食料システム戦略」の是非と関連法案が大きな議題となりました。
 有機農業の思想は、自然の循環機能に依存し、これを維持増進することが根本にあり、その担い手は大部分が小規模・零細農家です。政府の目指してきた効率化や競争力強化とは本質的に矛盾するため、これまで何の支援もありませんでした。
 従ってみどり戦略も、全国で有機農業に取り組む農家に対する直接支援を避け、これまでの自民党農政との矛盾を回避できる範囲で行うものとなり、AIやドローン、ロボットなど、有機農業に実装しうる先端技術開発を並べ立てるだけの「研究計画書」(田代洋一教授)となってしまいました。
 ただ、戦略策定・法案化を契機に全国の主だった有機農業関係団体が日本オーガニック会議を結成するなど動きを強め、日本共産党にもたびたび要望を伝えてくださいました。国会議員団はこれに応え、当事者の方々と連携して要求を審議で取り上げました。
 紙議員は、「環境と調和のとれた食料システムの確立」には「新自由主義」政治を変え、農業の大規模・効率化を追求する路線の見直しが必要だと強調し、人と環境に優しい持続可能な農業再建のため、大量の化石燃料や水資源の浪費を前提とする「農産物の大量輸入」から脱却すべきだと強調。輸入業者に温室効果ガス抑制の目標を求めるよう要求しました。(4月8日、参院本会議)
 田村議員も、「戦略」に欠けている「フード・マイレージ」の視点から、CO2を低減するため「食料輸入の削減、自給率の向上、地産地消の推進で具体的な目標を設定すべきだ」と主張しました。(3月23日)
 紙議員は、時間とコストのかかる有機の取り組みに対し、指導員や担い手の育成・生産者の所得支援、学校給食などでの活用による消費拡大への支援を訴えるとともに、「自給率の向上を国政の柱に据えた農業再生策こそ求められている」と語り、人と環境に優しい持続可能な農業への抜本的転換を求めました。また、「戦略」に関する意見公募の9割はゲノム編集への懸念や反対であったと指摘し、「拙速なゲノム支援はやめるべきだ」と訴えました。(4月14日)
 田村議員は、確実な消費先である給食への採用を図るためには、一時的な交付金ではなく、市町村への恒常的な支援制度の創設を要求しました。さらに、欧州や北米で採用されているフード・ポリシー・カウンシルのように、市民が政策立案に参加するボトムアップの仕組みが必要だと強調しました。(3月30日)

■市町村に農地の大規模化を強要する法改正

 今国会には、市町村に農地の集積・集約の目標策定を義務付ける農業経営基盤強化促進法改正案が提出されました。同法は、農地バンクを通じて農地の利用権を「担い手」(認定農業者)に集積・集約し、農業の大規模化を図る仕組みを定めるもの。改正案は、中山間地など条件が不利な農村で大規模化が進んでいないため、市町村に農地を大規模集約する「地域計画」の策定を義務付けるものです。
 田村議員が「計画の策定や目標の達成度を、農業への補助金の要件・条件にするべきではない」と質したところ、農水省経営局長は「国の補助事業を、計画の策定と一定の関連付けを行う」と答弁しました。田村議員は「計画策定を補助金交付の条件にすれば圧力になる。『地域の実情に応じた自主的な計画に』という全国市長会の要望に反する」と批判しました。(4月20日)
 紙議員は、「改正案は、営農規模拡大が目的の農地バンク事業を地域計画(人・農地プラン)に位置づけ、地域全体で担い手への農地の集積と規模拡大を進めるものか」と質問しました。農水省経営局長は「農地の集約化を進める」と答えました。
 さらに、「農地バンク導入時の農水省の資料では小規模農家を排除している。小規模家族経営がいなくなる地域計画もあり得るのか」と質問しましたが、農水省は答えませんでした。また、中小家族経営を位置付けていない点も批判。2年以内という期限を設けること、農地バンクを利用するよう市町村が所有者に「勧告」する制度、地域の農地所有者の3分の2以上の決定で、農地の貸出先を農地バンクだけに限定すること、それに反した場合罰則まで設けていること、なども「強権的だ」と批判しました。(5月12日、19日)

■輸出促進よりも国内農業支援を

 2019年10月に成立した農林水産物食品の輸出促進法は、際限のない輸入自由化路線により足元の国内需要が外国産農産物にどんどん奪われる状況のもと、輸出に活路を見出すため、官邸主導で輸出拡大戦略をカネも人も投じて進めようという法律でした。
 日本共産党は、「個々の産地や農業者などの輸出拡大の努力を政府が支援することはあっても、農産物の輸入自由化による国内農業への破壊的影響は、輸出促進策で解消できるものではなく、農政の方向がまったく逆を向いており、国内市場を外国産に奪われている状況から目をそらすものである」(衆院農水委反対討論)として、反対しました。
 今国会では、品目ごとの輸出促進団体の認定や事務負担の軽減、資金の融通をしやすくするなど、個々の産地や農業者の輸出拡大の努力を国が支援する法改正が行われました。こうした支援に党として反対するものではなく、賛成しました。
 質疑で紙議員は、「輸出が1兆円を超えたが、農家所得は増加したのか」と質問。金子農相は「農林水産業全体の所得に目に見える効果はまだ大きくありません」と答えざるを得ず、個別の事例を挙げるしかありませんでした。(4月7日)
 田村議員は、21年の農産物・食品の輸出額が1兆2385億円と10年で倍増したにもかかわらず、17~19年の農家所得はむしろ減少したと指摘。アルコール飲料や菓子など、輸入した原材料を加工しただけの食品が輸出額の4割を占め、農家の所得向上につながっていない実態を告発しました。
 その上で、多くの消費者には安い輸入品を押し付け、少数の富裕層への高級品を生産・輸出するよう誘導する日本の農政は、本質的に間違っていると指摘しました。(5月18日)
 また、紙議員は米国への輸出量が伸びている日本茶について、販売農家戸数が2000年の約5万3700戸から、20年後には1万2300戸と大きく減少しているとし、国内の日本茶の振興や日本茶を楽しむ文化を普及するための支援策を求めました。(4月7日)

■国内の砂糖生産を守れ

 田村議員は、鹿児島・沖縄のサトウキビ生産について質問しました。台風に強いサトウキビは離島にとって代替の利かない基幹的作物だと強調。「砂糖の消費が年々減少する中、サトウキビ農家は今でも収穫の機械購入すらままならい。輸入製品の関税が段階的に引き下げられれば、離農が進む」と指摘し、「TPP11による影響から生産者を守るため、国産の砂糖と輸入加糖調製品の価格差を埋める調整制度の枠組みの維持を」と制度継続を要求しました。(3月8日、財政金融委員会)

■漁業被害への政府支援を

 田村議員は、沖縄、鹿児島で深刻な漁業被害を生んでいる軽石漂流・漂着被害について、政府は漁業共済(ぎょさい)による支援だけで何の支援メニューも示していないことを指摘。沖縄県の調査では、共済加入率が3割程度しかないことをあげ、漁業者の共済加入率を把握するよう要求しました(2021年12月22日、年末の農水委閉会中審査)。
 政府はぎょさいについて、漁業者ごとの加入形態がまちまちで集計が複雑であることを理由に、経営体ごとの加入率を把握していません。田村議員は、政府の唯一の経営体に対する直接支援政策であるにもかかわらず、金額ベースでしか把握していないことを問題視し、加入率を把握するよう要求しており、水産庁はこれに応じて調査中です。
 ぎょさいの問題は加入率の低さだけではありません。加入していても救済に不足する事態も生まれています。有明海・諫早湾では、諫早湾干拓事業による赤潮の発生によって、ノリ養殖が極端な不作に見舞われています。田村議員は、ノリ網が黄色く色落ちし、現地では「金髪」と呼ばれる「危機的な状況になっている」と強調、有明特措法22条による救済を要求しました。政府は法律を無視し「共済で対応している」と強弁しましたが、田村議員は「共済だけでは、販売額が年々下がれば過去の実績の平均を基準とする共済金も年々下がってしまう」と指摘し、損失の補填を強く要求しました。(12月22日、3月17日)
 紙議員は、北海道における赤潮の発生について、カムチャツカ半島の沿岸で赤潮発生させたプランクトンが親潮に乗って南下することがわかっていたのに、観測体制や初動の対応が遅かったことを批判。被害が魚類だけでなくウニやヒトデ、カニ、アザラシなどに及んでいるとし、北海道まかせにせず、国が直接モニタリング調査を行うべきだと主張しました。またウニ漁は稚ウニをまいて漁獲するまで4年かかるとして、支援の継続を要求。さらに多くの赤潮被害が出た日高地方が支援地域に入っていないため、支援策を示すよう求めました。(3月8日、16日)

■ロシア経済制裁で影響を受ける水産業支援を

 田村議員は、強力な経済制裁はロシアを世界経済と国際金融システムから孤立させる重要な手段だとしつつ、食料品、肥料などの国際価格高騰に拍車をかけ、コロナ禍で傷んだ世界経済を不安定化させる危険もはらんでいると強調。経済制裁で追加されるロシアの最恵国待遇撤回で、日本の水産業への影響が考えられると指摘。カニ、ウニはロシアからの輸入が5割を占め、追加関税は36億円との試算があるとして、国内の水産業への支援策を要求しました。(4月13日、財政金融委員会)

■漁業資源管理とMSYについて

 紙議員は水産庁の漁業資源管理政策の基礎となるMSY理論について質問しました。
 政府は、欧米で参照されているMSY理論を軸にした「科学的資源管理」を基本に、水産資源の数量管理(IQなど)を持ち込んでいます。しかし、MSY理論は、漁獲量と資源量の作用・反作用のモデルとしてとらえることに基礎があり、海をある種の隔離された水槽として見立てて考えるもので、生物をとらえる学問としてはあまりに非弁証法的です。
 水産庁は海洋環境の変化もパラメータとして考慮するとしますが、多様かつ複雑な海洋環境はいかにスーパーコンピューターを使って沢山パラメータを入力しても把握しきれないし、資源の実像からは乖離しています。ただこのMSY理論は、国際的な資源管理の議論では一般化されてしまっており、水産庁にとっても、地球温暖化や辺野古基地建設や有明の干拓事業、沿岸・河川の護岸、海砂利採取などの大規模な人為的環境改変の影響を考慮する必要がなく、全て漁業者の漁獲に責任を帰するには好都合な理論になっています。MSY理論への批判を背景にして、資源の問題を漁業者の「乱獲」のみに一義的に帰するのではなく、様々な対策、特に自然に対する無法な改変・開発を真摯に反省し今からでも改めること、回復に向けた本格的で大規模な取り組みを図ること、資源の客観的な状態を科学的につかんで、漁業者と科学者、役所が管理や漁獲のあり方を真剣に議論をする仕組みを設けることが必要です。
 紙議員は水産庁のMSY理論は気候変動要因をパラメータとして採用していない点を指摘。スケソウダラ、ホッケ、クロマグロの資源管理について、現場とかけ離れた結論に現場の漁業者・水産関係者から疑問や怒りが呈されていると強調しました。さらに、今年が「規模は小さいが、価値は大きい」のスローガンを掲げた国連「国際小規模漁業年」だとして、政府が進める漁業の成長産業化ではなく、沿岸漁業を主人公にした「つくり育てる漁業」が大事だと主張しました。(4月5日)

■林業の危機と対策、林業と災害について

 紙議員は、ロシアによる日本への丸太やチップ、合板用木材の輸出禁止措置で、昨年からの木材価格高騰に輪をかけている事態は中小工務店への影響は避けられないとし、「輸出先国の影響に左右される輸入依存から国産材への切り替えが必要だ」と訴えました。また、林業従事者が1980年の14万6千人から2015年の4万5千人まで減少し、日給・出来高制であるため40代で月収20万円以下という実態を示し、通年雇用化と月給制の導入促進、国産材の利用定着、伐後の再造林の実施、持続可能な山づくりへの取り組みを求めました。(4月26日)
 田村議員は、2021年に自伐型林業推進協会(自伐協)が、土砂災害の被災地・宮城県丸森町と熊本県球磨川流域を対象に行った「災害と林業―土石流被害と林業の関係性の調査報告」を紹介し、「どちらの地域でも、未整備林や放置林が原因の土砂崩落はほんの数%で、皆伐(全面伐採)や作業道などの林業起因が9割以上だった」と指摘しました。金子農相は「粗雑な集材路の周辺で林地崩壊が多く確認されている」と認めました。
 田村議員は、国の「森林環境保全直接支援事業」の要件が緩和され、自伐協が推進する幅2メートル程度の狭い作業道が支援を受けやすくなったことに言及し、「減災型作業道」としてさらに補助を充実するよう要求しました。(5月11日)

■横行する森林泥棒、取り締まりを

 田村議員が再三取り上げてきた宮崎の「盗伐(=森林泥棒)」が、いまだに頻発しています。宮崎県えびの市では、樹齢100年以上のヒノキを200本以上勝手に伐採され、跡地を無断で畑にされてニンニク・牧草を栽培までしていたという事案を告発。「こんな無法が横行するのは、摘発されないからだ」と強調し、改めて対策を要求しました。林野庁は伐採届の改善や衛星画像を使った確認と取り締まりを挙げました。
 田村議員は、森林の無断伐採を防ぐために宮崎県、熊本県、大分県、鹿児島県の四県が悪質な業者をリスト化して情報共有する取り組みを始めたことを指摘し、警察庁に対し、こうした県と連携を取って、取締りを強化するよう要求しました。(5月11日)

■日本の枯葉剤、早急に撤去を

 田村議員は、2018年に猛毒の枯葉剤の成分「2・4・5T剤」(2・4・5トリクロロフェノキシ酢酸)が全国の山林に埋まっている問題を取り上げ、地震や豪雨災害による流出の危険性を指摘。抜本的対策を要求しました。林野庁は「地中で保全管理することが適切」として拒否しましたが、20年の熊本豪雨の際、熊本県芦北町の埋設地近くで土砂崩れが発生し田村議員の指摘が差し迫ったリスクであることが明らかになり、処理に向けて動き出すことになりました。
 田村議員は、300キロを上限に土と混ぜてコンクリートに練り込むよう指示した1971年の林野庁通達を守らず埋設してしまった箇所が全国46カ所の埋設地のうち20カ所にも上るとし、「中には、掘った穴に粒剤のまま流し込み土をかぶせコンクリートでふたをしただけという所もある」として、災害による同剤の流出の懸念が指摘されていると述べました。
 また福岡県那珂川市や熊本県宇土市など、流出を不安視する自治体が完全撤去を長年にわたり要望していることを指摘。早急な撤去を求めるとともに、地元自治体に対し撤去の方法、技術的知見の確立、着手に至るスケジュール等の丁寧な説明を要求しました。(2月17日・予算委員会分科会、4月27日)

■桃の輸入解禁するな

 紙議員は、米国政府から要求された桃の輸入解禁について、桃に寄生し果実の中身を食べる「コドリンガ」の侵入や、ポストハーベストによる健康被害の恐れがあり、唯々諾々と解禁するべきではないと強く主張しました。また、ジャガイモシロシストセンチュウの侵入経路が米国からの可能性があることを強調。外国由来の有害病害虫が増えており、グローバル化、自由化で農産物の輸入増と関係があると指摘しました。(4月7日)