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神話の地ギリシャ旅行記(15)アルゴス


「馬を養う」アルゴス

第7日目(9/9)、エピダウロスの次は西へ戻り、ミュケーナイの南西にあるポリス、アルゴスへと向かう。
アルゴスはアルゴス平野の中心部にある。叙事詩で「馬を養う」と称されるように平地が広がり、ミュケーナイやテュリンスと併せて古代ミケーネ文明の中心地だった。ホメロスの「イリアス」ではしばしばギリシャ軍が「アルゴス勢」と呼ばれている。
現在も人口2.5万人の市で、町の西側にアクロポリスがあり、遺跡は街中に散在している。

アルゴスにゆかりのある英雄は数多く、その神話はとても挙げきれない。
メデューサ退治のペルセウス、その孫の大英雄ヘラクレス、テーバイ攻めの七将、七将の子供たち(エピゴノイ)。トロイア戦争の英雄ディオメデス・ステネロスはエピゴノイのメンバーでもある。

円形劇場とアゴラ

アクロポリスは中世にこの地を治めたベネツィアが砦を造り、古代の面影はないようだが、その裾野にはエピダウロスよりさらに大きい円形劇場と、広いアゴラの遺跡がある。

古い石垣の間を進むと、正面にアルゴスの円形劇場が威容を現す。

円形劇場は古代ギリシャ人の生活に欠かせないものだったのだろう。今回のツアーで訪れたほとんどの遺跡に大変立派な円形劇場があったし、昨年トルコ旅行で訪れたギリシャ植民市にもそれぞれ円形劇場が作られていた。

ここの円形劇場は古代アルゴスの繁栄をほうふつとさせる。
アルゴスゆかりの英雄たちを題材にした詩や悲劇が演じられ、市民や旅人たちが思い思いに楽しんでいたのだろう。

平土間中央を示す石に立ち、声を出してみれば、きれいな反響が返ってくる。
ただ、上部左右に繁った樹木が音を吸収しているのか、エピダウロスほどではない。

アポロンとアテナの共同神託所

アゴラの中を歩き回ると、とげのついた草の実が衣服に着き、靴の裏側にめり込む。ギリシャの「フリガナ」と呼ばれる草原には、こうした草が茂っている。その力で、乾燥した気候の中を生き延びてきたのだろう。

アクロポリス北東部の遺跡。

アクロポリス北東部にはアポロンとアテナの共同神託所があったという。
一般に何かを祈る際には、その権能を持つ神に祈るのが通例だが、ホメロスでは重要なことを祈る際に、ゼウスとアポロンとアテナに祈りをささげる記述がみられる。
最高神ゼウスは無論として、アポロンとアテナが強い力を持つと考えられていたのだろう。それにもかかわらず、この2神が同じ場所に祀られているのは珍しい。
アルゴスの数多き英雄たちは、それぞれどの神に加護を祈ったのだろうか。
そんなことを思いながら、遺跡の中をさまよい歩いた。



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