外食業界に携わる身としては耳が痛い話だが、逃げてはダメだ… | 「お口に合いませんでした」(著者:オルタナ旧市街)
こんにちは
イデア・レコードの左川です。
積ん読が増える一方なのに本屋で見かけて思わず買ってしまったのが「お口に合いませんでした」。"食事はいつもおいしくて満たされて幸せ、なんてやっぱり嘘だった 高瀬隼子"という衝撃的な推薦文と"憂鬱グルメ小説"というワードは外食業界に携わる身としては放ってはおけなかった。
まず最初に言えるのは、登場するエピソードは近年の外食業界の特徴を捉えたものであるということだ。
お客様が店内で飲食をすることをせずにデリバリーで料理を提供するお店を称する「ゴースト・レストラン」はコロナを経て一気に拡大をしたものであるし、デリバリーで高い値段を出して購入した商品が美味しくなかったというのはSNSでよく見かけられるし、"完全個室創作和食バル★肉寿司食べ放題"といった店名はいかにもありそうな名前と特徴だったりする。
だが、話の内容自体はかなり際どく、耳が痛いのは事実である。
食事というものは舌や胃が必ずしも満たされるものとは限らない。まして心を満たすことはもっと難しい。デリバリーなど人との接点が薄くなった料理というのは、味が良くなければ食べること自体が苦痛になってしまうことも少なくない。そんな外食業界としてはあまり触れて欲しくない領域を浮き彫りにしつつ、それを物語として昇華したのが本作である。飲食が好きな方や外食業界関連の方々にオススメである。
最初は憂鬱かもしれない。
だが読み進めていくとそこには完全な闇だけが拡がっているわけではなく、微かな光が見える。それは自分が飲食が好きという想いから生まれたものかもしれない。が、それは信じるに値する食への希望となるに違いないはずだ。