見出し画像

MA(マーケティングオートメーション)の基礎と実践的な知識を身につける


企業には今、消費者や顧客の一人ひとりのニーズに合わせたマーケティング施策が求められています。しかしこのような個別対応タイプのマーケティングは手間、時間、コストがかかり、簡単に実施できるものではありません。

そこで必要になるのが、マーケティングオートメーション(以下、MA)です。MAではマーケティングに関わる業務を自動化(オートメーション化)するので、個別対応タイプのマーケティングの手間、時間、コストを減らします。

この記事では、MAの基礎知識を紹介したうえで、MAによって企業のマーケティングがどのように進化するのか解説します。

MAの基礎知識

本稿は基礎知識編と実践編の2部構成になっています。まずは基礎知識としてMAとはどのようなマーケティング手法なのかを紹介します。

MAとは

MAとはマーケティングを自動化する取り組みなのですが、では自動化とは何か。それは人(マーケター)がやっている仕事をコンピュータにやらせること、です。

企業のマーケターはあらゆるマーケティング業務に携わり、あらゆるマーケティング施策を手がけているわけですが、これらを次々コンピュータ処理に置き換えていきます。これがMAです。

そこで必要になるのが「テック」です。金融に用いるテクノロジーをフィンテック、医療に用いるテクノロジーをヘルステックと呼ぶように、MAではマーケティングテック(マーテクと呼ぶことも)を用います。

以上のことをまとめると、MAとはマーケティングテックでマーケティング業務やマーケティング施策を自動化して生産性を高める取り組み、といえます。

MAの目的

MAを導入した企業は、さまざまな果実を得ることができます。その果実こそが、企業の、MAを導入する目的になるでしょう。

MAの最も重要な目的は、消費者や顧客の一人ひとりのニーズに合わせたマーケティングを展開することです。この個別対応タイプのマーケティングはカスタマイズ・マーケティングと呼ばれることがあります。企業が実施するマーケティング施策を、1人の顧客に合わせてカスタマイズしていく、という意味です。

カスタマイズ・マーケティングが実現すると、企業は顧客と強固に結びつくことができ、顧客のロイヤリティは高まります。

MAの目的には生産性の向上もあります。よく「消費者や顧客は多様化した」と言われます。企業が多様化した消費者や見込み客にリーチして顧客にしていくには、マーケティングも多様化させていかなければなりません。マーケティングを多様化させるには手間、時間、コストがかかりますが、MAでいくつかのマーケティング業務を自動化させれば、手間、時間、コストを減らせます。

企業がMAを導入するとマーケティングはどう進化するか

企業がMAを導入すると、自社のマーケティングはどのように変わるのでしょうか。答えはシンプルで「進化します」。

企業は今、多くの手間をかけ、長い時間を使って、多額のコストを負担してマーケティングを実施しているはずです。そこまでするのは、消費者と顧客と市場を理解して、商品やサービスを消費者や顧客や市場が求める形にして、顧客に最大の価値を提供したいからです。その先に利益があります。

しかし消費者や顧客の多様化や、社会の変化、不安定な経済情勢は、消費者と顧客と市場の理解を難しくしています。つまりマーケティングが難しくなっています。MAを導入すれば、消費者と顧客と市場の理解が容易になります。これがマーケティングの進化です。

同様に、MAを導入すれば、自社の商品やサービスを消費者や顧客や市場が求める形にすることができるようになり、顧客にできる価値がさらに高まります。これも進化したマーケティングの姿といえるでしょう。

MAにはMAツールが必要

先ほどMAとは、マーケティングテックで業務を自動化する取り組みである、と紹介しました。マーケティングテックとは具体的に何かというと、MAツールです。

例えば経理業務には経理システムというツールがあり、営業業務には営業支援アプリというツールがあるように、MAにもコンピュータ・ツールがあります。

MAツールは今、次々開発されてリリースされているのでここで(本稿で)すべてを紹介することはできませんが、高い効果をあげているMAツールを紹介します。

リード管理システムは、リード(見込み客や潜在顧客)を集めたり、追跡したり、管理したりするシステムです。また、自社サイトやSNS、セミナーなどで接触できたリードの情報を管理することもできます。

リードになりうる消費者は、企業のサイトやSNS、セミナーなどの個人情報を残しているものです。リード管理システムはその情報を一元管理します。消費者のなからリードを抽出できれば、あとはマーケティング施策を実施してリードを顧客に育成していくことができます。

リード管理システムでは、スコアリング機能も活躍するでしょう。企業が接点を持つことができた消費者一人ひとりに点数(スコア)をつけます。そのスコアは、企業の商品やサービスに関心が高い消費者ほど高く、関心が低いほど低くなります。スコアが高い消費者ほどリードから顧客になる可能性が高いので、企業は高スコア層をターゲットにしてマーケティング施策を集中させることができます。

自動キャンペーン・ツールは、消費者や顧客に自動でマーケティング・キャンペーンを実施します。例えばリード・リストや顧客リストのなかから条件に当てはまった人にクーポン券を贈ったりすることができます。

自動キャンペーン・ツールの仕組みはこうです。事前に条件やトリガーを設定して、それに合った消費者や顧客に営業メールを送ったり、自社サイト上の新着コンテンツを送信したりします。

MAに関する実践的な知識

ここまでの解説でMAの概要について把握できたと思います。基礎知識が身についたところで、ここからはマーケティングの現場で必要になる、MAに関する実践的な知識について解説していきます。

MAと似て非なるものとの比較

MAと混同されがちなものにSFA(セールス・フォース・オートメーション、営業支援システム)とCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント、顧客管理システム)がありますので、これらの相違点についてみていきましょう。

MAとSFAの違い

SFAは営業活動をサポートするシステムです。つまり営業担当者が使います。SFAでできることは、リード管理、顧客管理、営業活動のスケジューリング、見積書や注文書の作成などです。

MAはマーケティングを自動化するものなので、マーケターが使います。したがってMAとSFAは、使う人が違う、ということができます。

ただし、営業活動がマーケティング施策に組み込まれることは往々にしてあることなので、マーケターがSFAを操作することもあるでしょう。この観点からいうと、SFAはマーケティングの自動化を実現させるツールのひとつ、と考えることもできます。

MAとCRMの違い

CRMの主な機能は顧客データの一元化です。企業はあらゆるルートから顧客情報を得ることができます。例えば、マーケターはマーケティング活動のなかで顧客情報を得て、営業担当者は営業活動のなかで顧客情報を得て、店舗は来店者情報を持っています。企業がCRMを導入すれば、各部門が独自に集めた顧客情報を一元管理できるので、マーケターも営業担当者も店舗の販売担当者もすべての顧客情報を自分の業務に使うことができます。

CRMは顧客に関する業務に特化しているシステムといえ、マーケティングを自動化していく目的を持ったMAとは根本的に異なります。ただマーケターがCRMを使うと一部の業務を自動化できることから、CRMはMAツールの一種とみなすこともできるでしょう。

MAでリードジェネレーションを効率化する

リードジェネレーションを直訳するとリード(見込み客や潜在顧客)を生み出すこと、となります。リードジェネレーションとは、新しい顧客や自社商品・サービスに興味を持った消費者をみつける取り組みです。

例えば、企業が自社サイトに資料請求のページをつくり、そこに個人情報入力フォームを設置すれば、資料を求める消費者は個人情報を入力します。これも消費者に接触してリードに育成する取り組みなので、リードジェネレーションです。

MAは、リードジェネレーション業務を自動化するでしょう。企業のマーケターがリードジェネレーションで苦戦していたら、MAがソリューションになります。マーケターはMAを活用することで、リードの獲得やリードジェネレーション・キャンペーンの実行が容易になります。

MAでリードナーチャリング業務を自動化する

リードナーチャリングとはリードとの関係性を維持していく取り組みのことです。マーケターはターゲットとなる消費者に対して、リードになってもらう働きかけをして、顧客になってもらうことを目指すわけですが、リードがすぐに顧客になるわけではありません。リードとの関係性が良好に維持されることで、ようやく商品・サービスを購入してくれるわけです。

そこで例えば、資料請求や見積もり依頼をしてきた人に、資料や見積書を提供したあとも、定期的に営業メールを送ります。その人が「この会社の営業メールの情報は有益だ」と感じたら、それはリードになったとみることができます。

リードナーチャリングは、MAによって効率化されるでしょう。マーケターがMAを使えば、リードとより濃密に、より深く、そしてより広く、関係することができます。

MAでデータに基づくリードクオリフィケーションを

リードクオリフィケーションとは、リードが本当に興味を持っているかどうか、そして商品やサービスを購入する可能性があるかどうかを判定することです。

例えば、ある消費者が自社に、何度も質問をしたり資料請求したりしていたとします。マーケターや営業担当者としては「有力なリード」とみなしたくなります。しかしそのリード(と期待できる人)が、十分な予算を持っていなければ、自社商品・サービスをそもそも買うことはできません。また、冷やかしの可能性も十分あります。

そこでリードクオリフィケーションを実施して、顧客になる可能性が高いリードだけにマーケティング施策を打ち出していけば、業務を効率化できるわけです。

リードクオリフィケーションは、MAによってデータに基づいた方法で実行されます。MAは、リードの行動や属性に基づいてリードを自動的にスコアリングし、優先順位づけを行うことができます。

顧客体験を向上させるシナリオをMAで高度化させる

マーケティングにおけるシナリオとは、何が起こるかを想定して計画を立てることです。例えば、顧客が商品を購入したあとに自動的にメールを送るように設定することは、シナリオに基づいたマーケティング施策といえます。

MAを使用すると、あらかじめ設定されたシナリオに基づいて自動的にマーケティング施策を実行できます。これにより、リードや顧客とのやり取りが速やかに、かつ効果的に行われ、顧客体験が向上します。

MAでスコアリングして重要な知見を得る

スコアリングとはリードや顧客がどれだけ自社に興味を持っているかを点数で評価することです。例えば、顧客がメール内のリンクをクリックした回数や、ウェブサイトを訪れた回数などで評価します。

リードスコアリングでもMAが重要な役割を果たします。MAは、リードの行動や属性に基づいてスコアを自動的に計算し、マーケターや営業担当者に「最も貴重なリード」を教えます。

MAでもペルソナ設定が重要

ペルソナとは商品やサービスを購入する人を想像して構築した仮想の顧客像です。年齢や性別、興味などを考慮して、商品やサービスを購入する人をイメージすることです。

ペルソナは、MAでターゲティングをするときの基礎になります。MAがあれば、異なるペルソナに対して同時に適切なコンテンツやコミュニケーションを提供することができます。

MAでもカスタマージャーニー設定が必要

カスタマージャーニーとは顧客が商品やサービスを知ってから購入するまでの経験や過程のことです。例えば、商品を知る、興味を持つ、購入するという過程です。

カスタマージャーニーは伝統的なマーケティングで使われてきた概念ですが、MAでも必要になります。MAを使えば、カスタマージャーニーに沿って、コンテンツやキャンペーン、アクションを自動で提供できるようになります。顧客はリッチなカスタマージャーニーを体験できるので、エンゲージメントが高まったり、購買経験が向上したりします。

MAに関する法律について

MAと法律の関係について紹介します。ここでは個人情報保護法と特定電子メール法について確認していきます。

個人情報保護法について

個人情報保護法とは個人の情報を守るための法律です。この法律によって企業には、個人の名前や住所、電話番号、メールアドレスなどの情報を保護することが求められます。

例えば同法第18条第2項には「個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない」と書かれてあります。企業は相当慎重に個人情報を取り扱う必要があります。

したがって個人情報保護法に適合させることは、MAを導入する際の重要な考慮事項になります。MAの使用では、リードデータの収集、処理、保管に関連する規制や法律に対する遵守を確保する必要があります。

特定電子メール法について

特定電子メール法とは電子メールの送信に関する法律です。例えば、スパムメールを防ぐために、特定の条件を満たさない限り、電子メールを送信することができないように規制されています。

企業のマーケターは、特定電子メール法は、電子メールを使ったマーケティングを規制していると考えてよいでしょう。MAを使うことで、同法に準拠した電子メールの送信や選択的脱退の処理(オプトアウトの処理)を自動化し、コンプライアンスを確保するのに役立ちます。

まとめ~利用しない理由はない

MAは企業のマーケターを助けるでしょう。マーケティング業務やマーケティング施策を自動化できると、マーケターは業務を効率化でき余力が生まれます。その余力を企画などの創造的な仕事に使えるわけです。

MAは企業のマーケティングを高度化するでしょう。一人ひとりの顧客に向き合うことは、したくてもなかなかできないことです。しかしMAを導入すれば、マーケティングの個別対応が可能になります。

消費者や顧客が多様化していることは、マーケターなら日々の仕事のなかで実感できているはずです。そして消費者・顧客の多様化は、企業にマーケティングの多様化を迫ります。

MAをつかって自社のマーケティングを個別化、多様化できるのであれば、企業がこれを利用しない理由はありません。

参照記事

https://business.adobe.com/jp/blog/basics/what-is-marketing-automation

https://advertising.amazon.com/ja-jp/library/guides/tailored-marketing

https://www.e-sales.jp/sfa/about/

https://www.synergy-marketing.co.jp/glossary/crm/

https://www.e-sales.jp/eigyo-labo/what-is-crm-213

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0000000057

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC0100000026




いいなと思ったら応援しよう!