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食料・農業・農村基本法改正案 田村貴昭 衆院本会議質問

3月26日 日本共産党 田村貴昭 

■疲弊する農村 失政の責任

 私は日本共産党を代表して、食料・農業・農村基本法改正案に対する質疑を行います。
  前回の基本法改正から25年、農村は疲弊の一途をたどってきました。農業で生計が成り立たず、農家は半減し、福岡県や愛知県に匹敵する面積の農地が失われました。地域から学校がなくなり、商店がなくなり、ATMがなくなり、ガソリンスタンドがなくなって、いまや農村生活の基盤が失われています。このまま推移すれば、早晩、農村から農家がいなくなり、米も野菜も生産できなくなります。
 なぜこのような事態となっているのか。何が問題で、どこに責任があるのか。総理の答弁を求めます。

 私は、その責任は歴代の自民党の農政にあると考えます。
 1961年の旧農業基本法以来、自民党政権は麦・飼料・大豆の国内生産を放棄し、米国の余剰農産物をすすんで受け入れてきました。その後も牛肉・オレンジの自由化、WTO農業協定、TPP、日米FTA、日欧EPAなど、次々に輸入自由化を行い、そのたびに安い農作物が大量に流入してきました。
 その結果、1965年に73%だった日本の食料自給率はいまや38%に落ち込んでいます。自民党農政の責任は極めて重大です。

■食料自給率を完全に投げ出し

 にもかかわらず、総理は施政方針演説で、食料自給率に一言も触れなかったのはなぜですか。
 それどころか本法案では、現行法の「食料自給率の目標」を、「食料安全保障の動向に関する事項」に変えてしまい、「安定的な輸入の確保」などという条文を新設しています。
 自民党政権は、基本法に基づく食料自給率目標を、一度も達成したことがありません。食料自給率の向上を最大の目標から外したのは、完全に投げ出したということではありませんか。
 重大なことは、唯一残った米すら、国内需要の1割を超える77万㌧ものミニマムアクセス米を押し付けられ、巨額の税金を投入して輸入し続けていることです。国内の米農家が低米価で苦しんでいるさなかの2022年度も、674億円もの税金を投入して米国の農家を助けました。総理、助ける方向、お金を出す方向が間違っているのではないですか。

■自給率が上がらないのは、農業で食えないからだ

 「安全でおいしい食料を日本の大地から」。子どもたちに日本の食文化を伝えたい、おいしい国産のものを食べてほしい。これは農家だけでなく、多くの国民の願いです。そのためには、農家が農業で暮らしていける収入がなくてはなりません。
 しかし、2022年の畑作経営の平均年収は、補助金を入れてもわずか222万円です。稲作経営の年間収入は、なんと1万円でした。酪農に至っては年間49万円の赤字となり、急速に離農が進んでいます。
 検証部会で農業現場の委員からは「若い人がなぜ定着しないかといえば、(農業で)食えないからだ」という的確な指摘がありました。この事態の抜本的な改善なくして農業と農村の再生はありえません。
 本法案では、生産コストを販売価格に転嫁し、「合理的な価格」にするとしていますが、それはコメだったらいくらですか。収入1万円の農家の作ったお米はいくらが「合理的」なのですか。実質賃金が下がり続けているもとで、消費者が買えない金額になったらどうするのですか。それを複雑多岐にわたる販売先にどうやって受け入れさせるのですか。

■農家が農村で暮らしていける所得を保障すべき

 実効性のある価格転嫁は大事ですが、それだけでは不十分です。欧米では当たり前になっている、価格保障や所得補償を抜本的に充実し、政府の責務として基本法に明記すべきです。
 日本共産党は、食料自給率を本気で向上させることが必要と考えます。
そのためには、「競争力強化」の名のもとに農業の大規模化を図り、耕す人がいなくなった農地を集積させようとする政策を続けていては実現できません。規模の大小や家族・法人などの経営形態を問わず、自給的農家も含め、農業に関わる多様な人々をすべて担い手として位置づけ、農村で暮らしていける所得を国が保障することが絶対に必要です。答弁を求めます。
 求められるのは、農業予算の拡充です。
 日本の農業予算は、この10年間2兆円あまりと横ばいを続けていますが、いっぽう軍事費は5兆円から6兆円、8兆円と年々増え続け、5年間で43兆円もつぎ込もうとしています。国民の食料のためにお金をかけることこそ必要ではないですか。大軍拡をやめ、農業予算を抜本的に拡充することを求めます。

■戦時食料法 今必要なことか

 本法案と同時に提出された、食料供給困難事態対策法案は、有事の際に農家に芋などを作れと罰則付きで命令するという異常なものであり、1941年、泥沼の侵略戦争に突き進む中で作られた、国家総動員法に基づく農地作付統制令・臨時農地等管理令に瓜二つです。
 農産物を大量輸入し、離農と耕作放棄地の増大を放置しておきながら、今、戦争のための準備が必要というのですか。こんな「離農促進法案」、「戦時食糧法」は撤回すべきです。
 以上、質問を終わります。

■総理答弁

ご質問にお答えいたします。
食料・農業・農村基本法制定後の農村人口の減少要因等についてお尋ねがありました。農村の人口減少は、以前は都市への人口流出が主要因だったものの、近年は、出生減、そして死亡増に伴う自然減が主要因となっています。
国内の人口が減少を続ける中で、農村人口の減少も避け難い状況にありますが、こうした中にあっても、農業を下支えする農村コミュニティーの基盤を維持することが重要です。このため、改正案では、基本理念である農村の振興において地域社会の維持を位置づけた上で、農地保全に資する共同活動、観光、食品加工など、地域資源を活用した事業の創出による関係人口の増加等を促し、農村地域の活性化を図ってまいります。
食料自給率の目標と改正案における食料自給率の取扱いについてお尋ねがありました。施政方針演説では、農政の抜本的な見直しや基本法の改正について包括的に述べたところであり、食料自給率にあえて触れていないというものではなく、同演説でも言及した食料安全保障の強化の観点から、食料自給率向上に資する取組は重要です。さらに、我が国の食料安全保障リスクが高まる中、生産資材の安定供給等、食料自給率という単独の目標では評価できない課題もあります。このため、改正案では、食料自給率に加え、その他の食料安全保障の確保に資する事項の目標を位置づけたところであり、食料自給率の重要性が変わるものではないと考えております。
ミニマムアクセス米についてお尋ねがありました。ミニマムアクセス米については、我が国の国産米の保護措置を含む全体のパッケージであるガット・ウルグアイ・ラウンド合意を受けて、ミニマムアクセス米が国産米の需給に影響を与えないよう、国家貿易で管理をしているところです。これに伴う財政負担は売買差損や管理経費の増により増加をいたしますが、財政負担をできる限り削減するため、新たな仕向け先の開拓や管理経費等の削減に努めつつ、この枠組みを維持してまいります。
農家の収入と農業、農村の再生についてお尋ねがありました。将来にわたって食料の安定供給を確保するためには、農業が持続的に発展し、収益性を確保していくことが重要です。このため、改正基本法に基づき、生産性向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら、農業所得の向上と農村地域の関連所得の向上を図り、農業、農村の活性化につなげてまいります。なお、御指摘の農家の収入については、例えば稲作経営の年間収入は、自家消費を目的としたり農外収入を主としたりしている小規模農家を含めた全ての水田作経営体の平均値であり、農業で生計を立てていく水田作経営体の所得に着目をしていく必要があると考えております。
米の合理的な価格、価格保障及び所得補償についてお尋ねがありました。
米の価格は、民間取引において、その時々の需給のバランスによって決定されているものであり、政府として、適正な価格水準について申し上げることは適当ではないと考えております。その上で、適正な価格形成の仕組みづくりに向けて、米も含めて実態把握のための調査を行い、その結果も踏まえて検討を進めてまいります。御指摘の価格保障や所得補償については、過去の戸別所得補償制度を見ても、農地の集積、集約化等が進まず、生産性の向上が阻害されるおそれがあるほか、一般的に、消費が減少している品目の生産が維持され、需給バランスが崩れる、また、補償を織り込んで生産者の取引価格が低く抑えられる等の懸念が指摘をされています。このため、こうした手法を用いるのではなく、生産性向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら所得の向上を図ることとしており、こうした方向性を改正基本法に位置づけております。
農業に関わる多様な人々の位置づけと支援策についてお尋ねがありました。
農業経営体の減少が今後も見込まれる中、将来にわたり食料を安定供給できる農業の確立が必要です。このため、引き続き、規模の大小や経営形態にかかわらず、農業で生計を立て、効率的かつ安定的な農業経営を目指す方々を担い手として、生産性向上と付加価値向上を後押しし、その経営の安定、発展を後押ししてまいります。あわせて、担い手以外の多様な経営体についても、農地の保全等の役割に鑑み、地域の共同活動への支援等を行い、農業生産の基盤である農地の確保を図ってまいります。
農業予算の拡充についてお尋ねがありました。
我が国の安全保障環境が厳しい状況にある中、国民の命と平和な暮らしを守るために、防衛力の抜本的な強化が必要となっています。同時に、我々が生きていく上で必要な食料の安定供給を担う農林水産業の活性化も極めて重要です。こうした観点から、御審議いただいている令和六年度予算において、防衛力の抜本的強化に取り組むとともに、農林水産予算において、食料安全保障の強化など現下の政策課題に重点的に対応するため、昨年度を上回る予算を計上しております。また、緊急に取り組む課題に対しては、令和五年度補正予算により前倒しで対応しているところであり、こうした予算を活用し、実践的な農林水産政策を展開してまいります。
食料供給困難事態対策法案についてお尋ねがありました。
本法案は、我が国の食料安全保障リスクが高まる中、食料供給が減少し、国民生活等への影響が生じる事態に備え、影響の程度に応じて早期から必要な措置を実施できるようにするためのものであり、有事の際に農家に罰則つきで作付を命令するものではありません。なお、本法案で規定されている罰則は、国民生活等に実体上の支障が生じている事態において、法目的達成のために、必要最小限の措置として計画の届出自体を担保するためのものであり、事業者の方々に御理解をいただきたいと考えております。