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カネ持ちはなぜ「貧乏のころのほうが幸せだった」と言うのか

だからといってカネを捨てるわけではないのだが

カネ持ちはえてして、貧乏なころのほうが幸せだったという。
無論、手元のカネを捨てて貧乏に戻ることはしないので、幸せといっても深い意味はないのだが、それにしても貧乏なころをポジティブに感じるのはなぜか。

ネガティブ時のほうが心が動くから

カネ持ちが貧乏時代を懐かしむ現象は、戦争時のほうが自殺者が少ないという現象と似ている。
戦時は生存本能が強まったり、他者とのキズナを深めたいと思ったりするからだ。
つまり、ネガティブにはポジティブな要素がある、という矛盾がある。
貧乏、戦時、苦痛、苦労はネガティブな現象だ。
それなのに、例えば戦争を一緒に戦った戦友は、平時になっても大切な友達である。

ネガティブな状況が過ぎ去ったあとに、ネガティブ時をポジティブに感じるのは、ネガティブ時のほうがポジティブ時より心が動くからである。
心の動きと充実感には相関関係がある。
心が動き始めると充実し始め、充実していると感じているとき心が動いている。

ネガティブの最中にはポジティブさはない

ただしネガティブ時は嫌な経験をしているので、充実感が得られていても「今が最高だ」とは思えない。
ネガティブの最中にはポジティブさはない。
だからネガティブの真っただ中にある人には、ネガティブによる心の激しい動きはむしろストレスになる。
それで貧乏、戦時、苦痛、苦労はメンタルを壊すのである。

ポジティブ時は空疎だから過去の激しい心の動きを懐かしむ

ところがネガティブ時が終了してポジティブ時に入ると、途端に心の動きが止まるので充実しなくなる。
幸せにある人は案外、いいんだけど嫌だな、という矛盾した感情が湧いてくる。
しかも今はポジティブ時なので、嫌なことを経験することはない。
だから過去のネガティブ時に充実していたことだけが、記憶としてよみがえるのである。
ポジティブ時の空疎な心を、過去の激しい心の動きの記憶で埋めようとしているのである。
これがポジティブ時に、過去のネガティブ時をポジティブに感じるメカニズムである。

貧乏自慢も関与している

そして貧乏を経てカネ持ちになった人は大抵、貧乏自慢をする。
私は逆境に打ち克ってこのポジションを得た、ということを誰かに示したいので、貧乏自慢をするのである。
貧乏自慢のモチベーションも「貧乏のころのほうが幸せだった」と言わせる要因になっている。

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