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回帰分析とは何か、なぜマーケティングで使えるのか


回帰分析は、統計手法の1つです。統計とは一見ランダムにみえる数値の集合に意味を見出す手法で、統計をビジネスに使えばエビデンス(科学的根拠)のある仕事をすることができるでしょう。

統計はマーケティングとの相性がよく、したがって回帰分析もマーケティングで「使えます」。

 

マーケターはマーケティング業務において、成功することも失敗することもあると思います。ではマーケティングが成功したり失敗したりしたとき、何が起きているのでしょうか。

マーケターが成功したマーケティングを振り返ると、「あれがよかった、それもよかった」と思い当たるはずです。

 

成功という結果と、その成功に貢献した「あれ」や「それ」といった要因の関係を明らかにするのが回帰分析です。

マーケターが回帰分析を実施すると、要因と結果の関係がわかります。そして成功した要因をつかめばマーケティングの成功確率を向上させられるかもしれません。

 

そもそも回帰分析とは

 

統計は数学なので、回帰分析も数値を扱います。結果を数値にしたものを被説明変数といい、要因を数値化したものを説明変数といいます。

先ほどの説明を合わせると、以下のようになります。

 

●成功=結果=結果を数値化したもの=被説明変数

●成功に貢献した「あれ」や「それ」=結果を導く要因=要因を数値化したもの=説明変数

 

回帰分析では、被説明変数(結果)と説明変数(要因)には関係があると考えて、その関係性を数学的に探ります。

 

単回帰と重回帰

 

1つの説明変数が1つの被説明変数を導くとき、それを分析することを単回帰分析といいます。

例えば、九九を覚えるという結果(被説明変数)は、口に出して言ってみた回数にかなり大きな影響を受けるので、要素(説明変数)が1つしかないと想定して単回帰分析で分析してもよさそうです。

 

しかしマーケターは「これでは物足らない」と感じるはずです。なぜならビジネスの現象がたった1つの要因で起きることなどないからです。

そこで重回帰分析が重要になります。

重回帰分析では、1つの被説明変数は複数の説明変数によって導かれると考えます。

 

ここで数式を使って説明します。

yは被説明変数、xは説明変数です。aは定数、bは係数で、いずれも固定した数値です。

 

●単回帰分析の数式:y=a+bx

●重回帰分析の数式:y=a+b1x1 + b2x2 + b3x3 + … + bnxn

 

単回帰分析の数式をみると、被説明変数yの数値が、xが変化することによって変化することがわかります。aとbは固定された数値なので、yの変動要因はxだけであることがわかります。

 

そして重回帰分析の数式をみると、yが、x1やx2、x3…xnの変化によって目まぐるしく変化することがわかります。

つまり、n個あるすべてのxが増加したらyも増加しますが、x1が増加したもののx2は減り、x3はまた増えた、といったことが起きると、簡単にはyの増減は決まりません。

しかし次のことがわかります。

 

●数式(y=a+b1x1 + b2x2 + b3x3 + … + bnxn)が確立されていれば、つまりaやb1、b2、b3…bnの数値が判明していれば、x1、x2、x3…xnがどのように変化しても必ずyの値は求められる

 

これは回帰分析においてとても重要なことです。

 

回帰分析をマーケティングで使う目的


先ほど「数式(y=a+b1x1 + b2x2 + b3x3 + … + bnxn)が確立されると、x1、x2、x3…xnがどのように変化しても必ずyの値は求められる」と紹介しました。これこそ、回帰分析をマーケティングで使う目的になります。

 

yは、マーケティングの成功または失敗です。yは数値でなければならないので、例えば、あるマーケティング・キャンペーンが成功して売上高が20%増えたとします。このとき「売上高20%増」がyになります。

 

キャンペーンを実施したことで売上高が20%も上がったら、この業務のリーダーを務めたマーケターはさぞ嬉しいはずです。

しかし喜んで終わってしまっては次につながりません。

被説明変数y(売上高20%増)がどのような説明変数x1、x2、x3…xnによって成し遂げられたのかをみつければ、次のキャンペーンも成功できるかもしれません。

回帰分析をマーケティングで使う目的は、成功確率を上げるためです。

 

マーケティングで回帰分析を活用する方法

 

マーケティングで回帰分析を活用するには、次のステップで進めるとよいでしょう。

 

■マーケティングにおける回帰分析の活用法

 

●ステップ1:結果を定める

例えば、チョコチップアイスの売上高が20%増えた

 

●ステップ2:結果に影響を与えた要因を探す

例えば、気温、来店客の男女比、来店客の平均年齢

 

●ステップ3:要因の影響度を考える

例えば、気温の影響度はとても大きい、来店客の男女比の影響度は小さい、など

 

上記の準備が整えば、次のような数式をつくることができます。

 

■チョコチップアイスの売上増の回帰分析の数式

チョコチップアイスの売上高=a+b1×気温+b2×女性の割合+b3×平均年齢

 

そしてステップ4で実際に予想します。

 

●ステップ4:回帰分析の計算式をつくって予想に使う

例えば、来週の平均気温は25度になる予想で、若い女性の来店客が増えそうだから、チョコチップアイスの売上高は今週の3%増になるだろう

 

データを多く取る

 

回帰分析を1回実施しただけでは、正しいa、b1、b2、b3は求まりません。2、3回の調査でも正確な数値は出ないでしょう。

半年、1年、5年とデータを取っていくことで、a、b1、b2、b3はより正しい数値になっていきます。

 

長期間にわたって気温と男女比と平均年齢のデータを取ることはマーケターにとって手間がかかる作業ですが、しかし確度が高いa、b1、b2、b3が求められたときのことを想像してみてください。

予想気温と予想男女比と予想平均年齢がわかるだけで、チョコチップアイスの売上高の予想ができるようになります。売上高が正確に予想できれば、仕入不足も過度な仕入れも回避でき効率よく売上と利益を上げることができます。

 

回帰分析をマーケティングで使うデメリット

 

ここまで回帰分析の「すごさ」を紹介しましたが、注意しなければならないこともあります。

それは説明変数(結果に影響する要因、xのこと)を正確に探さないと、正しい結果(被説明変数)が得られない、ということです。

もちろん定数aや係数bも正しい数値をみつけなければなりません。

 

重要な説明変数を見落としていても、一時的に回帰分析の計算式が有効に働くことがあります。しかし重要な説明変数を加えていない回帰分析の計算式は、ある日突然「暴走」します。

例えば、ある日突然チョコチップアイスが、予想に反して爆売れして売り切れを起こしたとします。原因を調べたら、あるテレビ番組で紹介されていたことがわかりました。

これは、宣伝効果というxを無視して回帰分析の数式をつくってしまったことで起きた予想の失敗です。

 

回帰分析はマーケティングをサポートするものの、回帰分析を使った予想が100%的中するわけではないことは知っておかないとならないでしょう。

そして「いい加減な回帰分析の数式」をつくってしまうと、マーケティングで結果を出すことが難しくなります。

 

まとめ~回帰分析はデータのプロに任せて


回帰分析は軽視することも、信頼しすぎることも危険です。

回帰分析を軽視する人は「所詮は統計なのだから『当たるかもしれない』レベルだろ」と思っているかもしれませんが、それはリスキーです。なぜなら、回帰分析の結果はビジネス上のエビデンス(科学的根拠)になるからです。

回帰分析の結果があれば、エビデンスのあるビジネスやマーケティングを展開できるでしょう。なければ、それができません。


ではなぜ、回帰分析を軽視してはいけないのに、信頼しすぎてもいけないのでしょうか。

それは確度の高い回帰分析をするには、正しいデータ収集や高度なデータ処理、正確なデータ分析、そして数学的知識が必要になるからです。

データ収集・処理・分析のスキルや数学的な知識がないまま回帰分析を行ってしまうと、正しくない予想を立てることになってしまい、マーケティングの方向性が誤ってしまいます。


マーケティングで回帰分析を有効活用する場合は、ぜひデータ分析に定評があるプロに依頼してみてください。

 

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