
前澤の株配り会社カブアンドは無理スジ、といえる理由
話題のカブアンドについて厳しめに書く。
直感的に「違うな」と感じ、公式サイトを読み込んであらためて失敗スジと読んだからである。
結論を先に紹介すると、詐欺的である。
まずは前澤の前史から
前澤友作氏のことを、ファッションサイトZOZOの創業者と呼ぶこともできるが、より本質的で、より重要で、より今日的なニュアンスは、ZOZOを追い出された社長である。
つまり経営があまり上手じゃない人なのである。
前澤氏はZOZO社長時代に儲けて、さらに、追い出されるときにZOZO株を売って儲けて、大ガネ持ちになった。
その人が株を配る会社、カブアンドを設立した。
カブアンドは株を配る会社だそうだ
一般論として、カネ持ちになったときのビジネスは優れているが、カネ持ちが始めるビジネスは駄作が多い。
恐らくカブアンドは後者になるだろう、というのが私の見立てである。
もちろんこれは前澤氏を好くか・嫌うかの問題ではない。
客に株を配る仕組みなどビジネスとして成立しないから、駄作のビジネスなのである。
カブアンドのビジネスは陳腐
実は、株を配ることは、カブアンドの本質ではない。
カブアンドの正体は、単なる販売会社である。
では、カブアンドは何を販売するのかというと、電気、ガス、スマホ、光通信、水だ。
とはいっても前澤氏は、電気もガスもスマホも光通信も水も、自分でつくる気はサラサラない。
電気・ガス・スマホ・光通信・水をどこかから仕入れて販売するだけである。
なんてことはない、転売だ。
しかも転売する品がよくない。
電気・ガス・スマホ・光通信・水の販売ビジネスは、1)新味がなく、2)すでに過当競争が展開されているものだ。
この2つの性質のビジネスがうまくいったためしはない。
つまり、「なぜ前澤さんのところから、わざわざ電気と水を買わなければならないのか」という疑問が湧く。
それに答えよう。
株が付加価値というが
では、なぜカブアンドは、陳腐なサービスを販売するのか。
そしてなぜ、前澤氏はそれで勝てると踏んだのか。
それは付加価値をつけることができると考えたからである。
では前澤氏は、他人から買ってくる電気・ガス・スマホ・光通信・水にどのような付加価値をつけるというのか。
それが株だ。
「前澤さんのところから電気を買うと株がもらえるよ」というのである。
株が価値を持つのは極めてまれ
株をもらえるのは嬉しい--この感覚は間違っていないが、しかし喜べるのは、もらったのがトヨタやソニーやエヌビディアの株だった場合だ。
つまり価値のある株はもらって嬉しいが、そこらの会社の株をもらっても価値が低いから喜んでいられない。
ましてや、価値が低い会社の株を買ってしまったら、暴落するから損をする。
ではカブアンドの株には価値があるのか。
ない。
客がすることは、高いカネを出して「電気+株」を買うこと
もちろん、前澤氏が再び大儲けしてカブアンドを上場すれば、株を持っている人は、その株を売れば利益が出る。
しかし、電気・ガス・スマホ・光通信・水の転売ビジネスで上場なんてできないだろう。
したがって、カブアンドから電気を買った客がもらえる株は「おまけ」にすぎない。
しかも、さすがの前澤氏も無料で株を客にプレゼントするわけではない。
割高な電気・ガス・スマホ・光通信・水を買ってくれた客にだけ、株を与えるのだ。
なぜカブアンドが販売する電気・ガス・スマホ・光通信・水が割高になるといえるのか。
電気もガスもスマホも光通信も水も過当競争の市場だから、最後発組のカブアンドがそれらを仕入れるとき、高い料金を提示されるだろう。
しかもカブアンドは最後発組だから、客には、電気もガスもスマホも光通信も水も、安く売らなければならない。
しかし、安く売るといっても限界があるから、結局は、客に売るときの料金は割高になるのだ。
だからカブアンドは「割高だけど、将来に大化けするかもしれない株を手に入れられるのだかいいでしょ」と言っているにすぎないのである。
公式の説明
カブアンドは公式サイトで次のように説明している。
●客には、サービスの利用額に応じて株の引換券を渡す
●株引換券とは、株と交換するための電子的なチケットである
●株引換券を使って得た株を売ることができるのは、カブアンドが上場したときだけ
●カブアンドの上場時期や可能性は、今は説明できない
●株は、カブアンドが用意するサイトに、客のマイページがつくられ、そこに貯まっていく
●ポイントは永遠に1ポイント=1円だが、カブアンド株はカブアンドが成長すれば高くなるかもしれないが、カブアンドが倒産すれば無価値になる
ズルい
私は、カブアンドのビジネスはズルいと思っている。
客は、割高ではあるが、それでも決して暴利とはいえない金額で電気・ガス・スマホ・光通信・水を購入することができる。
そして「おまけ」でもらえるカブアンド株には、なんとなく夢がある。
クラウドファンディング的な。
あるいは「前澤さん頑張れ」的な。
仮にカブアンドが倒産しても、客はすでに自分が支払ったカネで電気・ガス・スマホ・光通信・水を消費しているから、損はしていない。
客はカブアンドの倒産後、ほかの会社から電気・ガス・スマホ・光通信・水を買えばよいだけだ。
しかもカブアンド株が紙クズになっても、「おまけ的にもらっただけ」という感覚があるから、こちらも大損したという感覚はない。
つまりカブアンド・ビジネスは破綻しても誰にも怒られないのである。
それどころか「カブアンドは倒産しちゃったけど、前澤さんとワイワイ楽しくやれてよかった」と思う人がいるかもしれない。
前澤氏がやっていることは決して詐欺ではないが、しかし未公開株という無価値なものを添付して、割高な電気・ガス・スマホ・光通信・水を売る行為は限りなく詐欺的だ。