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(無料部分だけでも読んで)アンラーニングで自分の思考パターンを捨てよ。そうすれば成長できる


 リスキリング(学び直し)に取り組もうとしている人や、すでにリスキリングに取り組んでいるものの思ったような効果が出ていない人は、アンラーニングを実施すると成果が出るかもしれません。

アンラーニングとは、今自分が持っている思考パターンや考え方の癖、思い込みを捨てたうえで、新たな成長に向けて取り組むことです。

この記事ではアンラーニングの効果を高める実践方法や注意点を解説します。また、越境学習との関係についても説明します。

結論を先に紹介すると、アンラーニングは越境学習の学習効果を高めます。 

アンラーニングとは? 

アンラーニングは、学び方の一種です。学び方には、本を読んだり体験したり、暗記したりスキルを獲得したりする方法がありますが、アンラーニングはそのうちの1つです。

なお英語の「アン」には否定の意味がありますが、アンラーニングは「学ばない」という意味ではありません。 

振り返り、ときに一部を捨て去る

多くの学びはインプット、つまり情報や知識を新たに獲得することを目指します。アンラーニングでもインプットは重要ですが、その前にすることがあります。それは振り返りです。

振り返る対象は、自分の思考、思い込み、習慣、発想、ルーティン、行動パターン、情報、知識、技術などです。つまり自己です。

そして、自己を振り返ってみた結果、現在と未来に通用しないものがあればそれを否定して、捨てることが求められます。例えば、今持っている思考パターンを使って新しいプロジェクトに取り組んだところ、それが通用しないことがわかったら、その思考パターンを捨てるわけです。

新しい器で新しく学ぶ

自アンラーニングは、分の思考などを振り返り、ときにその一部を否定することから始まります。しかしこれはアンラーニングの序章にすぎません。

アンラーニングの肝となるのは、新しい学びを受け入れる土壌をつくることにあります。

つまりアンラーニングとは、思考の「器」をまったく新しいものにして、その新しい器に新しい知識や情報、経験などを盛り込んでいく作業といえるでしょう。

アンラーニングを進める方法は、後段の「アンラーニングを促すには?実施方法を解説」の章で紹介します。 

アンラーニングとリスキリングの違い

アンラーニングはリスキリングと似た概念です。両方とも新たに成長するために、新たな知識、情報、経験を積んでいく点は共通していますが、違いもあります。

アンラーニングは「ひと手間加えたリスキリング」といえる

リスキリングでは新しいことを学ぶことにフォーカスします。例えば、総務の仕事をしていた人が経理の知識を獲得したり、営業を担当していた人がプログラミングを学んだりすることはリスキリングです。

一方のアンラーニングは、学び直しに取りかかる前の心構えにも着目します。

今自分が持っている思考パターンは、今の仕事には便利でも、新しい別の仕事には向かないことがあります。例えば、営業の思考を持ったままでは、プログラミングを学ぶことは難しいでしょう。そこでプログラミングの勉強に取りかかる前に、プログラミングの学習の邪魔になる思考パターンを捨てるのです。

アンラーニングを実施したほうが、効率よくリスキリングが進むでしょう。アンラーニングとは、ひと手間加えたリスキリングといえます。

アンラーニングが求められる背景

ここまでの説明で次のような疑問が浮かぶかもしれません。

●自分の思考や習慣、行動パターンを捨てなくても、新しい学びを始められるのではないか

もちろん、アンラーニングではなく単純なリスキリングだけでも効果が出ることがあります。しかし現代は、単純なリスキリングだけでは効果が出にくい時代と考えることができます。

アンラーニングが求められるようになった背景を紹介します。

キーワードは「通用しない」

「現代は時代の転換期である」と感じさせる事態がいくつか発生しています。

例えばコロナ禍によって、会社の事務所以外の場所で仕事をすることが当たり前になりました。つまり「仕事とは会社や工場や現場に出向いてするものである」という考えだけでは、仕事ができなくなっています。

また今は、長時間残業で大量の仕事をこなすことも、厳しい言い方で指導する仕事の教え方も否定されています。

アンラーニングが求められる背景には、さまざまな常識や習慣が通用しなくなったことがあります。

働き方改革が進んでいる職場に大量の仕事が発生したら、これまでの「残業でこなせばよい」という考え方は通用しません。これまでの作業パターンを否定したうえで、例えばコンピュータ・システムを導入するといった新しい作業パターンを用いる必要があります。

技術の進化と変化の速さ

現代は技術の進化が速く、変化も速くなっています。こうした現象もアンラーニングの必要性を高めています。

例えば以前は、AI(人工知能)が働く人の仕事を奪うかもしれない、という議論が盛んでしたが、今はAIの実用化が進み人々の生活に欠かせないツールになったので、AIをどのように使いこなすかが重要になっています。

したがって、AIを否定する思考を捨て去り、AIを活用するマインドを持ったり、AIが生み出す社会問題を解決したりする態度が求められます。この過程はまさにアンラーニングです。

さらに変化スピードが速くなると、これまでの方法では成果を出すまでに時間がかかりすぎてしまいます。この場合も、アンラーニングを使って、従来の方法を捨てて新しい方法を獲得しほうが効率良く変化に対応できるわけです。

アンラーニングのメリット

アンラーニングを獲得するメリットには次の4つがあります。

●柔軟性が増し適応力が向上する

●問題解決力が増す

●イノベーションを誘発できる

●パフォーマンスが上がる

1つずつみていきましょう。

柔軟性が増し適応力が向上する

アンラーニングに着手すると古い習慣に縛られなくなるので、柔軟に考えられるようになるでしょう。そして柔軟な思考は、変化への適応力を向上させます。

問題解決力が増す

これまでに経験したことがない変化が、大きな変化をともなっている場合、従来の思考ではとらえられないことがあります。変化をとらえられなければ、問題を解決するどころか、問題点をみつけることもできないでしょう。

そのためアンラーニングによって、変化をみつけることの障害になっていた従来の思考を捨て去れば、問題点がみつかり早期に解決にたどり着くことができます。

イノベーションを誘発できる

イノベーションが、まった新しい発想から生まれることは周知のとおりです。しかし人はなかなか新しい発想を持つことができません。もし従来の発想が新しい発想の誕生を阻害しているのであれば、アンラーニングによって従来の発想を消し去る必要があります。

アンラーニングはイノベーションを誘発するために必要です。

パフォーマンスが上がる

従来の方法で問題を解決できないのに、従来の方法を試し続けていては問題は解決しないままです。この状態がパフォーマンスの発揮を妨げている場合、従来の方法を捨て去るとパフォーマンスが向上します。

「これまでハイ・パフォーマンスをあげてきた方法」と「これからハイ・パフォーマンスをあげる方法」が異なる場合、アンラーニングが有効に機能します。

アンラーニングを促すには?実施方法を解説

 自己否定は誰にとっても難しい作業です。アンラーニングは、過去の自分をすべて否定するわけではありませんが、現代に通用しない思考や行動パターンなどは捨てなければならず、したがって自己否定の要素が含まれます。

アンラーニングを実施することは簡単なことではありません。

そこで次の5つのステップでアンラーニングを促していくことをおすすめします。 

ステップ1:振り返り

ステップ2:「通用しない」ことの洗い出し

ステップ3:否定して捨て去る

ステップ4:学ぶ、試す

ステップ5:フィードバックを受け入れる

 1段ずつ確認していきます。 

ステップ1:振り返り

アンラーニングは自分を振り返るところから始めます。振り返る対象は、思考、思い込み、習慣、発想、ルーティン、行動パターン、情報、知識、技術などです。

自分の思考はどこに分類されるか、自分は何を習慣化、ルーティン化しているか、自分が持つ知識と技術は何か――といったように自分で自分に質問していくとよいでしょう。

ステップ2:「通用しない」ことの洗い出し

自分の思考などを振り返ることができたら、そのなかから現代に通用しないものを洗い出していきます。例えば「この考え方は古い」「この習慣はもう誰もやっていない」といったものがあればピックアップします。

ステップ3:否定して捨て去る

自分が持っているある思考が現代の変化に通用しないことがわかったら、その思考を否定して捨て去るようにします。

また自分が持っている知識やスキルで目の前の課題を解決できなければ、それも捨てます。

効果を生まない癖や習慣も、しないようにしなければなりません。

ステップ4:学ぶ、試す

従来の思考などを捨てるのは、新しいことを学び、新しいスキルを獲得するためです。ステップ4は吸収するフェーズなので、どんどん学んでいきます。

そして学んだことは次々と試していきましょう。学んだりスキルを獲得したりしたあとに、すぐに試すことで、新しい思考や新しい習慣、新しいパターンを身につけられるようになるのです。

後段で紹介する越境学習や複業留学は、このステップ4で実践することになります。

ステップ5:フィードバックを受け入れる

アンラーニングに取り組んでから一定期間がすぎたら、自分に変化が起きたかどうかチェックしてみてください。そしてアンラーニングの効果が出ていても、出ていなくても、周囲の人にフィードバックをもらうとよいでしょう。

効果が出ていたら、周囲の人に、自分が今アンラーニングに取り組んでいることを打ち明けてみます。周囲の人が自分の変化に気づいていたら、アンラーニングによって効果が出た証拠になるわけです。

その逆に効果が出ていない場合も、周囲の人にアンラーニングに取り組んでいることを打ち明けたほうがよいでしょう。もし周囲が、自分の思考の変化や仕事のやり方の変化に気づいていない場合、変化の度合いが弱いのかもしれません。自分では従来の思考を捨てたつもりでも、無意識に従来の思考を使い続けているのかもしれません。この場合は、アンラーニングを強化する必要があります。 

アンラーニングの注意点

アンラーニングに取り組むときは、以下の4点に注意してください。

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