不思議の国のアリスのような驚きに満ちた「食」の空間(出張食べ歩記@福岡)
今野富康です。
私はセールスライターで、売るための文章を書くプロです。
でも、料理やレストランの評論家ではない。
でも、、、語らずにいられない。
そんな「食」が存在するのです。
出される料理、出される料理、全てが予想を裏切ってくる。しかも、超絶美味しい。
私が食べた食事の中では、これまででダントツの美味しさでした。
麻婆豆腐・・・・?
麻婆豆腐ってどんなイメージですか?
大抵は、茶色い、豚の挽肉が入った、にんにく・唐辛子・豆チ醤が効いた濃い味のややこってり目の一皿をイメージすると思います。
こちらのお店の麻婆豆腐はこちら。
色は緑、味わいは淡麗、切れ味鋭い青唐辛子の味わいと、豊かな奥行きの出汁が効いた麻婆豆腐です。
お肉は豚ひき肉の代わりに牛頬肉。頬肉は緑の餡に沈んでいる豆腐と口の中でとろけるほどに柔らかく仕立てられています。
メニューはおまかせコースのみで、12〜16品出てくるのですがすべての料理でご紹介した麻婆豆腐のような「驚き」があります。
冒頭の写真は鯵の握り。なんですが、、、〆方から、シャリ、ネタの上の薬味まですべて「裏切られ」ました、笑
もちろん、いい意味でです。
「わー、そんなパターンがあるんだ!」という感じです。美味しいのはもちろんですが、それ以上に驚きや発見がある。
目で楽しむ。触って楽しむ。
レストランですから、料理を味わうのは当たり前。
料理を目で楽しむのも、それほど珍しくはない。
でも、器まで楽しむパターンはあまりない気がします。
料理は「一皿」という単位で表現されますよね。
つまりは、食べ物と器は本来セットであるはず。
でも、案外、そうなっていないお店のほうが多い気がします。もちろん、良い器は使っているんですが、すべての料理にフィットしたデザイン、質感の器をチョイスしているわけではないと思う。
たとえば、いいお店でも器は白で統一されていたりしますよね。
でも、このお店はこんな感じ。
器もシェフが一つ一つ、いろいろなところに出向いて選んでこられているそうです。
料理と器の組み合わせにもこだわりが詰まっています。
次はどんな一皿が来るんだろうと楽しくなってワクワクしているうちにあっという間に3時間も経っていました。
そういう新鮮な驚きとワクワクが12〜16皿続きます。消化試合みたいな皿が一つもないのは、驚きです。一皿一皿に心地よい緊張感がある。
すごく美味しいお店でも1つくらいは「ふつう」のものはあるものですが、このお店はそれがない。
美味しく、楽しく、リラックスしながら張り詰める不思議
こちらのお店、ニシムラタカヒト・ラ・キュイジーヌ・クリアティビテというお店です。
福岡市の西鉄・平尾駅からちょっと歩いた閑静な住宅街にあります。古民家を改装したレストランです。
今回は個室に通していただいたんですが、そこで感じた印象は茶室。
一皿一皿に、お客さんが向き合えるように設えられています。かといって、堅苦しいわけでもなく、楽しくリラックスして食事ができるように設えられています。
お料理も旬やその時入った良い食材を中心に、日々組み立てているので同じ料理がいつでも食べられるわけではない。一期一会という思想も茶の湯に通じる感じがします。
一期一会ゆえに、このお店にはメニューが一切ありません。
さらに、面白いのはテーブルの上の一皿一皿がことごとく予想を裏切ってくるところです。一つとして予想通りではない、『不思議の国のアリス』のアリスがうさぎの穴に飛び込んでから経験することに似ています。
不思議の国では、いろいろなキャラクターが読み手を驚かせたり面白がらせたりしますよね。
トランプが動き出したり、猫が「笑い」だけ残して消えてしまったり。
クリアティビテでは、食材の食い合わせや味わいで、驚いたり、面白さを感じたりする。コース全体が一つの物語のような感じです。
私は高級料理を食べ慣れた人間ではないですが、面白いものを嗅ぎつける嗅覚はある方だと思います。あと数年したら、予約が取れないレストランになるんじゃないかなあ・・・。
そんな気がします。
ニシムラタカヒト・ラ・キュイジーヌ・クリアティビテの詳細はこちら。