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神話の地ギリシャ旅行記(9)冥府行


北西の地

9月6日。壮麗なデルフォイに別れを告げて、ギリシャ北西部へと向かう。一般的なツアーでは東寄りのルートでメテオラを観光するものが多いので、こちらはあまり訪れない地域だ。       
本日の予定はイオニア海に注ぐアケローン川沿いにある「死霊神託所」の遺跡と、アケローン川クルーズ。

アケローン川はギリシャ神話では「冥府の川」とされている。
私はシシン先生の講座で聞くまで、アケローンという川が実在することを知らなかった。しかもこの川、神話にあやかってそう名付けられたのではなく、この川があるからそのような神話ができたのだという。

そう、私たちは「本物のアケローン川」に行くのだ。

コリントス湾岸を西に進む。海沿いの道は緑が濃い。対岸のペロポネソス半島に最接近する箇所には橋がかけられているが、それを背にピンドス山脈の西側を北上する。

ドライブインにて

長距離移動のため、ドライブインで長めの休憩があった。
売店に絵本が置いてあるのを見つける。「トロイア戦争」「オデュッセイア」「古代ギリシャ人」の3冊を購入。英語版などもあったが、せっかくなのでギリシャ語版にする。1冊7.99€

もちろん読めないが、味のある絵柄を見ているだけで楽しい。

このドライブインにはギリシャ風のサンダルも置いてあった。サンダルも持ってこなかったのでどこかで買いたいと思っていたが、選んだりあわせたりするのが大変そうで、後回しにした。この選択が最後に大きく響いてくるのだが、この時は知る由もない。

バスはアイトリア地方を北へ進む。アイトリアは猪狩りの神話で有名なカリュドーンのある地方。トロイア戦争にはディオメデスの従兄トアスが40席の船を率いて参加している。この西の海にはオデュッセウスの焦がれた故郷、イタケの島がある。

車窓から見えた海。場所は定かでない。

ネクロマティオン(死霊神託所)

古代ギリシャの歴史家ヘロドトスによると、アケローン河畔にはギリシャでも数少ないハデスの神殿があり、死者と言葉を交わすことができる「死霊神託所」だったという。

中世に建てられたキリスト教(ギリシャ正教)教会がちょうどそのような場所にあって、調べてみたら地下に奇妙な古代遺跡があった。で、これがヘロドトスが書いていた死霊神託所ではないかと考えられている。

古代の石垣や礎石が並ぶ。地上部の建物は後世の物

死者との会話を望むものは1か月のお籠りの上、迷路のような小部屋を通って主室に入る。そこでは神官が「宙に浮かぶ亡霊」として登場し、会話を行ったという。主室の地下には神官しか入れない部屋があって、何らかの演出が行われていたと考えられている。

地下室。天井はアーチだが、床は凹凸がひどくて危険。

だが、本当にここが死霊神託所だった、という確証は一つもない。
この遺跡は農家で、襲撃に備えた堅牢なつくりだったという説もあるという。それも含めて、ミステリアスな遺跡である。



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