
WEB接客を詳しく解説「PDCAが使える」【マーケティング論】
Webサイトを使ったビジネスが広がるなか、Web上で顧客をもてなすWeb接客の重要性が増しています。
企業には、従来の接客に加えて、Web接客に注力することが求められています。
そこで取り入れたいのがPDCAサイクルです。Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)を繰り返すことで、Web接客の質向上や閲覧数の増加、売上増が期待できます。
Web接客におけるPDCAサイクルの活用法について解説します。
Web接客とは、接客とは
Web接客にPDCAサイクルを導入する意義を紹介する前に、Web接客の重要性について解説します。
Web接客とはWebサイト上で行う接客のことです。
接客であることには変わりない
では接客とは何か。
あるデパートは接客を次のように定義しています(*)。
■接客とは
●もてなすこと
●顧客が求めるものを提供すること
●商品情報を伝えること
●コミュニケーションを取ること
●顧客の側に立って行動すること
●顧客ニーズを把握しそれに応えること
これはリアル店舗での接客のことをいっているのですが、Web接客でも有効な考え方です。
*:https://www.imh-sol.co.jp/column/special/customer-service.html
Web接客とはWeb上での顧客体験を最大にすること
Web接客もリアル店舗での接客(以下、リアル接客)も顧客をもてなすという本質部分は同じですが、Web接客には顧客と直接接触できないという制約があります。
では顧客に直接接触できないことはWeb接客にとって不利なことなのかというと、実は有利な部分もあります。なぜならWebサイトの技術が進化したことで、多くの消費者がWeb上で豊かな顧客体験をしているからです。
例えば、アパレル企業が行っているバーチャル試着は、短時間で多くの服を試すことができます。リアル店舗での試着は時間がかかりますが、バーチャル試着なら短時間でいろいろな服を試すことができます。
しかもバーチャル試着なら店員の目を気にする必要はありません。
また不動産会社のなかには、賃貸住宅のオンライン内見を行っているところもあります。リアルの賃貸住宅内見は現地に赴かなければなりませんが、オンライン内見なら自宅にいながら複数の賃貸住宅をみることができます。
Web接客は工夫次第で顧客体験を最大化することができ、その結果、リアル接客を超えるおもてなしが可能になります。
Web接客におけるPDCAを回すことの重要性
PDCAは、計画を立てて、実行して、評価をして、改善して、また計画を立てて実行していく、という取り組みです。
PDCAの本質は試行錯誤にあります。よいと思ったら計画をつくってすぐに実行し、欠点をすぐにみつけて改善して次に活かす、という取り組みがPDCAです。
したがってすべての業務にPDCAは有効であるといえますが、Web接客の改善には特に有効であるといえます。その理由は次のとおり。
■PDCAがWeb接客にとって重要であるといえる理由
●Web施策は多種多様で進化しているから
●顧客のWeb接客への期待が高まっているから
1つずつみていきましょう。
Web施策は多種多様で進化しているからPDCAが重要
Web接客の質を高めるにはWeb技術を駆使する必要があります。先ほど紹介したバーチャル試着やオンライン内見は最新のITをWeb上にのせたものといえ、Web技術に数えることができます。
そしてWeb技術を駆使して実行するWeb施策は多種多様で日々進化しています。
昨日まで最新だったWeb施策が今日には陳腐化しているかもしれませんし、明日には新しいWeb施策が生まれているかもしれません。
そのためWeb接客を向上させたい企業は、PDCAで常に最新のWeb施策を自社Webサイトに搭載していく必要があります。
顧客のWeb接客への期待が高まっているからPDCAが重要
これまで多くの顧客や消費者がリアル店舗からWeb店舗に流れてきたわけですが、それはWeb上での顧客体験が人々を喜ばせているからです。
しかしWeb施策が増えたり高度化したりしたことで、顧客のWeb接客への期待は高まる一方です。
したがってこれからは、顧客の期待に応えることができるWeb接客ができる企業が生き残ることになるでしょう。
PDCAを使えば顧客ニーズを的確に探すことができるので、それに沿って改善していくことで顧客のWeb接客欲求を満たすことができます。
Web接客におけるPDCAの回し方
Web接客におけるPDCAの回し方を紹介します。
Web接客のPlan(計画)とは
Web接客の計画づくりでは、どのようなWeb施策を打ち出すのかを決めます。
そのためには次の2つが重要になります。
■Web接客の計画づくりに必要なこと
●顧客ニーズを探る
●最新のWeb技術、Web施策をリサーチする
Web接客を改善するにはコストと手間がかかるので、顧客ニーズに応えることができるWeb施策を実行していったほうがよいでしょう。
そのためには顧客ニーズを探る必要があります。
そして顧客ニーズのなかには、自社で対応できるものとできないものがあります。
そのためWeb接客の担当者は、最新のWeb技術や最新のWeb施策を調べ、それらが顧客ニーズに対応できるかどうか、や、自社で採用できるかどうかを検討します。
「顧客ニーズに対応でき、自社で採用できる」Web施策がみつかったら、それをベースに計画をつくります。
Web接客のDo(実行)とは
Web接客の実行とは、計画のなかで決めたWeb施策を自社Webサイトに実装することです。
ただ大規模なWeb施策を実行する場合、既存のWebサイトに搭載するより、新たにそれ用のWebサイトを立ち上げがほうがよいこともあります。
例えば、ECサイトを展開しているファッション企業が、顧客が自由にTシャツをデザインできるWeb施策を始めることになったとします。
このとき既存のECサイトにTシャツ・デザイン機能を搭載することも可能ですが、新たにTシャツ・デザイン・サイトを立ち上げることもできます。
より効果的な方法で実行していくことになります。
Web接客のCheck(評価)とは
Web施策は効果や結果がみえやすい、という特徴があります。
よいWeb施策を実行できればWebサイトへの訪問者数(閲覧数)の増加、売上増、話題性の向上といった成果がすぐに現れます。
したがって、実行した新しいWeb施策の欠点も比較的短期間で判明します。
評価では、これらの効果や結果や欠点を確認していきます。
また、新しいWeb施策を利用した顧客にヒアリングしてもよいでしょう。使い勝手や改良点を尋ねることで、次の改善につなげることができます。
Web接客のAct(改善)とは
実行したWeb施策が新しければ新しいほど、改善点は増えていくはずです。
改善作業では、評価の段階で挙げた改善点を実施していくわけですが、その際、優先順位をつけて取り組んでいくことになります。
小さな改善点はすぐに改善してしまいますが、大きな改善点は新しく計画をつくって取り組んでいくことになります。これがAからPへの流れになり、1回転目から2回転目に進みます。
Web接客におけるPDCAの効果を高めるコツ
PDCAを使ってWeb接客を効率的かつ効果的に改善していくには、計画、実行、評価、改善を1つずつ確実に実施していく必要があります。
これがWeb接客におけるPDCA効果を高めるコツになります。
計画のコツ
企業のなかには、Webサイトの運営や新しいWeb施策の導入を、外部のWebサイト製作会社に依頼しているところもあるでしょう。
その場合でもWeb接客計画は自社で立てるようにしたいものです。
そのためには、やはり自社で、顧客のWeb接客ニーズを探す必要があります。顧客がどのような顧客体験を望んでいて、それをWeb上で提供するには何をすればよいのかを検討します。
それを計画書に盛り込んでWebサイト製作会社に渡すことで、狙いとおりのWeb施策を実行することができます。
実行のコツ
Web接客の実行を、「新しいWeb施策をWeb上で展開するだけ」で終わらせないでください。
Web接客の「良し悪し」は技術的な要因が大きく影響するので、システムやソフトウェアやアプリケーションをつくることが最重要課題になります。
しかしそれをWebサイトで公開しただけでは高い効果は期待できません。
画期的なWeb施策を実行できたら、それに見合う宣伝やPRが必要になります。広告やコマーシャルなどを使って、どれだけ便利になるのか、どれだけ楽しい体験ができるのか、といったことをアピールします。
また、マーケティング・キャンペーンやマーケティング・イベントも有効でしょう。
評価のコツ
新しいWeb接客の評価は、定性評価と定量評価の両方を実施することをおすすめします。
定性評価とは数字で表せる評価のことで、アクセス数、コンバージョン数、売上高などがこれに該当します。定性評価を行うことで、今回のWeb施策の効果と次回のWeb施策の効果を客観的に比較することができます。
また売上高とコストを記録しておけば、費用対効果を数値で出すことができます。
定量評価とは数値化できない内容を評価することです。
例えば「今回は買ってみたけど、次回は買わない」という顧客がいたとします。この場合、定性評価では、この顧客は売上増に貢献しているのでプラスに評価されてしまいます。
しかし「次回は買わない」という感想はマイナス評価にすべきで、定量評価ならそれが可能になります。
定量評価は顧客の生の声を聞くことでもあるので、数字に表れない真の評価を探ることができます。
改善のコツ
改善では、この前段階で行った評価をベースに進めていきます。
改善でも、定性評価への対策と定量評価への対策の両方を行ったほうがよいでしょう。
定性評価への対策では例えば「今回は売上高が思ったほど伸びなかったので、次回は売上高を狙ったWeb施策に取り組もう」といった取り組みができます。
定量評価への対策では例えば「新しいWebサイトのデザインはおおむね好感されたのに、なぜコンバージョンにつながらなかったのか」といったことを検討することができます。
そして改善したことは次の新規のWeb施策の計画に盛り込んでいきます。
Web接客でPDCAを回さないとどうなるか
Web接客を行うときにPDCAが必要になるのは、実施するメリットが多いだけでなく、実施しないデメリットが大きいからです。
PDCAを回さないと次のようなことが起きるでしょう。
■Web接客でPDCAを回さないとどうなるか
●顧客ニーズを正確に把握できない
●最新の技術や最新のWeb施策をWebサイトに導入できない
●無駄なWeb施策を実施することになる
●コスト高、低効果に陥る
●閲覧数、コンバージョン数、売上高といった定量評価を上げることができない
●Webサイトの使い心地、Webサイトへの好感度といった定性評価を上げることができない
これではWeb接客の質を高めることができません。
Web接客のPDCAで失敗する要因
Web接客を改善するためにPDCAを回したものの、失敗することがあります。
それは正しくPDCAを回せていないためと考えられます。
4つの段取りを順番とおり回していない
PDCAで重要になるのは、段取りが4つあることと、4つの段取りを順番とおり回すことです。したがって4つの段取りを実施していても、P→D→C→Aの順に進めていかないと成功する確率は落ちます。
計画をつくらずに実行したり、評価をせずに改善の検討に入ったりすると失敗してしまいます。
そのため、計画をつくってから実行し、実行したら評価をして、評価から改善点を探して次の計画に活かしていくようにしてください。
4つのコツを実施しない
先ほど「Web接客におけるPDCAの効果を高めるコツ」の章で4つのコツを紹介しました。これは効果を高めるコツであり、失敗する確率を減らすコツでもあります。
●Web施策を外注化する場合でも、自社でWeb接客計画をつくらないと失敗しやすくなる
●新しいシステムや新しいアプリをWebサイトに搭載しただけでは失敗しやすくなる(新しいWeb施策をしっかり宣伝、広告しないと失敗しやすくなる)
●定性評価と定量評価の両面から評価しないと失敗しやすくなる
●定性評価への対策と定量評価への対策の両面から改善しないと失敗しやすくなる
Web接客におけるPDCAを回す際の注意点
Web接客におけるPDCAで注意したいことは、新しいことに挑戦することと、しっかり投資することです。
新しいことに挑戦する
顧客はWeb接客に高い関心を払い、大きな期待を寄せています。顧客の期待値がこれほど高いのは、Web接客がこれまで顧客や消費者を驚かせ、感動させてきたからです。
したがって企業は、Web施策を自社Webサイトに搭載するとき、新しいことに挑戦する必要があります。
「これまでになかった顧客体験を提供する」という気概を持ってWeb接客を改善していきましょう。
しっかり投資する
最新のWeb技術や最新のWeb施策は高額になることが少なくありません。システム開発会社やアプリ開発会社は多額の開発費をかけて最新技術を構築しているので、コスト高になることはやむをえない部分があります。
そのため企業が自社Webサイトを使って価値ある顧客体験を提供できるWeb接客を実施するには、それなりの額の投資が必要になります。
多額の投資は利益の押し下げ要因になりますが、Web接客に成功して顧客を増やすことができたり、顧客単価が上昇したりすれば利益を押し上げます。
費用対効果や投資とリターンのバランスは、Web接客でも重要になります。
そして費用対効果を最大化するためにPDCAを回すという側面もあります。
まとめ~Web接客を進化させるためのPDCA
Web接客の重要性は高まることはあっても低下することはないでしょう。なぜなら顧客や消費者のWeb接客に対する期待は高まる一方で、Web接客を支えるITやWeb技術は進化し続けているからです。
したがって企業は、Web接客を一度構築しただけで終わりにするのではく、Web接客を進化させていく必要があります。
そのためにはWeb接客を改善する作業にPDCAサイクルを導入したほうがよいわけです。