すべてのPMが読むべき重要参考書 | 「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン 実績・省察・評価・総括」
こんにちは
イデアレコードの左川です。
twitterなどで話題となっていた「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン 実績・省察・評価・総括」を本屋で見かけて即買いしました。軽く読み始めたら、あまりの面白さに一気に読んでしまうとともに、ビジネスにおけるプロジェクトに関わる人は読んだ方が良いと思えるものでした。
はじめに
「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン」とは興行的にも映画の内容的にも失敗を許されないプロジェクトの裏側をレポート形式でまとめたものである。コロナ禍で制作をしつつ、制約が多い中での公開でファンを満足させつつ、いかに興行収入100億円を目指すのか、そして庵野監督自体が納得できるものを生み出せるか、そのプロジェクト自体は前例がなくリスクも高く難易度の高いものであった。
そして、プロジェクトは成功に終わった。
本書はそのプロジェクトの過程と振り返りを詳細にまとめた貴重なものである。
プロジェクトを進めるという点で監督に近いのはプロジェクトマネージャー(以下PM)であると考える。
PMはプロジェクトをゴールに導くのが仕事である。そのため「品質」や「コスト」「納期」といったプロジェクトの目的を達成するために必要な判断をし、様々なアクションを遂行していく。もちろんプロジェクトの規模や内容によってPMの業務範囲が変わることも多いが、プロジェクトの責任を負うという点では監督と同じと言っても良いであろう。
なお、本書にはPMにとって有益な情報が詰まっているが、ここでは以下の2点に絞って記載したいと思う。
うまくいかなかったところはPMのせい
これはプロジェクトにおいても同様である。
大前提としてPMだけではプロジェクトは成り立たない。様々な職種や協力会社のメンバーがいないと何も進めることができない。判断を下すということにおいて、監督とPMは基本的には同じである(もちろんプロジェクトの体制次第によっては異なる場合があるが)。
プロジェクトの成功可否はPMの動き方に因る。もちろん自分で考えて動けるスタッフがいると、PMが何もしなくても成功してしまうことも少なくない。だがプロジェクトが失敗する場合は、必ずと言っていいほどPMの問題であり、責任である。なぜならプロジェクトの進行上の課題や品質に関する問題があった場合、それを検知し対処していくのはPMの役目だからである。
PMがプロジェクトに対する責任をいかに自覚できるか、すべてはそこから始まる。
コミュニケーションは丁寧に
メディアによるイメージだと庵野監督は禅問答をひたすら繰り返している偏屈のような感じになっているが、フィードバックや進行はかなり丁寧である。
戻しについては非常に具体的かつ丁寧である。文章ベースで細かく戻しをしているが、必要に応じて“「対面口頭」で説明します”“○○に判断を貰って下さい。”と使い分けている。そして、フィードバックが遅くなった場合、きちんと冒頭に"済みません。遅くなりました。"から始めている。
これはプロジェクトにおいても同様である。
どんなプロジェクトにおいても指示を明確に出すことは鉄則である。内容が曖昧だったり、解釈が人によって分かれるような書き方だったりすると手戻りが発生してしまいがちで、そうすると工数が増えるのはもちろんのことメンバーのヘイトも溜まってしまう。そのため対面での打ち合わせをするのも有効だし、仮に他の人に確認してもらう場合も誰かを明確にするのも重要だ。また戻しのタイミングや回数などによって言い方を気をつけないとメンバーのモチベーションを不用意に落としてしまう。
PMは自分および他のメンバーが丁寧なコミュニケーションを行えるようにしていくことが必要だ。
おわりに
上記の示唆はあくまで一例である。
「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン」の中には品質やスケジュール、コミュニケーション、評価など参考になるようなエッセンスが溢れている。すべてのPMやプロジェクトに関わる人に読んで欲しい。きっとそれぞれの気づきがあるはずである。もちろん「シン・エヴァンゲリオン」の裏側を知るだけでも面白いのだが。
興味のある方は是非読んでみてください!